30,000円でいいですか? 《インフィニティ♾️リーディング【武士道/葉隠】体験記》
*この記事は、「ハイパフォーマンス・ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
2025/10/23公開
記事 :藤原 宏輝(ハイパフォーマンス・ライティング)
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
・はじめに
・1、「武士道と変わらぬ‘礼’の心」
・2、「静けさの中の美徳」 変わりゆく時代と、変わらぬ心の相場
・3、「虚構としての真実」 武士道と日本人の精神、架空と現実の境界に宿る。
・結びにかえて
【はじめに】
私は毎週水曜日を弊社のスタッフに「振替休日の推奨日」または「残業一切なしの日」としている。
理由は、いたって単純で個人的である。正直に言うと……、私自身の都合だ。
というのは、毎週水曜日の夜は天狼院書店の「インフィニティ♾️リーディング」に参加しているからである。
この時間は一冊の書籍を通して思考の地平を無限に広げるような、知の冒険だ。
読書を“学び”で終わらせず、三浦先生の思いもよらない観点とAIから書籍を読み解いて頂き、様々な展開を導き出す。
さらに、知識が静かに心の深層へと沈んでいく感覚を味わえる。
そんな今回のテーマは『武士道』だった。
今回参加して、私は初めて江戸期の思想書『葉隠』にも触れる機会を得た。
“武士道とは死ぬことと見つけたり”
という一節はあまりにも有名だが、その真意は「死に急ぐ、勇ましさ」ではなく「己を偽らず、生きる覚悟」にある。
現代社会においても、誠実さや礼節・矜持といった日本人の美徳の根には、静かにこの精神が息づいているように思う。
1、「武士道と変わらぬ‘礼’の心」
武士道の核心は「死」ではなく、「生き方」にある。
日本人の心の奥底には、古来より‘礼’と‘誠’を尊ぶ文化が根付いている。
それは単なる礼儀作法ではなく、相手を思いやる心そのものを“かたち”にしたものだ。
江戸時代の武士道書『葉隠』には「形を捨てて心を得んとするは、かえって心を失ふなり」と記されている。
形式を軽んじて心だけを追い求めようとする者は、かえって心そのものを失う
という戒めである。
この思想は、現代における冠婚葬祭や挨拶の作法にまで息づいている。
新渡戸稲造の『武士道』でも、‘礼’は‘徳’の根幹として位置づけられている。
彼にとって‘礼’とは、単なる行儀作法ではなく、相手を敬い、己を慎むことで人間関係を和らげる「調和の技」だった。
つまり‘礼’とは、社会を支える無言の契約であり、
‘誠’とは、その契約を支える魂である。
このふたつが、日本人の精神的支柱として生き続けてきた。
そして、それは現代の私たちの暮らしの中にも静かに息づいている。
どれほどテクノロジーが進化し、生活様式が変わろうとも、人が人を敬う心の形は変わらない。
2、「静けさの中の美徳」 変わりゆく時代と、変わらぬ心の相場
現代社会における“礼”の意味を、少し考えてみた。
結婚式の打ち合わせの出来事。
「友達の結婚式が来月あるんだけど、御祝儀は3万円でいいかなあ?」
そんな何気ないご新婦様の一言に、ご新郎様が軽く笑って答えた。
「いいんじゃない、僕もこの前の友人の結婚式のお祝いは3万円にしたよ。みんなたいてい僕たちの結婚式に来てくれる時も、きっと3万円包んでくれるでしょ」
そのやり取りに、私はふと時代の流れを思った。
いま、日本は大きな変化の渦中にある。
円安、物価高、ガソリンの高騰や、チョコレートも、お米も、化粧品までもが静かに値上がりしていく。
スーパーのレジで「え、そんなに買ったかな?」
と思う瞬間は、もう特別なことではない。
そんな中、日本初の女性総理大臣が誕生し国のかたちそのものが、大きく揺れ動いている。
それでも私たちの生活の根底には、残したいもの、変化するもの、変化させるもの色々あるなかで“変わらない何か”が確かに残っている。
‘御祝儀の相場は、友人3万円’
私がブライダル・プロデュースを始めた頃もそうだったし、20年以上経った今も変わらない。
そして、ご新郎・ご新婦様が挙式費用の最終支払いを行うのは、たいてい結婚式の10日ほど前。
「御祝儀の合計予算だけでは、全然支払いに足りないね」
その段階であらためて、思い描いていた理想(ある程度アテにした御祝儀)と昨今の物価高から現実(結婚式費用の支払い)の大きな差に、お2人は向き合うことになる。
今も昔も人の心‘礼’は変わらないはずだし、変わらないでいてほしい。
しかし、結婚式披露宴の費用は、世の中の物価高に伴い概ね上がっている。
むしろ、お衣装も装花やブーケもお写真も、以前にも増してより質を求められる時代だ。
こんなにも世界が変わっても、人と人とのつながりを支える‘御祝儀3万円’
この金額だけは、不思議なほどに変わらない。
それは、時代を超えて続く「心の尺度」なのかもしれない。
そして私は思う……。
この変わらなさこそ、日本人が守り続けてきた“美しい頑固さ”ではないかと。
3、「虚構としての真実」 武士道と日本人の精神、架空と現実の境界に宿る。
『武士道』を書いた新渡戸稲造は、明治という“国家の青春期”にあって、日本人の精神を西洋に翻訳しようとした知識人だった。
彼が描いた武士道は、歴史的には一枚岩の伝統ではない。
むしろ、それは時代の断片を縫い合わせて作られた「発明された伝統」である。
“虚構”こそが、文化を生かしてきた。
しかし、その後の日本社会において『武士道』は単なる倫理書ではなく、国家の自己イメージ、そして個人の道徳規範として定着した。
つまり、武士道とは“過去の真実”ではなく、“未来のための物語”だったのかもしれない。
日本文化は、常に「実体」と「物語」の間にある。
形式を守りながらも、それを新しい意味で再解釈する。
『葉隠』が武士の忠義を説き、新渡戸が西洋に倫理を語ったように、私たちは日常の中で無意識に「日本人であること」を再演している。
それは国旗や憲法よりも深く、日々の挨拶や包む‘礼’の中に宿る。
ゆえに、虚構は無意味ではない。
虚構こそが、文化の持続を可能にする。
そして、その虚構が美しくある限り、日本の精神は静かに呼吸を続けるのだろう。
【結びにかえて】
変わるものと、変わらぬもの。
変えていいものと、変えてはいけないもの。
その狭間にこそ、私たちの文化の核心があるように感じる。
ご祝儀3万円という小さな風習は、実は日本人の“武士道的精神”の現代的な姿では?
と思う。
まるで「誠をかたちにする」美学の証のようだ。
経済が揺れ、価値観が多様化する時代にあっても、私たちが守りたいのは、この変わらぬ“心の相場”なのかもしれない。
毎週水曜日の夜、私の行動は大きく変わった。
三浦先生の「マーケティングこそ、武士道だ」
とおっしゃった言葉が印象的で、突拍子もない角度からの切り、その切り口をAIと一緒にどんどん深掘りしていく。
‘インフィニティ♾️リーディング’は、私の週一回のスパイスであり、必須アイテムの1つとなった。
《終わり》
❒ライタープロフィール
藤原宏輝(ふじわら こうき)『READING LIFE 編集部 ライターズ俱楽部』
愛知県名古屋市在住、岐阜県出身。ブライダル・プロデュース業に25年携わり、2200組以上の花婿花嫁さんの人生のスタートに関わりました。
伝統と革新の融合をテーマに、人生儀礼の本質を探究しながら、現代社会における「けっこんのかたち」を綴る。
さらに、大好きな旅行を業務として20年。思い立ったら、世界中どこまでも行く。知らない事は、どんどん知ってみたい。
と、好奇心旺盛で即行動をする。とにかく何があっても、切り替えが早い。
ブライダル業務の経験を活かして、次の世代に何を繋げていけるのか?
をいつも追い続けています。
2024年より天狼院で学び、日々の出来事から書く事に真摯に向き合い、楽しみながら精進しております。
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