✦子ども閲覧禁止✦ぎゃーー!言わないで!親がダメージをくらう3つの返し
*この記事は、「ハイパフォーマンス・ライティング」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:和田 千尋(ハイパフォーマンス・ライティングゼミ)
私は今、通販会社のコールセンターで月に数日働いている。
毎日たくさんの電話を受ける中で、ある確信にたどりついた。
「『お客様は神様だから』と、自分を“神様”呼ばわりする人に、ロクな人はいない」
「お客様は……」、この言葉が口に出た直後、理不尽で要求の激しいクレームが続く。
そもそも「お客様は神様です」は、歌手・三波春夫氏が“聴衆への心構え”として語ったものだ。
神仏の前で祈るような真摯な気持ちで歌うべき、という意味であって、
決して“顧客が上、店員は下”ではなかったはずだ。
しかし現代ではすっかり“カスハラの合言葉”になってしまった。
もちろん、丁寧でやさしいお客様も多い。
それでも「買う側が上、売る側は下」という空気は、私たち売り手の側にも染みついている。
◆『影響力の武器』との出会い
そんな折、ロバート・チャルディーニの名著『影響力の武器』を読み、衝撃を受けた。
なぜ人は断れないのか。
なぜ予定外のものを買ってしまうのか。
なぜ群衆に流されるのか。
そこには、人を動かす6つの力——
返報性・一貫性・社会的証明・好意・権威・希少性
——が体系化されていた。
私は思わずこう考えた。
「自称“神様”として電話してくる人も、結局は売り手の“武器”に操られてたんじゃない?」
本は静かに教えてくる。
人は、自分で思う以上に外側の“物語”で動いてしまう。
その自覚がないと、いつの間にか“変えられてしまう”。
情報が多すぎる現代は、まさにその危険が日常に潜んでいる。
◆「影響力の武器」は、効きすぎる
営業やマーケティングは、人を動かす仕事だ。
問題は、
“内側が整っていない人”に外側の武器を強く当てること。
希少性で焦らせる
社会的証明で不安にさせる
返報性で「断ったら悪い」と思わせる権威で押し切る
これは簡単で、すぐ結果が出る。だからこそ危険なのだ。
「……なんで私は買っちゃったんだろう?」
後で、こう思われたとしたら……
それは買手の紡ぐ物語のスピードを飛び越えて提案された結果だ。
提案とは、選択肢を増やす仕事であって、奪うものではないはずだ。
◆本能からくる脳の“さぼり癖”
今回の読書体験は、天狼院書店の読書会「インフィニティ∞リーディング」がきっかけだ。
AIが周辺情報を整理してくれ、難しい本も一気に理解しやすくなる未来型読書会。
さらにナビゲーターの三浦崇典店主の膨大な読書経験が、内容を一気に「自分の理解」に引き寄せてくれる。
その三浦社長が語った言葉が、脳を揺さぶった。
「脳には“さぼり癖”がある」
人間の脳は、できるだけ少ないエネルギーで生き残るように進化してきた。
そのため、新しい行動を起こすことは負担が大きく、できれば避けたいのだ。
その怠け癖に入り込むように設計されているのが、「影響力の武器」だ。
三浦社長によれば、この理論で6つの武器はすべて説明できるという。
つまり——
人は本能レベルから、巧妙に“買わされる”ようになっている。
マーケティングのプロである三浦社長ですら、毎日ネットでついポチってしまうらしいのだから、一般人が抗うのはなおさら難しい。
◆営業で多用されるセリフ10選
ここにも“武器”はしっかり仕込まれている。
(1)「みんなこれを選んでますよ」
→ 社会的証明
(2)「この価格は今日までです!」
→ 希少性
(3)「今決めていただければ特別に…」
→ 返報性 × 希少性
(4)「他の人には言ってないんですが…」
→ 好意 × 希少性
(5)「今やらないと損しますよ」
→ 不安誘導
(6)「絶対後悔しません」
→ 権威 × 暗示
(7)「そこまで言って契約しない理由はないでしょう」
→ 一貫性の法則
(8)「この機会を逃すと、次はいつになるか……」
→ 希少性 × 不安
(9)「○○さんなら絶対うまくいきます」
→ 好意 × 権威
(10)「今回だけ特別です」
→ 希少性 × 返報性
◆“決めた気”になっているだけかもしれない
影響力の武器が働くと、人は思考のショートカットを起こす。
自分で選んだ気がする
今しかない気がする
みんなが買ってるなら正しい気がする
この人が言うなら間違いない気がする
しかし、この満足感は“偽物”の可能性があるというのだ。
人が本当に満足できるのは、自分の価値基準で選んだときだけだ。
だからこそ必要なのは次の5つ。
時間を置く
目的を言語化する
自分の状態を整える
比較する
感情と契約を切り離す
これだけで誘導の9割は崩壊する。
営業やマーケティング、それ自体は悪ではない。
商品が良いものなら、逆に、背中を押して欲しいとさえ思う。
しかし残念ながら、無秩序に「影響力の武器」が行使された時の返答例として、
「万能系」対応を3つ挙げておく。
万能1.「今日は決めません」
→ 即断しなくてはというプレッシャーを完全に破壊する。
万能2.「比較してから判断します」
→ 社会的証明・希少性・不安誘導を一発で無力化する。
万能3.「感情と判断を分けたいので、時間をください」
→ 好意誘導・返報性・一貫性を止める最強ワード。
買手としても、いったん立ちどまり、“自分のこれからの物語にとって意味があるかどうか”で判断しなければならないと、学んだ。
◆そして私は、気づいてしまった
「影響力の武器」について、行使“される”側として自分を見ていたが、
とんでもないことに、実はバリバリ行使“する”側でもあったことに気がついた。
それも計画的に、スマートに忍び込ませるといったかたちではない。
一方的に、直接的に、時には力のままに「武器」をぶつけていた。
そう、子育ての現場には「影響力の武器」が全方位で飛び交っている。
親は「良かれと思って」いるので、この乱用に気づいていないことが多い。
思い当たることがありすぎて冷や汗がでた。
◆子育てに潜む6つの武器
1|返報性(「これだけしてあげたんだから」)
・「あなたのためにやってるのよ」
・「誰が食わせてやってると思ってるの?」
・「ここまで頑張ったんだから感謝しなさい」
子どもの反応:
・表面上は従う
・内心はムッとする
・「どうせ親は見返りがほしい」と学習 → 信頼が減る
返報性は、本来自発的に返したくなるときに働くもの。
親は無意識に強制してしまうのが問題。
2|社会的証明(「みんなできてるよ」)
・「みんなできてるよ?」
・「あなたくらいよ、やってないの」
「・普通の子はもっと頑張ってる」
子どもの反応:
・自己肯定感が削られる
・思考停止になる
・親を“理解者”ではなく“査定者”として見るようになる
3|希少性(「今日だけ」「いまだけ」)
・「今日ちゃんとやらないと後で困るよ!」
・「このチャンス逃したらもうないよ」
→ 慢性的なプレッシャーで“不安型の性格”に。
4|権威
・「お母(父)さんの言うことを聞きなさい」
・「大人の方がわかってるの」
→ 自分で考える力が育ちにくい。
5|好意(“優しくすれば言うことを聞くと思ってる”)
・「あなたのためを思って言ってるのよ」
・「お母(父)さん悲しい」
→ 子どもは罪悪感で動き、顔色を読むクセがつく。
6|一貫性
・「昨日も言ったでしょ」
・「前はできたよね?」
→ 成長過程の子どもには過剰負担。
結果として、子どもには——
・自分で考えられない
・親に本音を言わなくなる
・他人と常に比較する
・「親のために」頑張り続けて疲れる
・顔色を読んで動くクセがつく
という未来が待ち受ける可能性がある。
もちろん、子どもの幸せを願うからこそ、
武器を使わざるを得ない瞬間もあるだろう。
しかし今回、親自身が「影響力の武器」の効果を学び、
“自分が武器を使っている”と自覚することが大切だと思い知らされた。
◆そして最大の恐怖——
まずは想像してみてほしい。
あなたが感情的に「武器」を使った瞬間、
子どもが冷静に「万能系返答」で返してきたら。
・「今日は決めません」
・「比較してから判断します」
・「感情と判断を分けたいので、時間をください」
……親の権威、プライド、矜持、すべて粉砕。
顔は引きつり、二の句が継げない。
私なら絶対に固まる。
◆だからこそ、いま知識を学ぶ
これからの世の中を健全に生きるには、親も子どもも「影響力の武器」を理解しておいた方がいい。
でも——
子どもが“押し売り耐性MAXの交渉マスター”になる前に……
価値のない影響力を振りかざしてきたダメ母ちゃんは、
先にこっそり学びながら、密かに発言の軌道修正を誓うのであった。
……子育てにおいて、自分の言葉を本当の武器へと磨いていくために……
子どもの“物語”に寄り添った言葉へ……と。
《おわり》
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