遂に来た! サメ界のリーサルウェポン《週刊READING LIFE Vol,320「この夏一番の〇〇」》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2025/8/21/公開
記事:山田THX将治(天狼院・ライターズ倶楽部READING LIFE公認ライター)
『“サメもの”は、当たる』
これは、映画界で長年言われ続ける定説だ。
誰よりも映画を観続けて来た私は、この定説にいささかの疑いを抱いている。
何故なら、鮫が登場する作品で、映画史上の名作として語られるのは、1975年に製作・公開された『ジョーズ(JAWS)』しか思い当たらないからだ。
今や巨匠として名高い、スティーブン・スピルバーグ監督のメジャーデビュー2作目だ。因みに英題の『JAWS』とは、顎の事だ。
鮫を象徴する鋭い歯と、ホオジロ鮫の大きな顎に驚愕したことを、昨日のことの様に記憶している。
半世紀も前の作品なので、『ジョーズ(JAWS)』の物語を少しだけ。
観光地として有名なビーチ、それも、夏の繁忙期に突然、人喰い鮫が現れ観光客がパニックに為る。
その、超大型ホウジロ鮫と、地元警察署長・孤高の漁師・都会からやって来た若い海洋学者の三人との対決が、息を呑むスリリングな展開を見せる名作だ。
私にとって、数在るスピルバーグ監督の名作の中でも、最も好きな作品でもある。
夏を舞台にした作品なのに、正月映画として公開された日本でも大ヒットした。
当時、16歳の高校生だった私も、期末試験中だったにも拘らず、初日に駆け付け観賞したことを覚えている。
定説通り、当たった“サメ映画”であることは間違いない。
他に当たった“サメもの”は無いかと調べてみた。
残念ながら、映画史上で語り継がれている鮫が登場する映画は、1963年公開(これは夏休み公開だった)のイタリア・フランス映画『チコと鮫』しか思い当たらない。
しかも、どちらかと云うと、ドラマ性より文明批判的映画だったので、『ジョーズ』の様に、興行的にヒットしたとの記録は無い。
では何故、
『“サメもの”は、当たる』
と、謂う定説が有るのだろうか。
それを説明するには、少々説明が必要だ。
スピルバーグ監督作品『ジョーズ(JAWS)』が公開された1975年当時の映画収益は、映画館に於ける興行収益だけだった。
ところがその後、映画はソフト化され映画館での公開後も収益を上げるものが出て来た。
中には、‘直行’と呼ばれる、映画館での公開無しでソフト化される作品が出て来た。勿論、‘直行’作品は、総じて作品自体の出来は良くない。有体に申せば、経費が嵩む映画館公開に堪え得る(収益が出る・観客が入る)出来栄えでは無いものだ。
更に時代を経て、我々映画ファンは、配信と云う第三の観賞(映画)方法を手にした。配信は、ソフト化の必要が無いので、余計に経費が掛からない。再び有体に申せば、更に作品の出来栄えは問われなく(収益にとって)為って来たのだ。
現在、“サメ”又は“ジョーズ”で検索を掛けると、物凄い数の映画が引っ掛かる。どれも、スピルバーグ監督の名作『ジョーズ(JAWS)』に肖った、云わば‘パクリ’的要素が強い低予算作品ばかりだ。
一例と上げると、5倍の威力で人間を襲う『ファイブヘッド・ジョーズ』や、遂に空飛ぶ鮫が登場する『フライング・ジョーズ』なる作品が在る。
最早、“サメもの”と云うより‘ゲテ物’と言った方が早いかも知れない代物だ。
今や映画界の定説は、
『“サメもの”は、当たる』
ではなく、
『“サメもの”の粗利率は高い』
と、謂って置いた方が真実に近いのかもしれない。
今年の夏、新たな“サメもの”が映画館に登場する。
しかもそのコンテンツ力は、既に保証されている。
何故なら現在、YouTubeで公開されている動画の劇場版だからだ。
私が注目する“サメもの”コンテンツの名は、
『おでかけ子ザメ』
と、謂うものだ。
『おでかけ子ザメ』は元々、3年前にTwitterに公開された3ページのフルカラー漫画作品だ。その後、加筆・修正され商業連載と為った。
物語は、人間と動物が共存する“八魚町(やうおちょう)”を舞台に、主人公の“子ザメちゃん”と住民たちの日常を描くものだ。
元が漫画なので、海中生物の鮫が何故陸上で呼吸出来るのかとか、害魚である鮫と人間が共存出来るのかと謂ったことは、デフォルトとして受け取るしかない。
変温動物である鮫(魚類)が、四季の在る八魚町(日本)の陸上に居られるのもデフォルトだ。
これらは、正確な説明は付かないのだ。
硬いことを言っていては、漫画話楽しむことが出来ない。
更に漫画で子ザメは、
『☆■×*』
と、云った“サメ語”で会話する。
八魚町の住民は誰でも、“サメ語”を理解している。“子ザメちゃん”も、人間の言葉(日本語)を理解し、互いに会話している。
これも、デフォルトだ。
“子ザメちゃん”は、眼の表情や背びれ等も使った豊かな感情表現で、住民や他の動物達と意思疎通し仲良くしている。
出掛けることが大好きな“子ザメちゃん”は、大切な宝物を唐草模様の風呂敷に包み、常に背負っている。
“子ザメちゃん”の陸上での移動は、御腹で跳ねるように行う。
その姿は、タツノオトシゴや鎌首を持ち上げた蛇に近いものが在る。横から見ると丁度、“S”字状だ。
本来、鮫は魚類なので、背骨・尾ビレは、横にしか動かない。上下に動かせるのは、哺乳類のイルカや鯨だ。
しかしここも、“子ザメちゃん”の特徴としてデフォルトしなければ為らない。
漫画なので、硬いことを謂って居てはキリが無いのだ。
“子ザメちゃん”の姿と、八魚町の住民とのエピソードは現在、YouTubeで動画公開されていて、無料で観ることが出来る。
実に癒される作品だ。
少々、御恥かしい話だが、還暦をとうに過ぎた私でも、この可愛い“子ザメちゃん”にハマって仕舞って居る。始終、癒されて居るのだ。
但し、観賞するには少しだけ覚悟が必要だ。
何故なら『おでかけ子ザメ』は、1分動画が60話も有るからだ。
そしてその60話は、途中で止めることが困難な内容なのだ。血が通った人間なら、途中で観ることを止める決断は付かないと思われるのだ。
従って、『おでかけ子ザメ』を観賞する際には、最低でも1時間の余裕を取らなければ為らないのだ。
時間の余裕が有る時に、是非一度、試して頂きたいものだ。
さて、『おでかけ子ザメ』のコンテンツ力向上には、一人の声優さんの尽力も必要だった。
その声優さんは、動画で“子ザメちゃん”の声を担当している花澤香菜(はなざわかな)さんだ。彼女は最近、テレビのバラエティ番組等にも登場しているが、多数のテレビアニメや劇場アニメで、声を担当している有名声優だ。
普段は滅多にアニメを観ることが無い私も、新海誠監督の劇場アニメ『君の名は。』(ユキちゃん先生)や『すずめの戸締り』で、御声を拝聴した経験が有る。
花澤香菜さんは、漫画公開当時から『おでかけ子ザメ』のファンだった。動画作成を知ると自ら、“子ザメちゃん”の声に名乗りを挙げ、オーディションに参加した。
しかし、唯参加したのではない。
花澤香菜さんは、漫画上で『☆■×*』と表記された‘サメ語’を自分なりに考えセリフ仕立てにしてオーディションに参加したのだ。
その努力が評価され、無事“子ザメちゃん”役を勝ち取った花澤さんは動画で、主題歌も唄っている。勿論、自身で作詞した‘サメ語’による歌詞で。
YouTube動画を観ると全話、花澤香菜さんの歌を聴くことが出来る。
そんな『おでかけ子ザメ』はこの夏、劇場用アニメとなって公開されることが決まっている。
『おでかけ子ザメ とかいのおともだち』と題された劇場用アニメには、新たに“あんこうちゃん”“うさめちゃん”と云う仲間が登場する。
詳細は不明だが、トレーラーを観る限り、どちらも癒されるキャラクターの様だ。
私は年甲斐もなく、この夏公開される『おでかけ子ザメ とかいのおともだち』が、楽しみで為らない。
多分、いや、間違いなく、初日に映画館へ駆け付けることだろう。
もう直ぐ公開される『おでかけ子ザメ とかいのおともだち』。
コンテンツ力は、間違いなく有ることだろう。
興行的にも、徐々に口コミで広がることだろう。
ここは一つ、世間に広まる前に観賞しては如何だろうか。
『“サメもの”は、当たる』
と、謂う映画界の定説に於いて、
“子ザメちゃん”は間違いなく、リーサルウェポンと為ることだろう。
《終わり》
〈著者プロフィール〉
山田THX将治(天狼院・新ライターズ倶楽部所属 READING LIFE公認ライター)
1959年、東京生まれ東京育ち 食品会社代表取締役
幼少の頃からの映画狂 現在までの映画観賞本数17,000余
映画解説者・淀川長治師が創設した「東京映画友の会」の事務局を45年に亘り務め続けている 自称、淀川最後の直弟子 『映画感想芸人』を名乗る
これまで、雑誌やTVに映画紹介記事を寄稿
ミドルネーム「THX」は、ジョージ・ルーカス(『スター・ウォーズ』)監督の処女作『THX-1138』からきている
本格的ライティングは、天狼院に通いだしてから学ぶ いわば、「50の手習い」
映画の他に、海外スポーツ・車・ファッションに一家言あり
Web READING LIFEで、前回の東京オリンピックの想い出を伝えて好評を頂いた『2020に伝えたい1964』を連載
続けて、1970年の大阪万国博覧会の想い出を綴る『2025〈関西万博〉に伝えたい1970〈大阪万博〉』を連載
加えて同Webに、本業である麺と小麦に関する薀蓄(うんちく)を落語仕立てにした『こな落語』を連載する
更に、“天狼院・解放区”制度の下、『天狼院・落語部』の発展形である『書店落語』席亭を務めている
天狼院メディアグランプリ38th~41stSeason四連覇達成 46stSeason Champion
お問い合わせ
■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム
■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。
■天狼院カフェSHIBUYA
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目20番10号
MIYASHITA PARK South 3階 30000
TEL:03-6450-6261/FAX:03-6450-6262
営業時間:11:00〜21:00
■天狼院書店「湘南天狼院」
〒251-0035 神奈川県藤沢市片瀬海岸二丁目18-17
ENOTOKI 2F
TEL:04-6652-7387
営業時間:平日10:00~18:00(LO17:30)/土日祝10:00~19:00(LO18:30)
■天狼院書店「京都天狼院」
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00
■天狼院書店「名古屋天狼院」
〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内3-5-14先
Hisaya-odori Park ZONE1
TEL:052-211-9791
営業時間:10:00〜20:00
■天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00