「エアバッグがオメデトーと開いた」と話す友人からポジティブを学ぶ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事: maruha (ライティング・ゼミ25年11月開講コース)
「いや〜この前、2台目の営業車でまた事故っちゃってさ〜。ぶつかったらエアバッグがオメデトー! オメデトー! って、2つ開いたわ」
そう言って笑いながら話すのは、友人のカズミちゃんである。ちなみに1台目の営業車は、もっと前に廃車になっている。
「えっ、大丈夫だったの? ケガとか、周りの人とか」
「私は無キズ! 単独事故だし大丈夫だよ〜。会社でめちゃくちゃ怒られたけど、なんとかなった!」
大変な話のはずなのに、彼女の語り口には、文末に「www」がついているような軽さがあった。
カズミちゃんと出会ったのは、私が30歳で離婚し、オープンカレッジの心理学講座に通っていた時だった。たまたま私の席の後ろに座り、「友達になろうよ〜」と気軽に話しかけてきた。
「“山ちゃん”でいい?」
私が山田だからという理由だけで、二言目にはニックネームで呼ばれていた。講座のたびに隣の席に座るようになり、3回目が終わる頃には、講座終わりに一緒にランチへ行く関係になっていた。
私は離婚後、実家に出戻り、WEBデザインのスクールに通いながら、再スタートを切ろうとしていた。子どもはいなかったので身軽ではあったが、結婚生活で溜め込んだ疲れを抱えながら「第2の人生をどうしていくか?」を模索している最中。「とにかく何かを学びたい」という思いだけが前にあった。
元々ぼっち体質の私に、なぜか迷いなく距離を詰めてくるカズミちゃんの存在は、正直とても嬉しかった。そんな彼女との出会いが、私の生き方を変えるきっかけになるとは思っていなかった。
講座が回を重ねるにつれ、彼女は他の受講生にも、ある意味空気を読まないノリで次々と声をかけ、クラスはどんどん仲良くなっていった。
講座の最終回が近づいた頃、ちょうどクリスマスシーズンだったこともあり、彼女は講師や大学に掛け合い、クラスでの「クリスマス&お別れ会」を企画した。会費を集め、お菓子や飲み物を用意し、短い期間で生まれた縁を、みんなで楽しく噛み締めて解散した。講師が「こんなクラスは初めて。本当に特別だった」と締めくくった言葉に、全員がうなずいていた。
カズミちゃんがいなければ、毎回みんなバラバラに帰るだけの講座だっただろう。たくさんの人を繋げ、喜びを生み出した彼女に私はすっかり憧れていた。到底真似できない、人懐っこさと行動力。こんなふうに軽く動けたら、他人と仲良くなれたら、人生はどれほど楽しいだろうと思った。
「私、発達障害なんだよね〜。ADHDらしい」
そうカズミちゃんに言われた時、私はまだそれについてほとんど知識がなかった。
講座が終了してからも、頻繁に電話がかかってきた。彼女は、小さな人材サービス会社でいつも忙しそうに働いていて、「来週、短期の仕事に出れない?」と、人手が足りない短期バイトに誘われることもあった。就職活動中と言っても時間があったので、いくつか仕事を受けた。週末も、家にいると電話が鳴って「ヒマ? 今から〇〇行こう」と車で連れまわされることもあった。思い付いたことはすぐ行動する。そんな彼女に合わせていると、人生の密度がギュッと濃くなる感じがした。
ただ、その「軽さ」が裏目に出ることもあった。不注意による事故やトラブルは、普通に考えたら多すぎるレベルだった。私も振り回されることを楽しめているうちはいい。しかし、ジェットコースターに乗り続けるのは、だんだん疲れてくるとも感じていた。
振り返ると、カズミちゃんと友人関係にあった期間は一年にも満たない。
関係が終わった理由はシンプルで、彼女が突然仕事を辞め、結婚し、郊外へ引っ越してしまったからだ。結婚相手は、スーパーで団子やたい焼きを売っている、かなり年上の人だった。かなりの年の差婚で、パパっと決めてしまったため「大丈夫?」と周りの誰もが思っていた。しかし結局、何とかなるのが彼女で、その後「子どもが生まれて幸せでーす!」という知らせが届いて安心した。
(その後「オメデトーエアバッグ」はもう二度と開いてないといいなと願うばかりだが……)
カズミちゃんと過ごした時間は、私にとって一種のトレーニングだったと思う。
失敗してはいけない、
恥をかいてはいけない、
人に迷惑をかけてはいけない、
それなら初めから行動しない方がいい。
そうやって回避し続けてきた生き方を、そろそろ終わらせたかった私の前に現れた、対極のお手本のように感じた。
私は、彼女と会わなくなってからも「あの軽さ」を参考にしながら、これまでなら避けていた行動をしてみるようになった。「心にカズミちゃん」を置いて行動すると、見える世界が少しずつ変わっていった。WEBスクールを終え、就職活動を経てWEB制作会社に入ってからも、できるだけ人に話しかけ、ノリで何でも軽くやってみる、という姿勢で動いてみた。
その結果、「30代・バツイチ・WEB未経験」という肩書きを抱えた私にも職場で仲間ができ、徹夜で語り合ったり、一緒に旅行へ行くほどの関係が生まれていた。それは私にとって、遅れてやってきた青春のような時間だった。
カズミちゃんには、確かにADHDの人特有の問題行動と呼ばれる一面もあった。けれど、その奥にある「純粋な軽さ」は、失敗や恥を恐れてすぎていた私の人生の向きを、大きく変える気づきになった。
もちろん、何にでも激突してしまう人には「もう少し慎重に」と言いたくなる。けれど、回避傾向が強く、動けなくなっている人にとっては、彼女の軽さは大いに参考になるものだった。
「考えすぎず思い切って動くことで、大きな喜びを生むこともあるし、たとえ失敗しても大丈夫だぞ。なんとかなる!」
そんなポジティブなメッセージを受け取った気がしている。あの一年で彼女から学んだ「ほんの少しでも軽く、動いてみる勇気」は、今も私の原動力になっている。
<終わり>
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