第3回:証券会社の言うままアメリカ株を買ったら年末に評価額マイナス1万ドル超えちゃったお話≪素人投資家いちねんせい実況中!≫
記事:安光伸江(READING LIFE公認ライター)
記事:安光伸江(READING LIFE公認ライター)
「お金、返してくださいっ!」
2018年秋にアップル株からアマゾン株に買い換えたのは、証券会社の担当のお姉さんに強く言われたからだった。手数料込みで2040ドルで取得。上場来高値が2050ドルくらいだから、ほとんど一番高い時に「買わされた」。
ところがその後トランプさんが何やら口走ったか米中の貿易摩擦がどうしたか、何が原因だったのか忘れちゃったけど、買い換えてほとんどすぐの頃から株安が始まってしまったのだ!!! しかも、前に持っていたアップルはあまり下がっていなくて、今度買ったアマゾン(ほかの株もだが)はががっと下がっている。
当時はマネーフォワードという資産管理アプリで円建ての評価額を見ていたのだが、損益評価額マイナス40万円とかになって
……ぷち
頭の中で血管が切れる音がした。何十万もマイナスだったら、損切りできないじゃん! と、なぜか「損切り」という言葉を知っていた私はぶち切れた。こんなことなら、アップルのままにしておいた方がよかったじゃん!
証券会社のお問い合わせのページから切々と窮状を訴え、担当の人にも電話をしてみたら
折り返し、上司にあたる課長さんから直々にお電話があった。よくわからないまま強引に買わされてしまったという私の主張をいちおうは聞いてくれたのだけれども、アマゾンじゃなくてアップルを持っていた元の状態に戻してほしい、お金を返してほしい、というのは
法律上、出来ない
とのことだった。そんなことも知らない素人の私。よく考えれば、そんなことが出来るくらいなら株で損する人なんていないよね。
お姉さんから詳しい説明を聞いた覚えはあまりないけれど、それはお姉さんだけが悪いわけではない。親の遺産として譲り受けた株だったが、母が死んだ悲しみから立ち直れず、いろいろ投資させようとするお姉さんの話をちゃんと受け止められなかったのだ。でもさぁ。そういう状態も、わかった上で投資させてよ。じぃちゃんの三回忌より前にママが死にました、株を全部受け継ぎました、遺産でまとまった資金もそれなりにあります、さぁどんどん投資しましょう、って気にはならないって。国債を買った時だって、もっとお金があるんじゃないか、と探りを入れられたから、不信感もあったしね。
それでお姉さんも説明が足りなかったよね、ということで、担当者を代えてもらうことになった。男性がいいか女性がいいか、とか希望を聞かれたけど、別に男女がどうのこうのということではなくて、アップルのことがわかってる人がいいなぁと思ったので、ITに強い人、とかなんとか希望を言ったのかな。お姉さんはAndroidのスマホを持っていたけど、あまり使いこなしている風ではなかったから。
そしたら今度の担当は、微に入り細に入り、いろんなことを説明してくれる人になった。アップルがあまり下がらないのはたぶん自社株買いだろうと教えてくれた。iPhoneユーザーでもあった。うちに来た時、テーブルの上にiPadとかMacBookとかいろいろ並べておいたら、アップルフリーク(私としては信者ではないと思う)だと認めてくれた。あきれていたのかもしれないけど。
だが
株安は、とまらな~い。
40万円だったマイナスは、60万円、80万円と膨らんでいく。おいおい。なんとかしてよ。それで円建てで見るのはあまり意味がないと担当のにぃちゃんに教えてもらって、マネーフォワードではなく、ヤフーの株価のサイトで日米別に見ることにした。iPhoneには「ファイナンス」というアプリが入っていて、ヤフーのサイトと連動している。そういえば何年か前、親が持っていた株を「おうちの株」としてポートフォリオにまとめていた形跡がある。
最初は持っている株を日米合わせて同じポートフォリオに入れていたけど、円とドルで数字がごちゃごちゃになってわけがわからないので
おうちの日本株
アメリカ株
というポートフォリオに分けてみることにした! こうすると、円建てとドル建てでどちらがどれくらいマイナスになっているかがわかるのだ。(えっへん)
にぃちゃんには、アマゾンを早く手放すために、下がったところで一度買っておく手があると言われた。そしたら2000ドルまで上がらなくてもたとえば1800ドルくらいのところで売れるというから。でも私は「いやぁぁぁぁ」と叫んだ。アマゾンに払いたくない。ぶぶ~。日本の amazon.co.jp はめちゃくちゃ使ってるしプライム会員だしKindle unlimitedもAmazon music unlimitedも入ってるけど、アマゾンの株はもう買いたくなぁい。
そしたら、その資金があるなら、もともと欲しいんだからアップル株を買っちゃえばいいんだよね、ということになった!!!!! にぃちゃん話がわかる。どうせアマゾン株をすぐ売ることはできない。マイナスが確定しちゃうから。マイナスだとわかっていて損を確定させるために売るのを損切りというらしいのだが、この段階ではしたくない。というかできない。数十万円は、私にとっては大金なのだ!!!!!
ほんでアマゾンを売り払うために買い足すよりは、その資金でアップル株を買っちゃいましょう~、ということになり。その頃にはアップルも下がり始めたので、前より安いところで買えた。最初に140株買った時は手数料込みで210ドルくらいだったけど、今度は25株ずつ2回に分けて買って、平均の取得価格が192ドルほどになった。
この頃になると私も評価損益マイナスに対して少しずつメンタルの耐性がついてきた。どうせ数字だ。エネルギーでしかない。時間がたって株価が戻ることを祈るしかない。
ところがその後も株価はどんどん下がった。持ち直すかな~と思ってネット証券でアップル株をちょこっと買っておいたら、さらに下がった。アップルショック、なんて言葉が経済紙面をかけめぐった。
ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
だからアメリカ株なんかやりたくなかったんだよ! お姉さんの甘言にだまされて(というと人聞きが悪いが)アメリカ株を始めたことを、心の底から後悔した。しかも、日本株ならeメンバーは口座の管理料がかからないのに、アメリカ株は口座管理料がかかるのだ。さらに、eメンバーのサイトから自分で売り買いするところがみつからず、相対(あいたい)取引するかアメリカに買いに行くか、証券会社の担当者に頼まないといけないのだ。相対取引というのは、証券会社が持っている株を、アメリカ市場の前日の終値と今の為替レートで買う取引のことらしい。ともかく、自分で好きな時に売買することができないのだ! しかも10株からしか買えず、最低の手数料もネット証券より高いから、まとめて買わないといけないのだ!
その頃になると私はネット証券でKDDI株をひょこっと買い、よく見たらアメリカ株も買えるじゃんということでアップルやらマイクロソフトやらちょこっと買うというワザを覚えていた。ここでは1株から買えるみたい。でも大手証券会社で10株からだったから、なんとなく10株ずつ買っちゃった。ネット銀行にちょこちょこ資金を移して、ちょこちょこ買っていく。身の丈にあった投資、みたいな感じで、これもアメリカ株の方はマイナスではあったけれども、まぁ許せる範囲だった。日本株はトータルでプラス。どんなもんだい!
だが
大手証券会社の方は
どっか~~~~~~ん
マイナス、でかっ! 年末に向かってどんどん株価が下がっていくではないか!
そしてとうとう
マイナス1万ドルを超えてしまった……多いときで1万3千ドルくらいだっただろうか。
あ~あ。
昨年末この連載企画をライターズ倶楽部の企画会議に最初に出した時「ポートフォリオの話はREADING LIFEにないからいいかもね~、すっからかんになると面白いんだけどね~、100万円くらいすっちゃうとか」なんて三浦さんが笑いながら言っていたのだけど
ひゃくまんえん
いやもっとですけど
ほんとに、マイナスになってしまうとは!!!!!!
正直、ビビった。お姉さんから電話をもらってアマゾンに買い換えたのはたしかアップルの秋の発表会直後だったから、3ヶ月かそこらしかたってない。なのになんで1万ドル以上もマイナスなわけ~! うがぁぁぁぁぁ!!!!!
でも株というのは売り買いさえしなければ損も儲けも確定しない。評価額というのは数字の上だけのことで、どうせ元の2000ドルくらいまで戻らないと売るに売れないんだから、塩漬けなんだから、と自分を慰めた……ぜんぜん慰めになってないけど。
年末はくら~い雰囲気だったけど、年が明けたら少し株価が上向いてきた。しかもアマゾンがアップルやマイクロソフトを抜いて時価総額1位なんてニュースも入ってきた。へぇ、アマゾンを持っていてもいいのかな? でも配当がないしな……
そしてヤフーのファイナンスアプリでアメリカ株のところを見ると、損益マイナス8千ドル台になっていた。やった! 8千ドルだよ! 前は1万数千ドルだったのに、ずいぶんマイナスが減ったよ! すご~く、すご~くうれしかった。マイナス40万円でぶち切れた数ヶ月前とはエラい違いだ。いやぁ私も成長したなぁ。株をやるならこれくらい図太くならなくちゃなぁ。
さて時価総額1位になったアマゾン株はこのまま持ち直すのか? 円安だった秋に買った株の損失は取り戻せるのか? これからの進展に、どきどきわくわくしているのであった。
そんなわけで今日の教訓:株はタイミング! 一喜一憂しすぎない!
つづく。
❏ライタープロフィール:安光 伸江(READING LIFE 公認ライター)
山口県下関市出身・在住。下関西高、東京大学卒業、東京藝術大学大学院修了。
大学卒業後は東京で声楽・器楽の伴奏ピアニストや音大非常勤講師などの音楽活動をしていたが、2008年9月に病気療養のため実家に帰る。その後2016・2018年と両親を看取る。2016年乳がんの全摘手術と抗がん剤を体験した乳がんサバイバーでもある。LTE契約なしのガラケーとiPhone 2本・Android 1本(格安SIM利用)を合計月4000円ほどで使うなど大のガジェット好き。ライター、セラピストの卵、ブロガー、素人投資家。
天狼院メディアグランプリ 21st season 総合優勝。週間1位複数回。
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