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伝える力を上げたければ、声に気遣いを込めてみよう

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:後藤 修 (ライティングゼミ、26年1月通信講座 コース)

 

なんでこんな誇張するよう話すのだろう?

僕はいつも眉を潜めていた。

果たして、この人は見る人、聴く人の心を推察しているのだろうかと常に疑問が湧いていた。

 

 

この1カ月、日本全国で選挙の報道があふれかえった。

 

テレビをつければ、政党代表者が画面越しで政策をアピールしたり。

スマホを覗けば、各政党のアップ動画が洪水のように流れていて、

各候補者は空に轟くように大声を張り上げたり。

 

見る人、聴く人を立ち止まらせようと、どの立候補者も

劇場舞台に立つ有名俳優のように、支援を集めることに躍起になっている光景が目についた。

 

無論、その景色は選挙期間にはよく見られるものだろう。だが、そんなせわしさから、僕の目や耳と心には、‘違和感’がへばりついた。

 

それは、立候補者が発している言葉だ。

 

当然ながら各政党、各候補者によって主張が異なるから、内容については多種多様である。

だから、そこに疑問が湧くことはないし、異論はない。

 

でも、候補者の中でも、ピッチングマシーンのように聴衆に言葉を放り投げる人が何人か見受けられた。

 

「今、日本はこうあって、だからこうあらねばいけないでんすよ―――!」

 

確かに、人の目や足を止めさせるために、大声を張り上げることは大事だろう。

 

でも、言葉を超高速ボールのように投げて、見る人、聴く人に‘届けるもの’になりうるのだろうか。

 

昨年の夏、私は同じような心持ちにさせられる場面に遭遇した。

 

それは整体院で治療を受け、自宅へ帰る途中だった。

ある信号の交差点と隣り合う地点で、一時停止の標識があったので、いったん止まった。

 

それから、私はアクセルペダルを踏んで、車を発進させた時だった。

 

 横の方から、警察官が牢屋の番人のように横から現れて、私を路傍の方へ誘導した。

 

「一時停止を怠っていました! 罰則金をお願いしますっ」

すました表情で複写の用紙を私に渡してきたのである。

 

「そんなことないですよ! 止まりましたよ」

納得いかない私は声を強めて主張した。

 

しかし、警察官はこちらを見ずに倍速ボタンを押すかの如く口を早く動かした。

 

「反則金は金融機関で、この期限まで。お支払いください……」

こちらへ顔を向けずに、視線を落としながら、顔色一つ変えずに言葉を発していた。

そこには‘内容を伝えよう’とする謙虚な様子よりも‘事をすませて立ち去ろうとする’高慢な様子しか伝わらなかった。

 

(なんで、こちらを面を向けず話すんだ?)

 

腹が少し煮え立ち始めた丁度その時に

傍に止まっていたパトカーから一人の警官が私の前に現れた。

 

「申し訳ありません。あなた様の停止する様子を見ていましたら、停止する時間が幾分短めでした。だから、反則金のお支払いをお願いします」

 

彼の説明は丁寧で、ゆっくりした口調で私に声を掛けてくれたのだ。

 

私の頭から湯気が多少出ていたものの、晴れ晴れした心持ちへむかっていったのだ。

 

ここで私は強く思った。

 

これが本当の‘言葉の届け方’なのではないだろうかと。

 

 

かつて、話し方や伝え方を上手になるために受講した講座で

講師がこんなことを口にしていた。

 

「誰かに何かを話す時はどんな時も、どんな場所でも、言葉を届けようとする意識はかならず持って接しましょう」

 

つまり、話すということは言葉を贈る。言葉をプレゼントするようなものだと語っていたのだ。

 

また、参加していた受講生の人が経験談を口にしていた。

 

「知人のコンサートを観に行った時のことです、司会者が私たちに知人を紹介する機会があったのですが、その方の話し方は言葉が優しく私の心に響きました。反対に、楽器を演奏していた知人の知り合いが知人を紹介する機会もあったのですが、その方の話しは私の心にあまり響いてきませんでした。それは、私たちに声を届けようとする意識が司会者よりも薄かったからですね?」

 

「その通りですね」

 

講師の方は静かににこやかに返答をした。

 

やはり、「声を届けよう」の意識は発する声色を変えるのである。

 

さっそく、私はこの知恵を活用した。

 

当時、銀行員として働いていた私。顧客からの電話に追われて、時々

叫ぶように、苦情を申し出てくる顧客が多かった。

 

だから、講師からの助言、受講生の体験を踏まえて

 

‘言葉を届けるよう’と心に留めた対応をすると、大半の顧客は素直に受け応えてくれるようになったのである。

 

特に、双方の話し合いが済み、私が受話器を置く間際には顕著だった。

 

「どうもありがとうございました!!」

 

と晴れやかに響く顧客の声がぽんぽんと私の耳に届くようになったのだった。

 

このように、「言葉を届ける」を心に留めて話すことは聞く人や見る人の心をつかむことになることだと気が付くようになったのである。

 

もし、これを読んでいるあなたが誰かに何かを伝えても、いつも「伝わっているのか」不安に思うのであれば、次のことを心掛けてみよう。

 

「声に気遣う気持ちを込めて話そう」

 

思いやれる‘音色’こそ相手の心を開かせてくれるかもしれないから。

 

≪終わり≫

 

 

 

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