週刊READING LIFE vol.316

女子校・女子大最強説《週刊READING LIFE Vol.316 私は最強》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2025/7/24/公開
記事:松本萌(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
私は女子校女子大出身だ。こう言うと「あー…… 分かる」と言われる。今まで「えっ! そうなの?
見えないなぁ」と言われたことはない。なぜそう思うのか聞いても明確な答えが返ってくることはなく、「なんとなく」とか「それっぽいから」と言われてしまう。

最初から女子校や女子大を目指していたわけではない。
高校を選ぶときの基準は、自分の偏差値よりも少し上の学校であること、電車通学したかったので自宅より少し離れたところにあること、そして興味のあった弓道部があることだった。条件に当てはまるのが、たまたま県立の女子校だった。県立で女子校というのが珍しく、興味をそそられたというところもある。
女子大を選んだ理由は、当時「女子大は受かりやすい」と言われていたからだ。高校生活は弓道に明け暮れていて全く勉強をしておらず、3年生になり受験を意識し始めたとき、「このままでは浪人確定だ……」と真っ青になった。女子校での生活が楽しかったため、女子大への抵抗感は無く、むしろ受かりやすいなら積極的に受けようとまで考えていた。
結果7年間、女子だけの学び舎で過ごすことになった。

私にとっては大正解の選択だった。
女子校女子大での日々は、自分に対し「そんな自分もいいよね」とありのままの自分でいることにOKを出す機会を与えてくれ、「もしかしたら私、最強かも!?」という自信をつけてくれた。15歳から22歳の間、女子ばかりという偏った空間の中で過ごすことが、私の人生をバランスの良いものに変えてくれた。

 

中学生のときの私は、漠然とした焦燥感というか諦めの気持ちを抱えていた。

学校生活を楽しいとは思わないもののサボる理由がないため、毎日制服を着て学校に通い、美術部に所属しながらも半分帰宅部状態で部活には行ったり行かなかったり、テストとなればそれなりに真面目に準備をするため、成績は上の下ぐらいだった。
英語は好きで勉強するも、「英語圏に生まれたら苦労せずに英語を使えたのに……」と思ったり、政治経済の授業では戦後の日本バッシング等を学ぶと「日本人に生まれたのって損かも」と考えたりしていた。
思春期まっただ中で、独立心が芽生えつつもだからと言って自分が何をしたいのかがハッキリせず、モヤモヤしていた時期だったのだろう。何か突出した能力があるわけでもなく、特別目立つ存在でもない自分のことを、「なんてつまらない人間なのだろう」と思っていた。

高校受験を意識する時期になり、そろそろ受験校を決める段階になったとき、あることに気がついた。中学までは受験をせずに学区内の学校に通っていたが、これからは自分で進路を決め、その上で試験に受からなければ、行きたい学校に通うことはできない。自分で色々なことを決めていかなければいけないということに気がついたとき、「これはチャンスかもしれない」と思った。

今までは決まったレールの上を進んでいるだけだった。だからつまらなかったのではないか。
そう考えた私は、「高校生活を楽しく過ごすぞ大作戦」を練ることにした。まず、なぜ今私は日々つまらないと感じているかを考えた。

「青春をしていない」からだ。
毎日を漫然と過ごしているからつまらないのだ。

では青春とは何かを考えたとき、ひらめいた。部活だ。毎年夏休みに心が熱くなる定番と言えば、高校野球だ。高校球児の熱い思いを、私も味わってみたい。だがしかし、私は運動が得意ではない。長距離走は得意なほうだが、瞬発力が必要な運動は苦手だし、球技はもっての外だ。
さてどうしたものかと考えたとき、「日本らしいもの」という思いが浮かんできた。英語や政治経済を学んでいると、日本に対しネガティブな感情を抱いてしまうが、だからと言って私が日本人であることに変わりはなく、そもそも日本らしいものに深く触れたことがない。これはちゃんと学ばなければいけない。
「運動部でありながら運動神経の問われない日本的なもの」と考えた結果、弓道に辿り着いた。そうだ、弓道をしよう。目標ができると俄然燃えるタイプの私は、第一の目的を弓道にして学校選びを始め、第一志望校に女子校を選んだ。

正直なところ、女子校に通うことは不安だった。中学校では女の子達何人かがグループで固まって、陰でコソコソ悪口を言ったりする光景を目にしていたからだ。見ていて気持ちの良いものではなかった。

だが、そんな不安は不要だった。多感な時期、異性の目を意識する必要がないからだろうか。自分を飾る人は誰もいなかった。面白いことがあれば口を大きく開けて笑い転げ、お腹が空けば早弁をし、体育祭では黄色の声というよりは、やや野太い声でクラスメイトの活躍に声援を送った。女子しかいないため、重いたいものを自分達で持たなければいけない等体力的にきついこともあったが、皆で力を合わせればたいしたことではなかった。

小中学校のときは「目つきが悪い」とか「にらんでる」なんて男子にからかわれたが、そんなことを言う人は誰もいなかった。今まで肩肘張って生きていた自分に気がついた。自分のことを否定しない人達の中にいることが、こんなにも安心できるのだということに気がついた。
女子校に通う生徒は、女子というカテゴリー以前の「人間」という表現がピッタリだった。

部活はもちろん弓道部に入部した。想像以上に上下関係が厳しく、理不尽に思うこともあったが、それ以上に自分でやると決めたことをできる環境にいられることが嬉しかった。部活にのめり込むにつれ学業は芳しくなくなっていったが、親は何も言わずにいてくれた。

女子校生活を謳歌した私は、何の迷いもなく女子大に進んだ。
高校に比べれば女性らしさを感じる友人達だったが、皆思い思いにやりたいことをやっていて、一緒にいるのが楽だった。「こんなことを言ったら引かれるかな」「こんなことをしたらビックリされるかな」という思いを抱くことなく、勉強も遊びもトコトン自分のやりたいようにしながら過ごした。

大学時代に語学研修やボランティアで4回海外に行ったが、海外ではより人の目を気にせずに、と言うよりも気にする余裕もなく、相手の発する言葉を聞き逃すまい、なんとか自分の考えを拙い英語でもよいので伝えようと必死になった。ハチャメチャな英語だったろうが、周囲は理解しようとしてくれた。「君は時制を意識して話しているね。僕なんか適当さ!」と言われたときは、お世辞でも嬉しかった。
下手でもいい、拙くてもいい、間違っても気にしない、大切なのは伝えること。そう思って行動し、相手が反応してくれることで「やればできる」という自信を持つことができた。

のびのびと、そして自分のやりたいことをトコトンやり尽くした7年間が、「なんてつまらない人間なのだろう」という自己評価から、「意識して行動すればいくらでも楽しくなる。そんな私、最強かも」というマインドに変えてくれた。

今のご時世、男子校や女子校という、体の性別で学生をカテゴリー分けするのは時代遅れかもしれない。私が通った高校や大学も、そのうち性別関係なく学生を受け入れるようになるかもしれない。それが時代に沿ったあり方であるならば、そうあるべきだと思う。
ただ、十代の私は女子校女子大に通うことでありのままの自分をOKと思うことができ、「自分って最強かも」と自信を持つことができた。
 
昨年の11月に入籍し、今年の6月に結婚式を挙げた。もう若くないし、華やかなお披露目の式というよりは、披露宴と二次会の間のようなパーティーができたらいいねと夫と相談し、式場を決めた。
式を挙げるにあたり、「今までの人生の振り返りをしましょう」とプランナーさんから提案があった。
夫と私それぞれの人生の振り返りを、プランナーさんが数時間掛けてインタビューした後、動画にしてくれた。
私が女子校を選択した時の気持ちを以下文章で表現してくれた。

小中学校時代。あまり笑わず、言葉も少なかった。
男子に「怖い」とからかわれ、心を閉ざした日々もあった。
だから、小さな自由への第一歩として高校は女子校を選んだ。

「小さな自由への第一歩」という言葉を読んだとき、涙が出そうになった。中学3年生の私が「自分の人生を楽しいものにする」と決め、高校生の私が「思い描いた世界を実現しよう」と行動したから、今の私がいる。
思っていた以上に、自分は決断と行動をしてきたことに気がついた。
私って最強じゃん。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
松本萌(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
兵庫県生まれ。東京都在住。
2023年6月より天狼院書店のライティング講座を受講中。
「行きたいところに行く・会いたい人に会いに行く・食べたいものを食べる」がモットー。平日は会社勤めをし、休日は高校の頃から続けている弓道で息抜きをする日々。

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2025-07-17 | Posted in 週刊READING LIFE vol.316

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