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メディアグランプリ

映画と原作小説、両方見ることの楽しみ方《週刊READING LIFE Vol.63 2020年に読むべきBOOK LIST》


記事:星永俊太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「間違い探し」は好きですか?
 
時々、サイゼリアに行くのですが、その時の楽しみが「間違い探し」です。2つの同じ絵柄の中に9つ異なる箇所があって、その異なる箇所を探すって遊びです。サイゼリアの間違い探しは、難易度がちょうどいい感じで作られていて、8個くらいまではすぐに見つかるのに、最後の1つがなかなか見つかりません。家族で行くと、先に見つけ出した人が、なかなか見つけられない人にヒントを出したりしながら食事を楽しむことが出来ます。
 
ちなみに、私が最近はまっているのが、原作小説と映画を見比べて、違いを探すことなんです。
 
間違い探しとは違ってどっちがいい悪いはなく、どこが違っているのか? どういう意図で変えたのか? を想像するのが楽しいのです。
 
ここでは、「君の膵臓が食べたい」と「屍人荘の殺人」について述べたいと思います。なぜこの2作品なのか? 私自身も最初わかりませんでした。でも、ある時気が付きました。「あ、主演が浜辺美波さんだ」と。どうやら単なる浜辺美波さん好きなだけかもしれません。でも、この2作品を題材に原作小説と映画の違いを探すことについてお話させて頂きたいと思います。
 
基本的には、原作小説があって、それを元に映画が作られることが多いと思います。ですので、原作小説に対して映画版で変更されている箇所について考えることになります。これは別に原作小説の足りない部分を映画版で補強しているわけではなく、およそ2時間という映画の時間という枠の中で最大限に魅力を伝えるために映画版で工夫をしている箇所であって、好き嫌いはそれぞれあるとは思います。
 
変更されている点の主なものは、以下の3点でしょうか。
 
・設定の変更や削除
・キャラクタの強調
・展開の変更
 
1つ目の「設定の変更や削除」は、「屍人荘の殺人」では、メインストーリーの裏に流れていたサブストーリが大きく削除されていたように思います。原作小説を読んでいるときに「ちょっとわかりにくいな」「入り込めないな」と思っていた部分でもあったので、映画で削除されていた時には「なくても話としては通じるよね」とニヤッとしました。
 
そして、サブストーリーを削ったことで、関連する設定も変更されました。その結果、事件が発生するまでの展開がとてもスムーズになっていました。なるほど、サブストーリーのあれに関連するために、あの設定でああいう行動を取らざるを得なかったけども、サブストーリーを削ったならあの設定は意味がなくなるから変えちゃっても問題ないんだ。なるほど。
 
2つ目の「キャラクタの強調」は、「屍人荘の殺人」で多用されていました。小説ではなかなかやりにくいと思うのですが、何かをするときに特定のポーズを取る、例えば指を鳴らす、手をパチンと打つといったものやら、四字熟語を言う、特徴のある話し方、といった強調がされていました。読者の意識をそちらに向けることができるし、そのキャラクタ自身を特徴づけることができます。
 
3つ目の「展開の変更」は、クライマックスをさらに盛り上げるため、もしくは、最後ここで終わりたいって意図を感じる変更です。これは「君の膵臓を食べたい」の実写映画で特に感じました。
 
「君の膵臓を食べたい」の実写映画では小栗旬さん、北川景子さんが出演されていましたが、原作小説では彼らに相当する役柄はでていませんでした。原作小説を読んだ後も、なぜわざわざ彼らが出演していたのかわかりませんでした。有名な俳優さんを出したほうが、知名度が上がるから? くらいにしか思っていませんでした。
 
でも、実写映画を4回、原作小説を2回、アニメ映画を1回見るうちに気がついたのです。原作小説はもちろんそれ自体でも素敵なのですが、私としては展開が少し物足りない部分があるのです。「あそこは、こうした方がより良くなるような気がするんだけどな」と思った瞬間に気が付きました。実写映画がまさにその展開だったことに。
 
そして、その展開にするためには、小栗旬さん、北川景子さんの役柄が必要不可欠であり、そこから逆算して考えると、彼らの現在置かれた立場、彼らに発生したイベントのすべてが必要なジグゾーパズルのピースであり、それらのピースがパタパタパタパタっと埋まっていったのです。それに気がついた時鳥肌が立ちました。そういうことだったのか、と。
 
それが、映画の脚本家、演出家、監督の頭の中に触れたようで、とても気持ちが良かったんです。

 

 

 

原作小説が劣っている、と言っている訳ではありません。原作小説の世界観に基づいて、それらをさらに良くしようと知恵を絞っている人たちの思考の流れを想像するのが、ただただ楽しいのです。
 
言ってみたら、犯人の思考を推理する探偵のようなものかもしれません。ミステリー小説の名探偵も、犯人の思考が理解できたときには「そういうことだったのか」と鳥肌が立っているのかもしれません。

 

 

 

できるなら、これらの作品の具体的な変化点と、私の想像する変更の意図について、詳しく語りたいのですが、まだ見ていない方のために、ここでは泣く泣くここまでにしておきます。
 
ぜひ、実際に映画を見て、小説を読んでみて下さい。
 
そして、「あっここ違う!」と気づいたら、なぜ変えたんだろう? と考えてみて下さい。「あっそういうことか!」と気がついたなら、ニヤニヤしながら一緒に語り合いましょう。楽しみに待っています。

 
 
 
 

◽︎星永俊太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
ソフト開発のお仕事をする会社員
2018年10月から天狼院ライティング・ゼミの受講を経て、
現在ライターズ倶楽部に在籍中
心理学と創作に興味があります。
「勇気、不安、喜び」溢れた物語を書いていきます。
日本メンタルヘルス協会 公認心理カウンセラー

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