追い込まれないとできない私は、ダメなのか
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:RICA(25年・年末集中コース)
「どうしよう。頭が真っ白」
子供の夕飯、お風呂、寝かしつけ、それから自分の入浴、と怒涛の流れをこなし、今日もエッセーの時間がやってまいりました。
いつものことだが、またしても提出の時間が迫っている。
毎日思うけれど、どうしてもっと早めに書き出せないんだろう。
でも、朝は眠くて一秒でも布団にいたいし、日中は子供のことで頭がいっぱいだし、結局この時間にやるしかないのである。
そもそも、なんで私はこんなに追い詰められているのか。
それは、天狼院書店のライティング・ゼミ、年末集中コースを受講したからである。
年末の四日間でライティングのエッセンスが学べるというので思い切って受講したが、エッセーの提出期限がとにかくエグい。
年末はほぼ毎日提出が三日間、年始は六日間。なんとまあインテンシブなクラスである。友達にも本気で驚かれた。
思えば、夏休みの宿題から大学時代に提出してきた課題、プレゼンの準備に至るまで、私はすべて追い込まれないとやれない人間だった。
私が本気を出せるのは、追い詰められたときか、その対象がものすごく楽しいときか、あるいは誰かのために頑張っているときか。この三択である。
昔からコツコツ計画的に進められる人を、本気で尊敬している。
しかし私はそうなれた試しがない。もはや諦めの境地だ。
それでも無事に大学を卒業し、社会人としてやってこれたのだから、「追い込まれ型」は必ずしも悪ではないのではないか、と最近は思う。
集中力のスイッチが一度入ってしまえば、むしろ生産性は高い。
それを裏付けるように、思い返せば、これまでの大きな節目もすべて「追い込んだ結果」だった。
希望していた留学先へ行けたのも、期限と条件を突きつけられてから本気で準備を始めたからだ。就職活動も、転職も、余裕をもって動いていた記憶はほとんどない。
「もう後がない」という状況になってから、ようやく覚悟が決まり、行動が一気に加速した。
最近でいえば、趣味の範疇を超えて続けているDJもそうだ。
人前に立つ以上、中途半端なことはできない。
ブッキング、練習、選曲、体力づくり。
本番という締め切りがあるからこそ、逃げずに向き合ってきた。
もし「いつかやれたらいいな」くらいの温度感だったら、きっとここまで続いていない。
振り返ると、私は「追い込まれないとできない人間」なのではなく、
自分で締め切りを設定し、あえて追い込むことで前に進んできた人間だったのかもしれない。それは怠けでも欠陥でもなく、私なりの起動条件なのだと思う。
そして、追い込まれたこの時間にしか、書けない文章もある。
家の中が静まり返り、スマホの通知も鳴らない。
今日一日の役割をすべて終えたあと、母でもなく、妻でもなく、仕事の肩書きもいったん外れた、名前だけの自分になる時間。
頭が真っ白だと嘆きながら、実は私はこの瞬間をどこかで待っているのかもしれない。
日中の私は、常に誰かのために動いている。
子供の体調や機嫌、成長。
夕飯の段取り、洗濯のタイミング、明日の予定。
気づけば思考は細切れになり、深く考える余白はどこにもない。
だからこそ、すべてが終わったこの深夜、ようやく思考が一本の線になる。
追い込まれないとできない自分を、これまで何度も責めてきた。
計画性がない、自己管理ができていない、大人としてどうなんだ、と。
SNSを開けば、朝活で勉強をし、余裕をもって提出物を仕上げている人たちが眩しく見える。
私は今締切ギリギリで、ヒーヒー言いながらキーボードを叩いている。
でも最近、少しだけ考えが変わってきた。
追い込まれないとできないのではなく、
追い込まれたときにしか開かない扉があるのではないか。
時間がないから、余計な装飾を削ぎ落とす。
うまく書こうとする余裕がないから、本音がそのまま出てくる。
誰かにどう思われるかを考える前に、書かないと間に合わないから正直になる。
その結果生まれる文章には、嘘がない。
もちろん、余裕をもってコツコツ進められたら、それに越したことはない。
けれど、今の生活でそれを完璧にやろうとすると、きっと私は何もできなくなってしまう。
だから今日もこうして、夜更けに「どうしよう」と言いながら、文章を書いている。
締切に追われ、頭が真っ白になりながら、それでもキーボードを叩くこの時間。
ここでしか出てこない言葉が、確かにある。
少なくとも今はそう信じて、また今日も提出ボタンを押すのだ。
≪終わり≫
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