おっさんがおっさんを借りてみた!その2:アロハなおっさん《レンタル人間図鑑》
記事:射手座右聴き (天狼院公認ライター)
今日もおっさんがおっさんを借りてみます。
人が人を借りる。
それってどういうことだろう?
私は、おっさんレンタルのメンバーで、射手座右聴きと名乗っています。おっさんレンタルとは、1時間1000円でおっさんを借りられるサービスです。そんなの需要はあるのかって? 今日もおっさんに取材に来ました。
第一回目はこちら!
真冬に、アロハさんがやってきた。
今日借りるのは、アロハなおっさん。
—アロハさん、はじめまして。
アロハさん:はじめまして。うまく答えられますかね。
—アロハさんらしく答えてもらえたらいいです。
ア:(ファイルから紙を取り出す)
これ、読んでもらえますか?
昨日の夜、聞かれそうなことを、全部メモにしてきました。
―えええ? すごい真面目っすね。 (でもこれじゃインタビューにならない、どうしよう)
ありがとうございます。 とはいえ、質問させてください!
ア:はい、どうぞ。
―どうして、レンタルを始めたんですか?
ア:新聞記事でおっさんレンタルのことを知ったんです。で、もともと相談されるのが好きで、
やってみたいなと思いました。で、彼女の許可をとってから、登録しました。
― いきなりツッコミどころがたくさんあるのですが、彼女の許可ってどういうことですか?
ア:はい。やはり1対1で見ず知らずの女性と会うこともありますから、事前に話して置こうと思いました。
―たしかに。これは、レンタルあるあるですね。彼女や奥様に、オープンにしているおっさんと、そうでないおっさんがいますね。彼女はOKしてくれたんですか?
ア:はい。僕が、もともと人様の相談に乗るのが好きだ、と知っていたので。応援してくれる感じだったかどうかは、わかりません。
―私も、以前おつきあいしていた方に、「相談でほかの女性に会う時間のに、私と会う時間が少ないとはどういうことか」と詰められた記憶が蘇ってきました。
ア:そうでしたか。それはどうなったんですか。
―はい。それからですね、、、、、、 って、僕がアロハさんに相談してどうするんですか。
聞き方うまいなあ、もう。あなたへの取材ですよ、まず、名前の由来を教えてもらえますか。
ア:「アロハで待ってます」 にしようと思っていたんですよ。もともと南の島とアロハが好きで、とこが、面接の時、「そんなん、アロハなおっさん、でいいでしょう」と。
―ああ、面接で言われそうですね。レンタルはウクレレが多いのですか。
ア:はい。僕はイケメンでもないので、「なんとなく」 で借りる人は少ないのかなと思ったんです。
で、「ウクレレ、教えます」 ということをメインに打ち出しました。
人はなぜ、ウクレレを教わりたいのか。
―1時間1000円でウクレレを教えてくれるおっさん、ということですか。
ア:はい。1時間1000円で、その場で弾けるようにします。
―その場ですか。
ア:事前に練習してくるとか、大人だと大変じゃないですか。その場で、1曲弾けるようになってもらうのがいいかなって。で、2時間ウクレレやってから、
―それから?
ア:あとは、悩み相談2時間、という感じが多いです。
―といいますと?
ア:ウクレレは口実で、ひととおり練習したあと、
「実は」 と相談をしてくれる方が多いんですよ。
―たしかに。最初から相談があります! って言える人ばかりじゃないですものね。
ア:はい。私の場合は、「どうぞ、相談してください」 と掲げてないのがいいのかなと思います。
―「ウクレレ教えます」 のが、「なんでも相談してください」 よりも敷居が低いと。
これは発見ですね。
ア:はい。そうしているうちに、新たな展開がありまして。第二の柱ができました。
(撮影:アロハなおっさん)
猫に小判、いや、猫にカメラ
―第二の柱?
ア:私、ブログに猫の写真をアップしていたんですよ。それを見つけた猫好きのユーザーさんが、
「写真を撮って欲しい」 と言ってくれたんです。
―猫の写真ですか?
ア:それが、カップルの写真で。ユーザーさんと彼氏さんを撮影してほしいと。
―猫から人間ですか?
ア:とても緊張しました。ただのユーザーさんではなくて、ブログを書いてる方でしたので。失敗できないなと。
―なんと。感想がブログに掲載される可能性もありますものね。
ア:猫より何倍も緊張しましたが、運良く気に入ってもらえました。で、ネットにアップするのはNGだけど、ほかのユーザーさんに、サンプルとして見せるのはOKと言ってもらいました。で、
ポートレート撮影のレンタルも始めたんです。
―猫が新しい役割を運んで来てくれた感じですね。
ア:いまでは、ポートレート撮影とウクレレが半々くらいの割合です。
―あとは、その間に相談、ですか。
ア:はい。僕の場合、平日の昼間もお受けしているので、主婦の方のご相談が多いです。
育休中、子育て中の方のお話とか。あとは介護のお話。あとは、これは言っていいのかな。
―え?
ア:旦那さん以外にパートナーがいる方とか。
―おお。
ア:男性に相談すると、めんどくさいんだそうです。周りの人にも言えないし。
―おっさんなら、ちょうどいい、ということですか?
ア:そうですね。男性じゃない、という感じかと。
―そういえば、さっき悩み相談が好きとおっしゃってましたけど、どうしてですか?
ア:悩み相談て、自分が経験できないことを聞くじゃないですか。それが興味深いんです。
―というと?
ア:たとえたら、映画や本を読んでるような感じがするんです。
―たしかに。真剣に悩みと向き合ってる姿は、ストーリーがありますよね。記憶に残っているお話はありましたか。
ア:未来が見える、という方のお話です。
―どういうことですか?
ア:目の前の人の先のことが見えてしまうんだそうです。なので、人間関係が悩ましいという。
―ほんとにそんなことがあるんですか。
ア:私もそう思いました。子どもの頃に、命の境界線をみてしまってから、そんな能力がついた、と言っていました。あまりに強烈な話だったので、私もじっと聞いているしかなかったです。
―本当だとか、嘘だとか、そういう感じのことも言えないですものね。
ア:そうですね。聴くしかなかったです。でもひとつだけ怖かったのは、私のことも見えているのかなと。
隠せないのだろうなと。
―あー。なんだか、じわじわと震えがくるお話ですね。
ア:どこまで話すか、いつも迷います。
―アロハさんにとって、レンタルってなんですか。
ア:いろんな人のいろんな人生の話を聴ける、貴重な機会です。映画や本を読むような感じですね。
その上、1時間1000円いただけると。
―エンタメに近い感覚ですかね。
ア:そうですね。フリーランスの射手座さん(私)とはまたスタンスが違うと思います。私はサラリーマンなので、余暇にやっている感じです。
―なるほど。そうかもしれませんね。最後に、お約束で、私のプロフィールにダメだしをお願いします。
ア:えー。ダメだし苦手なんですよ。
(しばらく読んで)
ア:そうですね。あえて言えば、簡潔過ぎますかね。みんなに、借りられようとしていませんか。
どんな人に借りられたいか、がわかりにくいです。
―苦手と言いながら、キビシーっすね。
ア:私のところに来る方は、文章を隅々まで読んでからきます。長い文章で選んでもらった人は
長いつきあいができています。プロフィールって、お互いを選ぶためのものかもしれないですね。
どこまでも真面目で紳士なアロハさん。
「会社勤めでらっしゃるのに、写真大丈夫ですか」と聞くと
「そんな、誰も見ちゃいないですよ」ニヤリとした顔がすこしいたずらっぽく見えました。
あなたもいつか、この人を借りる日が来るかもしれません。
いや、来ないかもしれません。
❏人間レンタルデータ No.2
アロハなおっさんです(^^)/
【プロフィル】
1963年1月生まれ。55歳。
バツ2、独身(カノジョあり)、ネコ(ニマちん)と同居。
大手マスコミ勤務。30年以上ずっとデザインの仕事をしております。
出世とは無縁のダメ社員ですが「継続は力なり」とそれなりに頑張っています。
❏ライタープロフィール:射手座右聴き (天狼院公認ライター)
東京生まれ静岡育ち。バツイチ独身。
大学卒業後、広告会社でCM制作に携わる。40代半ばで、フリーのクリエイティブディレクターに。退職時のキャリア相談をきっかけに、中高年男性の人生転換期に大きな関心を持つ。本業の合間に、1時間1000円で自分を貸し出す「おっさんレンタル」に登録。4年で300人ほどの相談や依頼を受ける。同じ時期に、某有名WEBライターのイベントでのDJをきっかけにWEBライティングに興味を持ち、天狼院書店ライティングゼミの門を叩く。「人生100年時代の折り返し地点をどう生きるか」 「普通のおっさんが、世間から疎まれずに生きていくにはどうするか」 をメインテーマに楽しく元気の出るライティングを志す。天狼院公認ライター。
メディア出演:スマステーション(2015年),スーパーJチャンネル, BBCラジオ(2016年)におっさんレンタルメンバー
として出演
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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