ほぼ、パソコン!! 新OSになったiPad が最高《週刊READING LIFE Vol.66 買ってよかった! 2020年おすすめツール》
記事:伊藤千里(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
「好きなことが見つからないなら、探しつづけてください。決して立ち止まってはいけない」
パソコンを探していたのに、気がついたらなぜかスティーブ・ジョブズの伝記を読んでいた……
きっかけは、天狼院書店のライティング・ゼミだった。
このゼミを受講する人は、ライターや作家などのプロの方、仕事に役立てようという方もいるそうだが、7割の人は「なんとなく」という理由で受講するという。わたしもそんなひとりで、「秘めフォト」がきっかけで天狼院書店を知り、お店に何度かおとずれるうちに「なんとなく」受講することになった。
「なんとなく」始めたことだったので、ライティング、つまり文章を書くためのツールにはあまりこだわっていなかった。というか、とりあえず家にあるパソコンでいいやと思っていた。わたしが使っていたパソコンは、5年前に親が安いからと特にスペックを気にせず買ったものを、いらなくなったからとさらに安値で譲りうけたものだった。
ライティングを始めるまで、そのパソコンははっきりいって「DVD再生装置」だった。わたしの家にはテレビがない。たまに映画をみたいときだけ押し入れの奥からひっぱりだされるそのパソコンは、DVDを再生するためだけに使われており、家にインターネットも引いていないので、OSのアップデートも全くしていないものだった。
ライティング・ゼミでは、毎週課題を投稿することになっていた。でも、OSも一切更新しておらず、CPUのオツムもあまり賢くないわたしのパソコンにはそれすらも荷が重かった。
電源を入れてからWordが立ちあがるまでに5分くらいかかるし、文字入力をしていても頻繁にフリーズする。いままで、DVD再生装置として生きてきたのに、いきなり高度なことをやらせようとしたので、パソコン本人が「おいおい……いまさらパソコンとして使おうというのかい?」とびっくりしているかのようだった。Wi-Fiにつなぐのも、課題として書いた記事をFacebookのグループに投稿するのも、とにかくなんでもかんでも時間がかかった。
課題は毎週かかさず投稿した。ライティングがすごく楽しかったから。
そして、ライティングが楽しくなればなるほど、元DVD再生装置のトロさでその楽しさが減じられることにウンザリしてきたわたしは、思い切ってパソコンを買い替えることにした。
わたしは、ほぼミニマリストなので、持ち物にはとことんこだわるタイプだ。
どうせ買うなら、薄くて軽くてデザインがステキなものがほしいし、一番重視したいのは、自分が「好き」だと思えるかどうかだった。
近くの家電量販店に行き、ずらっと並んでいるWindowsのパソコンをみた。でもその中に自分が「好き」だと思えるものがみつからなかった。それでなんとなく、白くひかり輝くAppleコーナーに目をやると、MacBookが目にとまった。
「MacBook、いいな」
「惚れた」という感覚だった。いままでWindowsしか使ったことがないので、Macには全く馴染みはないし、欲しいパソコンの選択肢にも入っていなかった。
でもその姿は、薄くて軽くて、そして無駄がない。これをスタバに持っていって、ライティングをしている自分の姿を想像するだけでニヤニヤしたし、ほとんど物がなくガラーンとした自宅の机の上にこれが置いてあるだけで、きっとそこがライティングの聖域みたいになるんじゃないかとウキウキした。
しかしその夢は、値段をみた瞬間に打ち砕かれた。
「じゅ、じゅうさんまん……」
まぁ、それくらいするよね、10万円は超えるよね、とは思っていたけど、やっぱり高い。
というのは、パソコンを買い替えたいというその目的はライティングの際のストレスを軽減することだったのだ。いわば、ライティングを快適にするために新しい「ワープロ」がほしかったのだ。ワープロに10万円以上は高すぎる……。
その時はパソコンはあきらめて、しばらく「元DVD再生装置」でしばらくライティングをする日々が続いた。
わたしはライティングがもっともっと好きになっていった。好きになるにつれ、やはり快適にライティングしたいという気持ちは強くなる。でも、探してみたなかで、一目惚れするレベルのものはMacBookしか見つからなかった。しかし、「ワープロ」としての機能を求めているのに、10万円は高すぎる。
こうしてぐるぐる考えていたところ、やっぱり諦めきれずに見ていたAppleのホームページで気になる記事を目にした。
「iPad OS」
iPadはいままで iPhoneと共通のOS(iOS)を使っており、iPadは「画面が大きいiPhone」というイメージが強かった。しかし、iPadの底力をもっと生かすため、2019年9月からiPad専用のOSがリリースされるという。
「iPad OS」……気になってもっと情報を集めてみた。それは公式ホームページだったり、Apple製品が大好きな人が全力でAppleのことを語っているサイトだったり、雑誌だったりしたのだが、新しい「iPad OS」がリリースされれば、iPadを「ほぼパソコン」のように使えるようになるのだという。
「薄くて軽くて、ステキなライティングのためのパソコンが欲しい」
これならわたしの希望を叶えてくれるのではないかと思った。
たしかにiPadなら薄くて軽い。MacBookは、一番軽いMacBook Airでも1000gちょっとするのだが、iPadならその半分くらいの重さである。そして、iPadだけではライティングをするのにはちょっと使いづらいが、外付けキーボードをBluetoothで接続して使えばいい。
さらに最近のiPadは「Apple Pencil」が使えるのだ。これでぺンで書くように、iPadに文字や絵を書くことができる。
iPadでライティングの記事を書き、Apple Pencilを使って天狼院のゼミのノートをとる……最強の組み合わせじゃないか!!
いろいろ比較した結果、iPad(第6世代)を購入した。
まず、第6世代を選んだのは、用途と値段の釣り合いを考えてた結果である。
たしかにiPadにはもっと高性能のiPad Proというモデルも存在する。しかし、自分の用途を考えるとそれはかなりオーバースペックで、持て余す自信しかなかったし、値段もMacBookとほとんど同じになってしまって意味がない。
そして、第6世代のこのiPad、画面の大きさは9.7インチだ。そしてこのサイズには大きなメリットがある。なぜなら、WordやExcelといったWindowsのソフトが無料で使えるのは9.7インチまでなのだ。これ以上画面が大きくなると、Windowsのソフトを使うのは有料になってくる。
それから、第6世代のiPadには、第一世代のApple Pencilが対応している。
第一世代のApple Pencilの充電方法はかなり独特……というか、「これ、スティーブ・ジョブズが見たら激怒するんちゃうか?」と眉をひそめたくなるような充電方法ではあるのだが、それでもApple Pencilが使えるというのは大きい。
(ちなみに、充電方法について、気になったら画像検索で見てみてほしい。絶対ジョブズが見たら激怒すると思う)
最後に、これをどこで買ったかということを紹介しておきたい。
わたしは「Apple公式整備済製品」のiPadを購入した。
あなたは「Apple公式整備済製品」というのを聞いたことはあるだろうか。
あまり知られていないそうだが、ほぼ新品のApple製品が平均約15%安く買える。しかも、Appleの公式サイトで、である。
Apple整備済製品とは、なんらかの原因で返品・交換などがされたApple製品をAppleが修理しなおして、ほぼ新品の状態で販売しているものであり、「新中古品」みたいなものだと思ってもらえればいいと思う。
それがAppleの公式サイトで購入できるのだ。よくわからないところで激安の中古品を買うよりもよっぽど信頼できるし、しかも、ちょっと安く購入できる。
わたしは「ワープロ」と「ノート」としてiPadが欲しいだけなので、このほぼ新品で充分だと思った。
こうして手に入れたiPadを、わたしは溺愛している。
電源を入れてからの立ち上がりも早く、文章もストレスなく打てる。
Apple Pencilでノートを取るのも最高だ。紙のノートと違って何度も書き直せたり、あとで書いた文章や図の位置や大きさも自由に調整できる。
そして、iPadを「ほぼパソコン」にしてくれるiPad OSである。
代表的な機能としては、
ホーム画面へのウィジェット表示
画面分割(異なるアプリでも、種類によっては同じアプリを同時に2画面表示できる)
マウスが使える
ファイル管理機能(データ整理や外付けのドライブが使える)
などが挙げられる。
そして、一番嬉しかった機能が、「Safariがデスクトップ版に対応」したことである。
なぜかといえば、デスクトップ版のFacebookでなければ、ライティング・ゼミの課題投稿ができないからだ。ライティングを快適にするために新しいパソコンが欲しかったわたしにとってこの機能は必須だった。
何度もいうが、わたしはこのiPadを溺愛している。新しいパソコンが欲しいと思ってから、買うまでに1ヶ月くらい悩んだが、とことんこだわって、とことん調べて本当にいい買い物をしたと思っている。
iPadを購入するとき、ふと思い立ってAppleの創始者であるスティーブ・ジョブズの伝記を読んでみた。そうすると、2005年スタンフォード大学の卒業式に招かれた彼は、世界で最も優秀な大学の卒業生にこんなスピーチをしていた。
「皆さんも大好きなことを見つけてください。
仕事でも恋愛でも同じです。仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。そして偉大なことをやり抜くただ一つの道は、仕事を愛することでしょう。好きなことがまだ見つからないなら、探し続けてください。決して立ち止まってはいけない。」
このスピーチでは、彼は仕事について「好きなことが見つかるまで、探し続けろ」とのべているのであるが、わたしはとことん探して、最後にたどり着いたのが彼の会社の製品で良かった、と彼の遺した言葉を読んで思った。
◽︎伊藤千里(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
1987年生まれ。同志社大学法学部卒。
両親が公務員のためか「安定、慎重、無難」がモットー。大学卒業後は警察庁に入庁するが、霞ヶ関のブラックな勤務に疲れ果て、28歳の時「世界で最もストレスフルな仕事」と呼ばれる航空管制官に転職。
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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