たった1%のズレが未来を変える? 理学療法士が教える体のSOSに気づくための方法《週刊READING LIFE Vol.306 1%》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2025/4/28/公開
記事:大塚久(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
「この靴、まだ履けるかな?」
そう思いつつも、なんとなく同じ靴を履き続けている人は多いのではないでしょうか。
靴底が少し減ってきているかもしれないし、中敷きが破れてきたりしているかもしれない。
でも、まだ大丈夫だろうと、私たちはつい先延ばしにしがちです。
実は、そんな“なんとなくの違和感”こそが、体の出している小さなSOSかもしれません。
ちょっとした足元のズレが、肩こりや腰痛、膝の痛み、疲れやすさなどに繋がることがあるのです。
この記事では、「1%にも満たない体のズレが、なぜ放っておくと大きな不調を招くのか?」を専門的な視点からわかりやすく解説し、さらに具体的なセルフチェック法や対処法をご紹介します。
今まさに「なんとなく足元がおかしい」「原因不明の体の不調がある」という方にとって、一歩踏み出すきっかけになれば幸いです。
新しい靴が原因? 肩が痛くなった例
以前こんな方がいました。
新品の靴を履き始めたときに、足の甲に少し圧迫感を覚えたものの、「新しい靴だからそのうち慣れる」と我慢して履き続けていました。
すると数日後、なぜか肩が痛みはじめ、整形外科を受診する事態に。
検査をしても、肩の関節や筋肉にはとくに目立った異常はなし。
湿布を処方され、リハビリに回されました。その時その方を担当したのが私です。いざ肩自体を評価してみても問題は見つかりませんでした。
ところが、全身をチェックしていくと、足の甲の小さな関節(第一中足骨と第二中足骨の間)の動きが悪くなっていたのです。
この部分が固くなっていると、歩くたびに足元のバランスが崩れ、下腿(ふくらはぎ)→膝→股関節→骨盤→背骨…と連鎖的な“ズレ”が生じます。
そのズレをかばうように肩や背中の筋肉が頑張りすぎた結果、肩に痛みとして現れていたわけです。
この方の場合は、足の甲の動きと靴紐の締め方を調整するだけで、あっという間に肩の痛みが消失しました。
「痛みの原因は肩ではなく足にあった」という、ちょっと意外な例です。
1%のズレでも痛みが出る理由
こうした現象は、理学療法の世界では「キネティックチェーン(運動連鎖)」と呼ばれ、
一つの関節や筋肉のズレや硬さが、別の部位に影響を及ぼす仕組みとしてよく知られています。
たった1%のわずかなズレでも、1日何千歩も歩けば、その負担は“積み重なって”大きくなるのです。
こんな小さなズレ、思い当たりませんか?
靴底が外側だけやけに減っている
かかとの外側ばかりすり減っている靴は、体重を外側に逃がす歩き方を続けているサインです。放置すると足首や膝、腰に負担がかかる可能性が高まります。
新品の靴がなんだかきつい
「そのうち慣れる」と我慢して履くと、足の甲や指の付け根に圧力がかかり、足全体の可動性を下げてしまいます。
長く履いていた靴の中敷きが薄くなっている
中敷きのへたりや、見えにくいレベルの形崩れが足裏のバランスを変え、膝や腰、そして上半身にも影響を及ぼすことがあります。
体の連鎖を専門的に説明すると
足底(足裏)には、身体を支えたり、衝撃を吸収したりするための重要な構造があります。
足の小さな骨が連動して動くことで、スムーズな重心移動が生まれ、膝や股関節に無理のない力が伝わる仕組みです。
しかし、靴が合わないまま生活していると、足裏での衝撃吸収がうまくいかず、
過度な負担が膝、骨盤、背骨、果ては肩や首の筋肉にまで影響してしまいます。
1%どころか0.1%のズレでも、何万回、何十万回と歩くうちに「痛みの原因」に発展しやすいのです。
簡単にできるセルフチェック法
“なんとなく違和感”は、体からのSOS。
まずは以下のチェックで、ご自身の足元や体の状態を見直してみましょう。
靴底の減り具合を観察する
靴を脱いだら、床に置いた状態で前後左右から眺めてみてください。
かかとの外側だけすり減っていないか? つま先が片方だけ削れていないか?
バランスよく減っていない場合は要注意。
履いたときのフィット感を感じる
靴を履いた瞬間、足の甲や小指の付け根、踵に圧迫感やゆるみを感じませんか?
立ったときに重心がどちらかへ傾いていないか、意識を向けてみてください。
膝や腰の違和感がいつ起きるか観察
歩き始めや、階段を降りるときに痛むなら、足元のサポートが不十分な可能性が。
朝起きたときよりも、夕方に疲れが集中する場合も要注意です。
ストレッチや軽い運動で変化があるか試す
足首の回旋(左右に回す動き)や足裏マッサージ、軽いウォーキングなどを行ってみる。
その後に痛みや違和感が和らぐなら、足首や足裏周りが原因の可能性大。
これらのチェック項目を行うだけでも、「自分の体が何を感じているか」を少しずつ把握することができます。
気づくための“心の余白”をつくる
忙しさが違和感を見逃す
現代は、スマホの画面を見ながら駅まで歩き、仕事をしながら食事をし、家に帰ればテレビを観ながらまたスマホをいじる――と、常に何かに意識を奪われがちです。
これでは、体が発している小さなサイン(違和感)に気づく余白がありません。
1分でいいから、自分の足元や姿勢を見つめる
出かける前: 靴を履いた瞬間、「今日の足の調子はどうだろう?」と立ち上がってみる。
帰宅後: 靴を脱いで、そのまま床に置き、減り具合や形に変化がないかをチェック。
寝る前: 足首を軽く回したり、床に座って前屈しながら、今日の体の疲れ具合を確かめる。
こうした小さな意識づけの習慣は、未然に不調を防ぐだけでなく、自分の体を大切に扱う心の余裕にもつながります。
どうしても痛いときは、専門家に相談する
もちろん、「少しのズレや違和感」がすべて自力で解決できるとは限りません。
痛みが強い場合や、セルフケアしても改善しない場合は、整形外科や理学療法士などの専門家に相談するのがおすすめです。
靴のインソールや靴選びを見直すだけで、痛みが和らぐケース
足首や股関節の可動域を少し調整するだけで、劇的に体が楽になるケース
こうした事例は珍しくありません。
早めの相談が、長引く不調を断ち切る近道になるのです。
1%のズレと上手に付き合うということ
足の甲に少し当たる気がする → 放置してたら肩が痛くなった
靴底が少し減っている → 気づかずに歩き続けたら腰に負担がかかっていた
ほんの些細なことが大きなトラブルの原因になり得るのが、私たちの体の不思議でもあり、面白いところでもあります。
だからこそ、「まだ履けそう…」という靴を見直すことや、「なんとなく足が重いかも」というサインを逃さないことが、自分の体をいたわる第一歩なのです。
結局のところ、1%のズレはどこにでも起こり得るもの。
それを完全になくすことは難しいですが、できるだけ早く気づいて修正する習慣を持てば、痛みや不調を未然に防ぐことができます。
今日からほんの少し意識を向けるだけで、あなたの未来は大きく変わるかもしれません。
「いつもなら見過ごす小さな違和感を、今日はちょっとだけ大切にしてみる」
それが、体にも心にも優しい生き方への小さな一歩となります。
□ライターズプロフィール
大塚久(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
神奈川県藤沢市出身。理学療法士。RYT200ヨガインストラクター。2002年に理学療法士免許を取得後、一般病院に3年、整形外科クリニックに7年勤務する。その傍ら、介護保険施設、デイサービス、訪問看護ステーションなどのリハビリに従事。下は3歳から上は107歳まで、のべ40,000人のリハビリを担当する。その後2015年に起業し、整体、パーソナルトレーニング、ワークショップ、ウォーキングレッスンを提供。1日平均10,000歩以上歩くことを継続し、リハビリで得た知識と、実際に自分が歩いて得た実践を融合して、「100歳まで歩けるカラダ習慣」をコンセプトに「歩くことで人生が変わるクリエイティブウォーキング」を提供している。
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院カフェSHIBUYA
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20番10号
MIYASHITA PARK South 3階 30000
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「湘南天狼院」
〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸二丁目18-17
ENOTOKI 2F
TEL:04-6652-7387
営業時間:平日10:00~18:00(LO17:30)/土日祝10:00~19:00(LO18:30)
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先
Hisaya-odori Park ZONE1
TEL:052-211-9791
営業時間:10:00〜20:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00