でも焦らなくていいんだよ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:原慎治(2026年1月開講・渋谷/通信・4ヶ月コース)
先日女友達から相談を受けた。
日曜日のお昼、僕と男友達も入れて3人のカフェでの話。
「6年付き合っているんだけど、もう別れそう。てか振られそう」と。
振られそう。なぜそう思っているのだろう。純粋に理由を聞いた。
コーヒーカップをソーサーに置いて涙ぐみながら僕らに話す彼女。
彼女の話はこうだ。夜な夜な外出・外泊の多い彼氏の浮気を疑い、本人に問い詰めてみたものの、相手はあっさり浮気を認め、態度はむしろ開き直っていた。
反射的に怒る彼女。遮断するように出かける彼氏。
まだ帰ってこない。今どこにいて何をしているんだろう。
浮気相手の家にでもいるのだろうか。それすらわからない。
話し合えないことにつらくなって、僕ら友達に相談した次第だという。
彼女曰く、続けたい気持ちも別れたい気持ちも半々だそうで。
つまり葛藤しているようで。
葛藤の内訳はこうだ。
6年という長い月日を彼にささげてきた。
気持ちも時間もお金も、あまりに多くのものをささげてきた。
だから彼女にとっての結婚の妙齢を過ぎた今、いきなり恋愛市場に放り込まれたところで見つけてもらえる自信がない。
周囲のマッチングアプリ体験談、結婚相談所レビューを聞いても、希望は見いだせない。
とはいえ、今まで通り付き合うべく、今回の喧嘩をやり過ごしたとして相手を許せる自信もない。
相手の浮気を反芻しながら向き合っていく人生になりそうだとも。
とにかく不安を抱えている女友達。
僕も友達もひたすら傾聴。
彼女が話し終えた頃には、太陽は西に傾き、お客さんは気づけば入れ替わっており、僕ら2人のコーヒーカップは空になっていた。
しかし、話しても話してもまだまだ落ち着きそうにない彼女の時間は、完全に止まっているように思えた。
彼女は基本的にネガティブになったときに、僕らに相談する。
僕らに相談するときにしか登場人物として話に出てこない彼氏。
だから相手のことを知らないこともあり何も言えない。
僕らだって恋愛を知っているわけじゃない。
むしろおこがましくて、言えやしない。
お日様はさらに西へ、西へと傾く。
思い出すにつれ、落ち着きをなくしていく女友達。
そんな彼女に友達は提案した。
未来を想像してみよう。
例えば妊娠した時、例えば体調を崩したとき、寄り添ってほしいあなたの気持ちに時間を割いてくれそうか。
友達本人も自覚しているのであろう、月並みな提案だった。
きっと悩める人なら1度は、いや幾度かは、いや何度も考えたことだろう。
それでも考えて、3人で話し合うこと、それ自体に意味はある。
僕も黙って友達の話を聞いた。彼はこう続けた。
過去はどうであれ、これからの将来あなたが求めるものを差し出してくれるか。
差し出してくれなかったとしたら、今まで通り与えるだけの人生を、それもまた一興だと笑って謳歌する、あるいは受け流すことができるか。
前提に我慢も作り笑いもしてはいけない、と優しく微笑みかける彼。
依然、呼吸の浅い女友達。それでも彼の話に耳を傾け、相槌を打つ。
視線がぶつかり合う2人を背後に夕日はおぼろげに微笑む。
もう1つは別の方向性のお話、とさらに続ける彼。
妙齢を過ぎた恋愛市場で見つけてもらえる自信がないという気持ちはわかったけど、見つけてもらえないのは事実かな。問う友達。首をかしげる女友達。
思い込みか事実かを答え合わせするためにも、恋愛市場に飛び込むのもいいかもしれない。
うまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれない。
優しく微笑み、僕にアイコンコンタクトを向ける友達。
僕もつとめて微笑み返す。そして彼はこうも言う。
彼氏にいろいろ言われて、近視眼に世界が狭く、暗く見えているだけかもしれない。
今悩んでいる自分とも彼氏とも少し距離を置いてみたら、未来は少しだけ変わってくる、良く見える可能性だってあるよ。
全部全部優しい提案だった。どっと泣き出す女友達。
そんな彼女を見守るように、「でも焦らなくていいんだよ」と添える彼。
それから少しだけ時間が経って、優しい提案をした、友達はこの世を去った。
齢28歳だった。
人と人ってこれからなにがあるか本当にわからない。
女友達と彼氏の関係もそうだし、僕ら3人の関係性もそう。
彼女がこれからどんな人に出会うのかも。
本人が言うように、彼女が前を向いて新しい恋愛にかじを切ろうと思っても見つけてもらえないかもしれない。
心機一転、彼をもう1度信じてみて、すべてが首尾よく進むかもしれないし、あるいは何も改善されないかもしれない。
友達の逝去を機に、傾聴しかできない僕と悩み続ける彼女は会わなくなるかもしれないし、会っても合わなくなるかもしれない。
僕らの困りごとはいつもコントロールの及ばないところであちこち独り歩きしてくれる。
そしてそれは良い方向に歩いてくれないこともしばしばで、時折思い切りため息をつきたくなる。
それでもいえることはただ1つ。
今歩いている、この道を自分で選んだという事実に目を向け、信じていく。
僕らに残されたことといえば、それしかないということだ。
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