ぱんやのパングワン
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:歩楽歩楽三(2026年1月開講・渋谷/通信・4ヶ月コース)
三軒茶屋駅南口のほど近いところに、清潔感があり明るい感じのパン屋さんがある。
「ぱんやのパングワン」
なんと三軒茶屋で100年以上続いているお店で、今で4代目。
その昔の名前は「精養堂」だったらしい。
今のお店の名前である「パングワン」はペンギンのフランス語読み。
ペンギンがトレードマークなので、お店の中にも自然な感じでペンギンのイラストや人形、ぬいぐるみが置いてある。
看板商品もペンギンの形をした「パングワン」シリーズで、特に子供たちに人気である。
お腹の中に餡やクリームが入っている菓子パンで、黒やピンク、黄色、赤などカラフルな外見をしており、それぞれ中に入っているものが違う。
定番なのは黒とピンクのパングワンだが、見た目とは違って、黒の中にはカスタードクリーム、ピンクの中にはチョコレートクリームが入っている。
そして、季節によって、かぼちゃパングワン、ゆずパングワン、りんごパングワンなどが登場するので、見ているだけも結構楽しい。
ちなみに、季節ものは頭の横に可愛らしい小さな葉っぱがちょこんと付いている。
うちの息子はピンクのパングワンが大好きで、足、くちばし、つばさ、目……と、愛くるしいパーツを容赦なくちぎって食べた後、残った丸い胴体をパクッと食べるのがお好みのご様子。
「かわいそうだから、もうひと思いに食べてあげて!」と毎回心の中で思ってしまう……。
パングワン以外にも、定番の食パンやバゲットはもちろん、ハムカツやチキン南蛮などのボリューミーな惣菜パンから、シベリアのような懐かしの菓子パンまで。 店内に所狭しと並ぶ種類の多さには圧倒される。 作る方は相当大変だろう。
そんな「街のパン屋さん」のパングワンだが、実は、10年ほど前にはパンの販売だけでなく、イートイン的なカフェも行っていた時期がある。
店の奥にテーブルエリアがあり、一部オープンテラスになって開けていた。
軽く木陰になるような樹木もあって、春や初夏のオープンテラスはとても気持ちが良かった。
カフェでは、おしゃれなサンドイッチにサラダとスープがついたセットが人気で、小さな子供連れの親子客が多かったと思う。
御多分に洩れず、うちの息子もベビーカーの頃からお世話になっていた。
僕が好きだったのは、生ハムとモッツァレラチーズをバゲットではさんだ「カスクルート」のセット。
息子はセットで付いてくるスープが大好きだったので、親のスープを渡して、さらにピンクのパングワンを別に買って食べさせるのが当時の定番だった。
カフェにもペンギンの小さな人形やぬいぐるみが置いてあって、息子はいつも小さなペンギン人形で遊んでいた。
ところがある日、息子が食後に遊んでいたペンギン人形を床に落としてしまい、さらに困ったことにその人形が板張りの床の隙間に落ち込んでしまったのだ。 取り出そうと思ったが、奥に行ってしまってなかなか取れそうにもない。 混雑していた時間でもあり、周りのお客さんにも迷惑になってしまうので、一旦諦めて店を後にした。
家内も「仕方ないよ」と諦めていたが、以前お店の人から「頑張ってコレクションしているんです」と聞いていたので、少なくとも何か代わりのものを渡して謝ろうと、僕は再度街へ出かけた。
ダメ元で近くの百均に入ると、なんと偶然にも小さなペンギンシリーズの人形が売っているではないか! まさに奇跡!
夏だったこともあり、団扇であおいでいるペンギン、扇風機に当たるペンギン、金魚鉢を抱えているペンギンなど、夏にちなんだコミカルで可愛らしいものばかりだった。
お店が気に入ってくれるかどうか分からないが、その人形を3、4個買って、パングワンへ謝罪に戻った。
「すみませんでした」と頭を下げて差し出すと、お店の人はにこやかに「気にしないでくださいね」と言って、僕が持ち込んだ夏のペンギンたちを、優しくコレクションの仲間に加えてくれた。 それ以来、お店の人とも親しく言葉を交わすようになり、パングワンは僕たち親子にとって、より特別な場所になった。
しかし、それから一、二年経った頃だろうか。 急にお店が閉じたままになってしまった。 後で聞くところによると、四代目が体調を崩されたのだという。 カフェとパン屋の両立は、あまりに忙しすぎたのだろう。 お店の前を通るたび、ブラインドの閉まった窓を見ては「早く復活して欲しいな」と願った。
その約一年後、パングワンは帰ってきた。 ただし、カフェ営業は無くし、「パン屋」一本に絞っての再開だった。 あの気持ちの良いテラスでランチができないのは残念だが、それよりもパングワンというお店が続いてくれることの方が、僕らにとっては大切だった。
ともあれ、今でもパングワンは三軒茶屋の人たちに愛される「街のパン屋さん」として繁盛している。 現在は日曜・月曜・第一火曜が定休日。 営業時間も短くなり、夕方にはほとんどのパンが売り切れてしまう。 けれど、それでいい。 お店の人たちが健やかにパンを焼き続けてくれることが、何より大事なのだから。
時折、パングワンでバゲットサンドの「カスクルート」を見つけると、ふと、まだ小さかった息子を自転車に乗せて保育園に送っていた頃を思い出す。
パングワンは、僕にとっていつまでも末長く続いて欲しいお店のひとつだ。
《終わり》
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