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結婚は、縁という地層の積み重ねで出来ている


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事: ムー子 (ライティング・ゼミ25年11月開講コース)

 

 

私は3年前に結婚相談所に登録していた。

 

そこで夫と知り合って結婚したが、相談所で出会った別の男性の行動や言動がいまだに気になることがある。

 

あの時のあの人、なぜあんな行動を?

どうしてあの時ああ言ったんですか?

 

今となっては名前すら覚えていない人達だが、たまに聞きたくなる。あたりまえだが、すでに聞ける状態ではない。

いまだにいくつかの謎が残されたままである。

 

 

当時私の家がどこにあるか、しつこく聞いてくる人がいた。

打ち解けあったときではない。会って1回目の「初めまして」の時だ。

まさか「何区ですか、何町ですか」とまで聞かれるとは思っていなかった。

 

相談所独自のサイトでは、相手の住んでいる都道府県・市は登録されておりそこまでは会員なら誰でも確認できる。

 

市単位だと規模が大きいので家を特定されることはないだろうし、問題ないとは思う。

ただ、区が知られてしまうと、利用している駅や生活圏内にある施設は限定されてしまう。

私は答えをはぐらかしたが、それでも聞いてきた。

 

最終的に「最寄り駅はどこですか」「いつもどこで買い物していますか」と聞いてきたので、困り果ててしまった。

 

 

結婚相談所にはいくつかのルールが設けられている。

 

健全な付き合いのもと、結婚というゴールに向かうために必要なことだからだ。

その中で「実際に相手に会う時は、最初からプライバシーの詮索をしない」ことも書かれていた。

そのようなことは仲良くなってから順番に聞いていくもの、というわけだ。

 

 

また、ルール関係なく、実際初対面でこのように聞かれると男女ともに圧迫感を感じるだろう。

いくらお互い身分が保証され、犯罪者ではなかったとしても、聞かれたほうが警戒するのは当たり前である。

よって、どちらにせよ初対面で行き過ぎた質問は御法度である。

 

 

その男性には申し訳ないのだが、私は恐怖と気味悪さを感じてしまった。

お会計が終わったあとは一気に男性の機嫌は悪くなり、そっけない態度であった。

 

色々考えた結果断ろうと考え、お断りの旨を知らせるボタンを押そうとしたとき、既に向こうからお断りのお知らせが届いていた。

 

 

後日結婚相談所での面談時に、私が断られた理由を聞いてみた。

理由は察しがついているが、客観的に私が直さなければならない部分があるならば、そこは聞いておかなければならないと思ったからだ。

 

相手が私を断った理由は「(私が)心を開いていないことが明白だった」ということだった。

 

 

「ちなみに何かございましたか、心を開かなかった理由が」

 

相談所の仲人的存在のコーディネーターのAさんは私と同じ女性だ。

分かってくれるだろう、と当日どんなことがあったか話をしてみた。

 

「あ、それダメですね。初対面で区や利用している駅等そこまで聞くのは……」

 

やはり、相談所内のルールでもNGのようだった。

あからさまに嫌な顔をしてしまったことは悪いと思っていると言うと、Aさんはその理由ならばしょうがないと言ってくださった。

 

 

「ただ……なんでそこまで住んでいるところを聞きたかったんでしょうか」

 

数々の会員のケースを見てきたAさんも私と同じことを思ったらしく、そう私に投げかけた。

 

2人で「うーん」と考えたのだが、答えは勿論出ない。

「ま、次行きましょ、次」

 

Aさんは気持ちを切り替えるように私に促した。

 

 

考えてもしょうがない謎を私たちは放置することにした。

そして、おっとりした性格ながら芯がしっかりしているAさんに引き続き伴走してもらい、私は婚活を続け、夫と出会ったのだ。

 

 

あの時置き去りにされた謎。

これは男性である夫に聞いたら解決するのだろうか。

3年経った今、興味本位で聞いてみると夫がすぐに答えてくれた。

 

 

「それ、ムーちゃんと今後会うってなった時に、遊びに行く場所や落ち合う場所をシミュレーションしたかったんちゃう?」

 

 

夫の話によると、こうだ。

まず、待ち合わせする駅が互いの住居から離れすぎたり、アクセスが悪かったりすると、会う回数が少なくなってしまう。それだとお互いを知る機会がなくなってしまう。

 

また、仲が深まって定期的に会うとなると、住んでいるところに直接迎えにいくこともあるかもしれないから参考にしたい。

つまり、今後定期的に会えるかどうか、それならば場所はどこなのかを最初の時点で見定めておこうと思ったのではないか、という見解だった。

 

 

「この女性と会いたい!」と思う理由の中で、住んでいる場所がそこまで重要視されるとは私は思っていなかったので、意外だった。

 

むしろ相手の立場からしたら、私が過度に怖がったりしていた様子のほうが不可解だったのかもしれない。

 

 

その時、ふと思い出した。

 

これも夫と出会う前の、相談所内で出会った別の男性とのことだ。

 

 

その男性と初めて会った日、彼は焼き鳥を食べることが好きだと言った。

私も食べるのが好き、焼き鳥も好き、という共通点があったので「へえ、どこの焼き鳥が美味しいとかあるんですか」と聞いてみた。

 

すると「まだ仲良くないので具体的な場所はお答えできません」とぴしゃりと言われてしまった。私の質問で相手は警戒してしまったのだ。

 

もしその焼鳥屋が彼の家の近くにあったとしたら、初対面の相手に教えたくないであろう。結局その人とはそれっきりだった。

 

 

私の質問の内容に理由があるかと聞かれれば、別に大きな理由はない。

あったのは「おいしいとこあるの? それ、どこ?」という私の単なる食いしん坊な好奇心だ。それ以上でも以下でもない。

 

 

もしかしたら、住む場所を聞いてきた男性も夫のように考えていたかもしれないし、焼き鳥の時に質問をした私のように、大した理由はなかったのかもしれない。

 

 

結局のところ、謎は謎のままになりそうだ。

 

 

「でもさ」

夫は自分の見解を述べた後、続けた。

「そういったすれ違いがあったから、僕たち出会えたんだよね」

 

 

そうだ。

 

 

もし、これまで出会った人と本当に縁を繋ぎたいと思っていたのなら、話している間に生じた謎を放置することなく、納得いくまで解明し、その人を理解しようとしたはずだ。

それを私はしなかった。

結局彼らとは縁がなかったのだ。

 

 

縁は結ばれる当人同士だけに発生するものではない。

出会いは次から次へと発生し、数々のすれ違いが生じ、一度でも出会った縁は経験として層のように積み重なっていく。

 

 

その途中で、すれ違いを超えて、一緒にいたいと思う相手を見つけた。

私自身そう思った相手が夫だった。

 

 

そして、今までのすれ違いで学んだことや縁を糧に、謎を謎で終わらせないために、私たちはお互いが努力した。その結果、結婚して一緒に二人でいるのだ。

 

 

そう考えると、私たちの出会いは縁の地層の上で成り立っているのかもしれない。

当時の出会った人たちとの間に生まれた疑問や謎は謎のまま、化石として埋もれていくのだろう。

 

その地層の上で、夫と一緒に、大好きなコーヒーを飲むのだ。

今日も、その先もずっと。

 

 

 

 

 

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