ホットクックはかぼちゃの馬車かもしれない《週刊READING LIFE Vol.66 買ってよかった! 2020年おすすめツール》
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
「いや~、朝から食べすぎちゃったんですよね」
昨年の春、講演の仕事先で、主催者の人と昼食をとっているときのことだった。
その方は、ある協会で役職についていて、毎日かなりハードに仕事をこなしているようだった。
子どもも独立したそうで、夫婦二人の生活。
それでも、家事はそれなりにあるわけで、どれか一つでもラクになればいいと思い、その製品を購入したという。
どうやら、予想以上に優秀だったようで、彼女は絶賛していた。
その日は、たしか、カボチャのポタージュスープを作ったそうだが、あまりにも美味しくできたので、食べすぎたというのだ。
その話を聞いた時に私は、「あ~、そうなんだ」という程度の感想だった。
けれども、その後、SNSでつながっている人たちがあげている投稿で、その製品を褒めていたのだ。
そのころからだろうか、私自身も気になり始めたのは。
昨年は、おかげさまで仕事をたくさんいただいた年だった。
関東地方への日帰り出張もかなりあって、週に6連勤などというときもかなりの頻度であった。
すると、洗濯や掃除はサッとできるのだが、どうもご飯の支度は手抜きになっていった。
外食をしたり、出来合いのものを買って来たりする日が続いた。
「仕事が忙しいから、仕方ないよね」
最初は、そんな言い訳がたつ。
出来ない自分をそうやって慰めて、出来ないことを正当化できるのだ。
ところが、そんなことが続くと、やはり母としては申し訳ない気持ちがわいてくるのだ。
しかも、栄養のバランスを考えても、やはり家で作った方がいいに決まっている。
自分はともかく、家族を思うと、「これではいけないのではないだろうか?」
だんだん、そんな罪悪感もわいてきたのだった。
例え、仕事が忙しくても、きちんと食事の支度をしている人だっているはずだ。
そんな日々が続いたとき、ふと、あのホットクックがまた気になり始めたのだ。
すると、ある日のこと。
朝、たまたまつけたテレビの番組で、なんと、あのホットクックの特集をしているではないか。
私は、食い入るようにその番組に見入った。
その調理の仕方は、噂通り、「切って鍋に入れて、セットしたらおしまい」
なんと、素晴らしいではないか!
しかも、朝、出掛ける前にセットしておくと、夕方帰って来た時に出来上がっているという優れものらしい。
まるで、帰宅時間に合わせて、炊飯器で予約炊きをしておくという、あの感覚だ。
販売会社のホームページを見てみると、こんなことが書いてあった。
1.調理時間が自分時間に変わった!
2.素材の味を生かすコツがわかった!
3.ごはん時間の充実度が上がった!
4.野菜を完食することが増えた!
5.料理のレパートリーが増えた!
6.料理の腕前が上がった!(気がする)
これは、ただの調理器具がもたらしてくれる効果以外もあると感じた。
ますます、気になるし、もうすでに惹かれてしまっている。
主婦になって思ったことがある。
それは、家事についてその人その人の得意不得意があって、それを恥じているということだ。
「あの人はお料理やお菓子をいつも美味しく手作りしているな」
「あの人のお家は、いつ行ってもきれいにしているな」
「あの人は、子どもの洋服や小物を全部手作りしているな」
料理、片づけ、裁縫が出来るか出来ないか、これが主婦の評価を決める大きなカギとなっているのだ。
私自身、裁縫は最初からあきらめている。
片づけは、元々得意で、今はそれが仕事にもなっている。
問題は、料理だ。
以前は、手の込んだ料理やお菓子も作っていた。
ところが、やはり仕事をしながらだと、料理に時間を割くことが難しくなっていった。
このことは、どうやら私の自己肯定感の一部をチクチクと傷つけていたようだ。
外食ばかり。
出来合いの総菜ばかり。
さすがに、これだと飽きてもくるし、身体のことも心配だ。
そんな、いっぱい、いっぱいの気持ちになっていたんだろう、本心は。
温かいスープをたまには作ってやりたいな。
しっかり煮込んだ、シチューを食べたいな。
そんなことを想像すると、まだ作ってもいないのに、なんだかワクワクさえしてきた。
そうか、私は、ただ、料理が便利になる調理器具を購入するだけではなく、自分自身の自己
肯定感のためにも、このホットクックに期待をしているのかもしれないな。
玉ねぎ、にんじん、ジャガイモを切って。
お肉をお鍋に入れて、カレールウを割入れて。
スイッチをオンにしたときのことを想像すると、それだけで嬉しくなる。
あ~、もう、これは買い、だね。
2020年、最初の家電購入になりそうだ。
しかし、ちょっと待てよ、あの、朝の番組で紹介されていた時、こんなことも言っていたな。
思ったよりも大きいので、キッチンで場所をとります。
う~ん、そうか、そんなにも存在感があるのか。
ホームページに書いてあるサイズでは、なかなか現物の想像がつきにくいな。
あ~、それでも、もう、ほぼ85%気持ちは「買う!」になってきているぞ。
あ~、アツアツのカレーを帰宅後すぐに食べられるのかと思うと……。
やっぱり、買っちゃおうかな。
だって、もう、夕飯を作らないことで、自分を責めることを断捨離できるんだから。
もしかしたら、ホットクックは、私にとって、かぼちゃの馬車かもしれないね。
◽︎丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
2013年1月断捨離提唱者やましたひでこより第1期公認トレーナーと認定される。
整理・収納アドバイザー1級。
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