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3520円で、やる気スイッチが入ったハナシ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

2026/1/30 公開

記事:まるこめ(ライティング・ゼミ25年11月開講コース)

 

 

 

 

うーん、3520円。

 

 

買ってもらったとはいえ、ほんと良かったんだろうか……

毎日、当たり前に使っているものになら「まじ感謝」って心の底から喜べる。だけど、これまで使ってこなかったものに3520円。嬉しい反面、ちょっとだけ申し訳ない気もする。本当に、ちょっとだけ。とはいえ、珍しく「一目惚れ」したそれが目の前にあるのはとても気分が良い。

 

濃い、デニム生地に無数のポケットがついたワークエプロン。

昨日、家族とハワイをコンセプトにしたカフェで、たまたま出会ったエプロン。

おしゃれなカフェの店員さんが、これまたおしゃれに着こなすデニムのエプロン。

 

「いるなら、買ったらいいやないか」

 

と、父があっさり買ってくれた3520円のエプロンが今、私の手の上に、ある。

衣・食・住の3つのステータスがあるとしたら、全くと言って良いほど「衣」に関心がない。服なんて、とりあえず着られればいい。産後を経て、私のクローゼットの中は、母のお下がりと、旦那さんのお下がり、そして自分で買った数着の服しかない。それで、十分。家から出る予定さえなければ、1日中部屋着で過ごすような私にとって、3520円のエプロンはハイブランドとまでは言わないけれど、まぁまぁ高い買い物だ。別に袖を通したからって、オシャレに変身もしなければ、10歳若返るわけではない。

 

(買ってもらっただけに、なんだか少し申し訳ない気もする……)

 

家から出ない日は、ボサボサの髪と起きたままの格好で1日を過ごすことが常だ。今もバブリーを彷彿させるようにかき上げられた寝癖だらけの髪で、まっさらなデニム記事のオシャレなエプロンを手にしている。せっかく買ってもらったんだから、とりあえず着てみよう。ババシャツ代わりの黒いヒートテックの上から、恐る恐る、エプロンに袖を通してみた。

 

「おお、おお……」

 

なんだこれは、と思った。

砂漠に咲く1輪の花のように、オシャレなデニムのエプロンは、鏡に映る私の姿の中で一際目立っていた。と、同時に、ロールプレイングゲームで強い装備を身につけた時のような感覚が、体中をはしったような気がした。なんだろう……少しだけ、ほんの少しだけど、力が湧いてくるような感じがする。

 

「と、とりあえず髪の毛でも結ぼうかな」

 

「さすがにババシャツの上じゃ、申し訳なさすぎるな」

 

そんなことをぼやいているうちに、あれよあれよと、私の姿は「それなり」になっていた。

けれども、3520円のエプロンがもたらしたのはそれだけではなかった。

 

「まぁ、せっかくエプロン着たしなぁ……チビが寝てるうちに、家のこと、しようかな」

 

家事が苦手で、日頃、どうやって重い腰を上げるか苦戦するこの私が……!

嫌々ではなく「とりあえず家事やろう」とまで思うようになってしまったのだ。洗濯物を洗いながらキッチンを片付け、掃除機をかけ始める。どうかしてる、ほんとどうかしてる!

オシャレなエプロンをつけただけで、なんだか「家事できそうな人」になれた気がしちゃうなんて……見掛け倒しで終わりたくないもんなぁ。

 

「なんで、会社ではするのに家じゃできないんだろうなぁ」

 

ずっと、気になっていた。職場のデスクは洗練されていて、暇さえあれば掃除する人間が、どうして我が家になるとできないんだろうって。それは、きっと「スーツ」が私の「仕事のやる気スイッチ」だったからだろう。「仕事着」を纏うことで、やる気がオンになるから、きっとうまく片付けも、掃除ができたんだろう。家で、それが思うようにできていなかったのは、きっと「やる気スイッチ」をオンにする「仕事着」になるものがなかったからだ。そして、長年頭を悩ませていた「家事のやる気スイッチ」は、なんと! 3520円で手にすることができたのであった。こんなことなら、もっと早く出会いたかったよ……デニムのエプロン。

 

気づけば、いつもよりも圧倒的に早いペースで家事を終え、コーヒーを淹れようとしている自分がいた。やはり、オシャレなカフェで見つけただけあった。コーヒーを淹れる姿が、いつもより少しかっこよくなったせいなのか、同じコーヒーなのに、少しだけ美味しく感じられた。

「やる気スイッチ」って、自分の心の中にあるもんだと、ずっと思い込んでいた。どんな状況下においても、自分の心の強さが「スイッチ」になると信じて疑っていなかった。

けれども、それはとんだ間違いだった。別に強くなくたっていいし、自分ひとりの力でスイッチを押す必要はなかったのだ。弱い私を強くする「やる気スイッチ」は「服」だった。

スーツも、エプロンも、身につけることで「理想のできる像」を私に見せてくれる。そして、私はその理想に近づきたいから、頑張れる。別に家事なんて、エプロンがなくてもできる。けれども、エプロンを着ることで「家事が楽しくなる」のであれば、もう十分な役目を果たしているといえるだろう。きっと、人は着替えるから頑張れるのかもしれない。

 

3520円、私にとって「エプロン」を買う値段としては、少々お高くは感じる。

けれども、それが「やる気スイッチ」だったとしたら……

 

 

すげーお手頃じゃん!

 

《終わり》

 

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