週刊READING LIFE vol.14

私には1年に2度、裁判がある≪週刊READING LIFE「今年こそは!」≫


記事:みずさわともみ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

かつては3度あった。
けれど、今は少しだけ楽になり2度。
私は、誰かから問われている気分になる。
年末年始、そしてお盆。以前はこれに誕生日も加わっていた。
その頃になると私はこのことを問われる。
「今、あなたは何をやっている人ですか?」
胸をはって、何をやっていると言える人間なのか? と。
誕生日がその裁判期間から外れたのは、自分の中で誕生日を、周りに感謝をする日だと認識するようになったからだ。育ててもらってありがとうという日になったため、以前より苦しくなることが減った。
けれど、年末年始、お盆の時期はいまだに裁判期間に感じられる。
お盆の頃は、毎年、高校の同窓会のはがきが届く。今、何をやっているのか? 同じ学校で学んだ人たちに胸をはれる自分であるか?
そんな問いかけをされる。
私は、もう長いこと、歌手だのシンガーソングライターだのと、なりたいものを口にしている。
けれど、まだ、なれてはいない。
そんな私にそのはがきは、
「いつ、シンガーソングライターになるんですか?」
と、問いかけてくる。
お盆はまだいい。そのはがきを無かったことにすればいいのだ。
あ、忘れてました~忙しくて!
なんて、気づかなかったことにできなくもないのだ。
けれど、年末年始はそうはいかない。
自ら、裁判の舞台に出て行かなくてはならない。
実家に帰り、家族や親戚に会うのもそうだが、年賀状。
これが、私にとっては本当にやっかいなのだ。
「私、元気に生きてます」
って書いて済むならいいだろう。けれど、それだと逆に友だちや先輩たちなど親しい人を、心配させてしまう。
「結婚しました!!」「子どもが生まれました!!」
という年賀状と交換に私は、
「今年もあきらめず、夢追い人でいます!!」
という宣言をせねばならないのだ。

やるの? やらないの?

それを、大勢の前で問われている。
そんな気分にさせられるのが、年末年始なのだ。
そのため、年賀状を書くのが毎年遅くなる。
やだやだ。これを受けとる人の気持ちが思い浮かぶ。
あぁ、まだ歌手だとか言ってるよ~。結婚はしないつもり? 出産とか大丈夫なの? 老後はどうする? 孤独死しないでよ?
妄想だって、わかってるけど。
結婚した友だち、出産した友だち、親切にしてくれる人への年賀状ほど私は書くのがつらいし、その人からの年賀状ほど、なぜか私にたくさん話しかけてくるのだ。
「大丈夫? このままで、しあわせになれる?」

そんな私が、1年前に立てた目標は、
「実力をつける」
ということだった。

私は運がいい。
そのため、チャンスや人に頼ってしまっているところがある。
たとえば、今勉強させてもらっている音楽スクールは、プロを何人も出している。私を教えてくれている先生は、そういうプロになった子たちを教えてきている。そういう場所で、私は勉強できている。
けれど、私はプロにはなれていない。
これは、環境に甘えて努力していない、ということだと思う。
私は、運がいい。
けれど私自身に、力がない。
それを、今年こそはなんとかしていきたい、と思った。
そのため、1月からセルフコーチングのため、原田メソッドを学んだ。そして、6月からは、書くことを少しでもできるようにしたくて、ライティングを天狼院書店で学び始めた。
がむしゃらにやった。
会社の先輩からは、
「また何かやってるの? 忙しそうだね」
と、おもしろがられた。
けれど、私は、年末の裁判期間の前までには、なんとか自分に実績を残してあげたかった。
今年は、がんばりました。ちょっとは成長したと思います。
と、発言させてあげたかった。
けれど、勉強すればするほど、自分のできてないことがわかり始めた。
もっと、学ばなければならないことが見えてきた。
そして、根本的なところが私は抜けていると気づいた。
あぁ私、私を認められてない。
多分、毎年行われる裁判は、自作自演だった。
裁判官は、私。
被告人も、私。
被害者も、弁護士も、検事も、私。
1人で何役もやっている、そんな裁判だったのだと思う。
じゃぁ、どうしたらいいのか?
多分、私が、私を認められたらいいんだ。
自分の感情を、うれしいことはうれしいんだね、って。
好きなものは、それでいいんだ、って。
悲しいことは、悲しかったら泣いたらいい、って。
そうやって、自分を認めていくことで、きっと変わって行くんだと思う。
変わって、きっと実家に帰るとき、胸をはりたいんだ。
親を、安心させたいんだと思う。
私、母さんの、望むようなしあわせは手に入れられそうもありません。
だけど、私は、私なりのしあわせに向かいつつあります。
そういうことを、胸をはって言えるようになりたいんだと思う。
1年かけて、きっと少しは、成長できたんだと思う。でも、これからの1年はもっと明確に。
「母さん、安心して。結構私、しあわせだから」
と力強く言えるように、自分を認めていきたい。
今年こそは!
私は「私のしあわせ」を、自分のことばで伝えられるようになりたい。

ライタープロフィール
みずさわともみ(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
新潟県生まれ、東京都在住。
大学卒業後、自分探しのため上京し、現在は音楽スクールで学びつつシンガーソングライターを目指す。
2018年1月よりセルフコーチングのため原田メソッドを学び、同年6月より歌詞を書くヒントを得ようと天狼院書店ライティング・ゼミを受講。同年9月よりライターズ倶楽部に参加。
趣味は邦画・洋楽の観賞と人間観察。おもしろそうなもの・人が好きなため、散財してしまうことが欠点。
好きな言葉は「明日やろうはバカヤロウ」。

http://tenro-in.com/zemi/66768


2019-01-08 | Posted in 週刊READING LIFE vol.14

関連記事