子供の写真をプロフィールにする母親が、少し苦手だった
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:RICA(25年・年末集中コース)
「あ、一緒に撮った写真を送りますのでSNSを交換しましょう。
どれにします?LINE?インスタ?」
こんなやりとりを、これまでに何回しただろうか。
LINE、Facebook、Instagram、X……。
今や、ほとんどの人が少なくとも一つはSNSのアカウントを持っている。
出会ったばかりの人と、あるいは会ったこともない人とでも、アカウント情報を交換し、相互フォローをすれば、いとも簡単につながれてしまう時代だ。
そんな時、いつも気になってしまうことがある。
「この人のSNSのプロフィール写真は、どんなだろう?」
一千人以上の人とSNSを交換してきて思うのは、プロフィール写真を見ると、その人の
性格や人間性、大切にしているものが、ある程度わかる気がするということだ。
自分のアップの写真。
遠くから写っている写真。
後ろ姿。
ペット。
友達と撮った写真。
結婚式の写真。
そして、子供と一緒に写っている写真。
大きな声では言えないのだが、少し前まで、私は「子供と一緒の写真をSNSのプロフィールに設定している人」が苦手だった。
なぜだかわからないが、それを見ると、ぞわっとしてしまっていた。
口では「わぁ、かわいいお子さんですね」と言いながら、心がついてこない。
幸せそうなその人が羨ましかったのかもしれない。
あるいは、自分のプロフィールの場なのに子供と一緒の写真を使うことで、その人が自分の人生を子供に捧げてしまったように見えたのかもしれない。
もしくは、その両方だったのかもしれない。
なぜモヤモヤするのか、ずっとよくわからなかった。
そんな自分が好きかと言われれば微妙だったが、それが正直な気持ちだった。
でも今ならわかる。
それは「推し活」だったのだ。
今年に入って、私は初めて子供を産んだ。
そしてようやく、「なぜ母たちは子供と一緒の写真をプロフィールにするのか」、その答えが少しずつ見えてきた。
それはきっと、親になった人に限らず、
人生で何かを本気で守りたい、あるいは応援したいと思ったことがある人なら、
誰にでも起こりうる感覚なのだと思う。
妊娠中は、もちろん子供が元気に生まれてくるかが一番心配だった。
けれど、その次くらいに、自分の体型が変わっていくことをかなり気にしていた。
飲酒は禁止。激しい運動もNG。食事制限あり。
生活スタイルの変化に、正直かなりイライラしていた。
ところが一転、子供が生まれてみると、自分の子供は世界一かわいい。
産後、身体がボロボロの状態で始まる育児はかなり辛かったが、それでも子供のかわいさは、日々更新されていった。
寝返りをするようになった。
ハイハイをするようになった。
「いないいないばあ」で笑ってくれるようになった。
私がいないと探すようになった。
私が離れると泣くようになった。
なんと愛しい存在だろう。
愛しい、という言葉では足りないほどに。
「私は自由人で、典型的な母親タイプじゃないけれど、母親をやれるだろうか」と不安に思っていた出産前の自分に、今ならこう言ってあげたい。
「大丈夫。あなたはやれるよ。
子供は、人生でいちばん強烈な推しになるから。」
子育て中の毎日は、とても忙しい。
朝は、子供の泣き声で目を覚ます。
自分の身支度より先にオムツを替え、朝ごはんをあげ、気づけば服には離乳食の染み。
やっと寝たと思ってソファに座った瞬間、洗濯機の終了音が鳴る。
洗濯物を干そうとして、途中で泣き声に呼び戻される。
時計を見ると、まだ午前中のはずなのに、なぜかもうぐったりしている。
気づけば昼になり、何を食べたかも思い出せないまま夕方になる。
毎日が、そんな繰り返しだ。
毎日バタバタしているので、子供と一緒に写っている写真を撮る機会は、私の場合あまり多くない。というか正直なところ、ほとんどない。
それでも、たまにうまく撮れた、あるいは誰かに撮ってもらった写真があると、さながら「推しと撮った写真」のような感覚になる。
なかなか会えない推しと、いい感じのツーショットが撮れたら——
それがアイドルでも、バンドでも、スポーツ選手でも、あるいは家族でも、
そりゃ、プロフィール写真にもしたくなる。
「みて、私の推し、こんなに素敵なのよ」と、つい誰かに伝えたくなる。
うん、推し活に置き換えてみると、めちゃくちゃ納得だ。
以前の私は、子供の写真をプロフィールにする母親たちを見て、
「自分の人生の主語が、いつの間にか変わってしまった人」だと思っていた。
でも、今ならわかる。
それは、人生で一番愛しくて、大好きな存在と一緒にいる自分を、
できるだけ目に入る場所に置いておきたかっただけなのだ。
子育ては、推し活に似ている。
人生で一番大切な推しができた時、人はみんな、少しだけそうなるのかもしれない。≪終わり≫
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