第2回:ソフトバンクIPO狂想曲≪素人投資家いちねんせい実況中!≫
記事:安光伸江(READING LIFE公認ライター)
「あっちゃ~、1500円切っとるやん」
2018年12月19日、鳴り物入りで始まったソフトバンクの新規公開株(IPO)は、みんなが買った1500円より低い1460円台で始まった。
ソフトバンクって有名じゃん、ケータイの3大キャリアじゃん、上場してなかったの? と不思議だったけど、もちろん親会社のソフトバンクグループは上場していて、その中のケータイ部門の子会社がこのたび上場したらしい。
経済は苦手だけどケータイは大好きな私は、親から譲り受けたdocomo株に加え、11月末にKDDI株を買っていた。「指値(さしね)」とかいう、この値段以下に下がったら買いますよ、という注文をネット証券でテキトーに出しておいたら、始値がそれより低くてうまく買えちゃった。大手証券会社の担当のにぃちゃんに「2598円で買った」というと「いい値段で買えましたね」と褒められた。なかなか口のうまいにぃちゃんである。
そんなわけでケータイ2社の株主になった私は、ソフトバンクのIPOにも興味があった。というかあちこちでIPOの宣伝をしているのが気になっていた。ネット証券で扱うのはS証券だけということで、いちおう口座は作ったんだけど、めんどくさいから放っておいた。私が取引しているネット証券では扱いがないとのことだ。抽選に参加できずちょっとがっかりしたけど、まぁいいや。
IPOの仕組みは
公開する仮条件が発表される(この場合1500円)
ブックビルディング、とかいう「買いたい」と希望を予約する期間がある
買いたい人が集まったところで、抽選をする
当選した人には連絡があって、買うかどうか申し込みをする
お金が引き落とされる
上場された瞬間から値段が動く!
というもの。たしか条件が出たのが11月末で、ブックビルディングが12月3~7日午前11時、抽選発表が10日夕方。14日にお金が落ちて、19日に上場! というスケジュールだったような記憶がある。
私も抽選に参加しよう! と思ってわくわくしてサイトを見ていたら、私のやってるネット証券では扱わないという。がっかり。そして大手証券の担当のにぃちゃんに聞いてみたら、大手証券でもネットからの申し込みだと抽選で100株までだけど、担当者がついている場合はそれとは別枠があって、いくらでも申し込めるんだそうだ。担当者のさじ加減で誰に何株割り当てるかも決まるらしい。
なんかずるい
と思わないでもなかったけど、1500円なら安いし~、KDDIやdocomoの値段をみる限りではきっと2000円とか2500円とかすぐ上がるんだろうな~、なんてバラ色の未来を夢見て申し込んでみることにした。配当も5%あるっていうし。それだけでもいいじゃない?
私の計画では、2000円くらいに上がったところで一部を売っちゃって、100株は配当狙いで確保しておく、ということを考えた。だから……200株? いや、1500円だし、300株いってみようか。大手証券会社で買うと手数料がだいぶかかるから50万円分くらいまとめた方がいいって前にアップル株を買い足した時にぃちゃんも言ってたし。
ということで300株申し込んだ。あとでわかったところによると、IPOの場合はお値段の中に手数料が入っているので、1500円なら1500円だけ払えばいいらしい。しまったなぁ、それなら200か100でもよかったな、と思ったけどまぁいいや。これも勉強だ。
抽選の人は100株までしか申し込めなくて、担当者がついている人は、申し込んだ株数が最高、0のこともある、という話だったけど、抽選発表の日に連絡したらちゃんと300株買えるということだった。じゃぁ行っちゃいましょう! ということにした。
……のだが
バラ色の未来は、初日からあえなく消え去ってしまった……
だいたい公開の条件だったお値段より安い初値なんてけしからん。条件が出てから上場までの間に、ソフトバンクの通信障害があったり、ファーウェイ? かなんか? とごたごたしたり、悪材料がどっちゃり出てきて、もしかしたら安くなるかも、とは言われていたけど、天下のソフトバンクだよ? 1500円を切るなんて、切るなんて……
ああ
でももう買っちゃったものはしょうがない。お金が戻ってくるわけではない。それより前、アメリカ株が どっちゃり ががっと 下がってしまって、評価額の損益マイナスにはだいぶメンタルの耐性がついていた。少しくらい下がったって大丈夫だよ、どうせ配当狙いだし。中長期保有だよ。
……涙目
下がる下がるどんどん下がる。1400円台から1300円台、時間を追うごとにどんどん下がっていく。いやぁここまで下がると気持ちいいねぇ。スタバで株価のアプリを見ながらはらはらドキドキしていたけど、もういいやと諦めて帰ることにした。
待てよ
家に帰る道すがら、いつも歩く桜並木で、ふと思い立った。父が生前植えた桜の木のあるあたりだった。
もしかして、安くなったところで買っておけば、値上がりしたときに売りやすいんじゃない?
ナンピン買いというのか押し目買いというのかよく知らないけど、下がったところで買う、という作戦も、あるにはあるらしい。
よ~しネット証券でやってみよう! 買えないかもしれないけど、それでもいいや。
というので1298円くらいで指値を出してみたら、一瞬で買えちゃった。お時間、14時54分くらい。それから15時の終値までにさらに下がったのにはびっくりした!!!!!!
すごいすごい。証券会社が違うから「平均取得金額」とやらは合算されないけど、これで全部が1500円というわけではなくなった。愛用のヤフーのファイナンスアプリ(パソコンでもiPhoneでも見られる)には、証券会社が違うところは別に値段を入れておいた。これでどっちがマイナスが大きいか比べられるよ! アメリカ株はドルだから別のお気に入りにしてあるよ! (えっへん)
そして翌日の木曜日はさらに下がった。1180円とか? 私が買った値段よりもさらに100円以上下がった。ぐるんぐるん。動く動く。安くなってから買おうと思っていた人もけっこういたみたい。後から聞いたけど、うちの主治医も安くなってから買ったって言ってたなぁ。うちとは違う大手証券会社から電話があったらしいけど。売れ残ったのかな? 抽選、意味ないじゃん。
さて今度は指値売りっていうのをやってみようと思った。この値段以上になったら売りますよ、という値段を指定するのだ。1500円まで行かなくても売ったら儲けが出るじゃん? いいじゃん? と思って、1万円くらいは儲けが欲しいよね、と1402円に指しておいた。もちろんそんなところまでは上がらないので、「出来ず」で終わった。取引なし、ということだ。
次の金曜日は、アメリカの株安を受けてKDDIやdocomo株ががんがん下がっていた。それを尻目に、ソフトバンクはけっこう上がっている。1400円はまだ行かないよなぁ、でも売る練習をしてみたいなぁ、なんて思って、358という数字が縁起がいいから1358円に訂正注文を一度出してみた。でもやっぱり欲が出て、1402円に戻した。1万円の利益にこだわったのだ。
この日はなんと1370円まで上がった! 1402円まであとちょっと、と思ったけど、そうは問屋が卸さない。スタバでiPhoneを見ていたけどあとはおまかせ~、とおかいものをして帰ったら、終値は1316円だった。そっか、1370円までいったところで売っても、1100円台で買った人にとっては十分なリターンなんだね。
そんなこんなで上場した最初の週はドタバタで終わった。
その後年末にかけてもう一度ナンピン買いをして、ネット証券での購入価格(平均取得価格)は1275円ほどになった。おかげで新年になってからはソフトバンクの500株のトータルでプラスになった!!!!! うれしい。プラスだとうれしい。ああ幸せ。ささやかな幸せを大切にしたいな、と思った。
アメリカ株のマイナスは、年末に1万ドル超えたんだけどね(号泣)。
そんなわけで今日の教訓:IPOは期待しすぎないように。
株式投資ってほんと、メンタルが重要だよなぁ。と思った。
今年はプラスで終わりますように! 配当たくさんもらえますように!!!
つづく。
❏ライタープロフィール:安光 伸江(READING LIFE 公認ライター)
山口県下関市出身・在住。下関西高、東京大学卒業、東京藝術大学大学院修了。
大学卒業後は東京で声楽・器楽の伴奏ピアニストや音大非常勤講師などの音楽活動をしていたが、2008年9月に病気療養のため実家に帰る。その後2016・2018年と両親を看取る。2016年乳がんの全摘手術と抗がん剤を体験した乳がんサバイバーでもある。ライター、セラピストの卵、ブロガー、素人投資家。
天狼院メディアグランプリ 21st season 総合優勝。週間1位複数回。
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