週刊READING LIFE vol.307

そんなつもりじゃなかったのに《週刊READING LIFE Vol.307 そんなつもりじゃなかったのに。》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2025/5/5/公開
記事:岩瀬憲一(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
そんなつもりじゃなかったのに。
 
レジで精算を終えたところ、合計が1万円近くになっていた。
 
なぜこんなに買ってしまったのか。
 
気づいたらいつのまにか本を大量に買い込んでいた。
またまた本をまとめ買いしてしまった。
 
なぜこんなに本を買ってしまうのだろうか。
家の本棚には本が何百冊あるというのに。
本棚にはおけずに、床や通路に本が置いてあるというのに。
今読んでいる本があるというのに。
電子書籍で読めば十分だというのに。
 
本屋に入るとなぜか本を買ってしまう。
本を買うために本屋に入るので、そこまでは良い。
 
1冊だけ本を買おうと思って入るのだが、なぜか2冊以上買ってしまうこともある。
時間がないときは1冊だけ買うということはある。
だが、ゆっくり本屋を見てしまうと、気になる本が目に飛び込んでくる。
 
あの小説の続巻が出たのか。
お気に入りの作家の新刊が出たのか。
勉強用の本を買いたい。
そろそろ手帳の買い替えの季節だ。
気になる文房具があるので、買いに行こう。
 
本屋に入るとさまざまな誘惑が襲ってくる。
あれも買いたい、これも買いたい、という誘惑だ。
本屋には本だけでなく文房具も置くようになった。
本を買う気がないときでも、文房具は見てしまう。
文房具がなくてもさまざまなものを売っている。
 
かわいい絵柄のついたポーチやペン、ノートブック。
筋力トレーニング用のスリッパやバランスボール。
腹筋を鍛えるためのコルセットのようなもの。
タロットカードやオラクルカード。
ビジネス用や絵柄のついたカレンダー。
人生ゲームや、将棋、囲碁の駒と卓上。
宴会やパーティーなどで楽しむカードゲーム。
DIYで組み立てるオルゴールやクラフト。
アニメのプラモデル。
 
本や文房具以外にも、手を変え、品を変え、誘惑が私に襲い掛かってくる。
とにかく強敵である。
 
気になる本を1冊だけ、と思い、お店を回っている間は誘惑を抑えて冷静に戦うことができる。ここはまだ理性が働いている。
まずは一旦お店を回る。すぐに手を取ってしまうと、すぐに誘惑が襲い掛かり、気づいたら大量に買い込んでしまう可能性があるからだ。
 
どんな本があるのかどうかを見回る。
見回ることで無駄な買い物を避け、少しでも負担を減らしたい。
同じものを買っていないかどうかをこの段階で確認しておきたい。
何が必要で何が欲しいのかを見極めておきたい。
買ってから後悔しないように、慎重に選ぶ。
 
一通り見まわしたところで元の場所に戻る。
ここで何を買うのかを決める。
 
今回は文房具がほしいから文房具にしようか。
今読んでいる本は文字が多くて時間がかかりそうだから、
文字数の多い本を避けて、絵や写真、イラストの多い本にしようか。
お気に入りの作家の新刊が出たので、新刊を買おうか。
あえて今まで買ったことのない作家の本を買ってみようか。
普段手にとらないような動物や植物に関する本にしようか。
パーティーがあるから、カードゲームを買おうか。
 
などなど、様々な思いがめぐる。
思いながら本の前に立ち、考える。
 
文房具のストックはあるので、今回は文房具はやめようか。
イラストの入った本は重くて帰るときに荷物になるから、別の機会にしよう。
新刊は上下2冊あり、重くなるので、自宅近くの本屋で買おう。
予算を使い切ったから、新しい分野の本は来月にしよう。
 
などなど、絞り込んでいく。
 
絞り込んでいった結果、ようやく対象となる1冊に決める。
 
今回はこの本を買おう。
 
今回買うことに決めた1冊を手に取る。
 
読んでみて面白く、自分の興味に合いそうだ。
 
そう思い、本を1冊取る。
 
その後、レジに向かうため進んでいく。
進んでいく途中、ふと気になる1冊があった。
 
そういえば、この本は前回買おうと思っていた本だ。
 
そこでまた立ち止まる。
買う予定の本を持ちながら、本を手に取り、読み始める。
 
今回読んでも面白く、気になってくる。
 
買おうかどうしようか。
でも、すでに1冊決めたし、どうしようか。
 
右往左往しながら考えた挙句、買うことにした。
 
いつか買うと思っていると買うことができなくなってしまうから、買ってしまおう。
 
そのように決意し、買うことにした。
最初に買った本と、今回買った本を手に取り、レジへ向かう。
 
レジは混みあっていることもあれば、スムーズに流れることもある。
今回はレジが混んでいた。
 
レジの前で並んで待っているときに、ふと気になる本を見つけた。
 
お気に入りの作家の最新刊を見つけた。
しかも、文庫サイズで売っていた。
 
これを読みたいと思い、サッと手をとる。
取るまでの時間は一瞬だった。
手に取った後、そのままレジに持って行った。
 
レジで店員さんがバーコードを当て、精算する瞬間になった。
そのとき、後悔の念が出てきた。
 
そんなつもりじゃなかったのに。
 
気づいたら1万円近くの金額になっていた。
 
やってしまった。
 
今回は1冊だけ買う予定でいたので、想定以上の大幅な出費となった。
 
本を置くところはどうしたらよいのか。
本が3冊以上もあり、電車に乗って帰るときに重くなるな。
今読んでいる本よりこちらを読んだ方がよいのか。
 
様々な嘆きが私の頭の中をよぎる。
 
こんなに買う必要はあったのだろうか。
次回来た時でもよかったのではないか。
 
そう思うと、後悔の念がよぎる。
 
しかしながら、それとは別の声が聞こえる。
 
本は生ものだから、今買って読まないと一生読むことがないかもしれない。
だから、買ったこと自体は良いことだと思うよ。
帰りの電車で読んでいけばいいのだよ。
 
買ったことを後悔していても始まらない。
買った本を読んで楽しんでいこう。
買った本は投資だと思って、リターンを得るべく読んでいこう。
 
そのように前向きになることで、私は買ったことに対して肯定的に見ることにした。
正当化や言い訳の念がないわけではないが、後悔していても仕方がない。
前向きにとらえて、本を読んでいくことにしよう。
実際に本を買いすぎて後悔することはあっても一時的で、何とかなっている。
読んだ本をうまく使いまわしていけばよいのだ。
 
本を買いすぎてしまうことは毎週のように続いている。
それでも本を買って読んでみると面白い本が多く、読み終えた後で後悔することはない。
買う前は買うつもりがなかったのかもしれないが、
それは心の中で、あなたは読むべきである、というメッセージを放っていたから、
という理由なのかもしれない。
 
本屋で本を買いすぎてしまうことは、運命の出会いの回数が多いことなのかもしれない。
それは買いすぎではなく、運命の出会いを引き寄せるだけのエネルギーがある、
ということである。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
岩瀬憲一(ライターズ倶楽部)
愛知県在住の自動車部品メーカーのエンジニア。平日はソフトウェア開発に従事。最近はデータサイエンスを研究している。生成AIを活用しながらウェルビーイングを高めている活動を進めている。

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2025-04-28 | Posted in 週刊READING LIFE vol.307

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