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へこむわーッ!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

記事:藤原 宏輝(ライティング・ゼミ 名古屋コース )

 

 

 

 

 

「へこむわーッ!」

朝の目覚めと同時に、昨日の記憶が再生される朝ほど、胃に悪いものはない。

 

誰かのひとことや、相手のふとした態度に触れて、

「私が、悪かったのかな……」と、

目覚めと同時に、心の中で自分を責め始めた、そんな朝だった。

 

昨日、話していた知人。

「商売なんて、どっちが儲けるか? 騙し合いだよ」

という考え方のようで、

「お金に汚い」というふうに言ってしまうと、あまりに寂しい気もするが、

この人は、残念な事に言葉使いも、食事の仕方も美しくなかった。

 

せっかくの美味しい‘かにすき鍋コース’の忘年会が、

「どうして、この席なの私。

いつまで、知らない人の悪口を聞かされるのかな」

と、大好きな‘かに’が全然味わえない。

しかも、私の胃はキリキリ痛み始めた。

 

言葉遣いも、食べ方も、価値観も、

私が26年守ってきたブライダル・プロデュースの考え方針とは真逆だ。

 

信頼、誠実、言葉の温度、お金の扱い方に宿る品格。

それが私の仕事の背骨。

 

なのに私は、席を立てなかった。

その場の空気を壊さない優等生を選んだ。

 

結果、翌朝の私の胃が壊れた。

 

ほんと、へこむわー。

胃がキリキリ痛む、本当にツラい。

 

ここで、少し核心に触れていこう。

ブライダルって、

信頼・誠実・言葉の温度・お金の扱い方に

‘品格’が出る仕事。

26年やってきた私は、そこを軽んじる知人の価値観と同化できるはずがない。

 

昨夜の出来事を友人に話すと、さらに追い打ちが来た。

 

「それ、自分の中にあるから現れるのよ」

 

え、私が悪いの?

と、心がざわつく。

 

“引き寄せ”だの“内面の投影”だの、

学びや成長の糧になる話は好きだが、胃が痛いときには重い。

 

眠れない夜。

私はAIに相談した。

 

返ってきたのは、予想外の言葉だった。

 

「それは最終チェックです」

 

最終チェック?

 

「あなたはどんな言葉を日常に置きますか?

どんなお金の流れを良しとしますか?

誰の価値観を、隣の席に座らせますか?」

 

問いは鋭い。

胃より、心に刺さる。

 

さらに、続く。

 

「違和感が強いのは、ズレが明確だから。

ズレが明確ということは、選べる段階に来ています」

 

なるほど、卒業試験だったわけか。

 

Z世代風に言えば、

「その界隈、もう単位取ったよね?」

というやつだ。

 

頭では理解した。

でも感情は追いつかない。

 

そんな翌朝。

 

気分を変えようと、

某サイトで購入した“新品・未使用”のブーツを履いた。

 

玄関を出て数歩。

階段を三段降りた、その瞬間。

 

両足同時に、底がべろん。と外れて、バキっと割れた。

しかも両足とも……。

 

漫画か! 私はよろけながら、

「あ、これ落ちるやつだ」

と、私は心のどこかで妙に冷静だった。

 

手すりにしがみつき、なんとか体勢を保つ。

魂は一瞬、宇宙へ。

右足、軽く捻挫。

 

新品と書いて、嘘をつく人がいる。

恐ろしい世の中だ。

 

壊れたブーツを引きずり、自宅に戻る私。

情けないやら、笑えるやら、足首がズキズキ痛んだ。

 

玄関を開けて、中に入った。

その直後、シューズクローゼットの上の花瓶に、軽く触れた。

 

軽く、だった。

 

次の瞬間。

花瓶は倒れ、水は溢れ、床は水浸し。

 

「へこむわーッ!」

 

ついてない私。

朝から二段構えの物理的ダメージ。

雑巾を持ちながら、私は笑えてきたた。

誰かと関われば傷つき、ひとりでいても事件を起こす。

 

ほんと、へこむわー。

 

でも、ふと気づく。

私は、ちゃんと生きている。

 

感情でつまずき、物理でもつまずき、それでも大けがはしない。

案外、運がいい。

 

そこで私は、選んだ。

嫌な感情を“反省材料”ではなく、“資産”に変えることを。

 

私は感受性が高い。

人の沈黙も、空気の揺れも拾ってしまう。

 

それは弱さじゃない、仕事を支えてきた強みだ。

感じるけれど、背負わない。

共感するけれど、回収しない。

好かれるより、信頼される選択をする。

そして、仕組みに落とす。

 

感覚だけで走らない、足元を整える。

 

壊れたブーツが、教えてくれた。

人生も、ビジネスも、足元がすべてだ。

 

表示だけを信じて飛び込まない。

言葉の裏を読む。

価値観の底を確かめる、ちゃんと底のついた靴で歩く。

 

新しい年。

私は、より慎重に、より自由に進む。

 

こうして、へこむこともある。

でも、それはアップデート前の振動だ。

 

私はもう、知っている。

違和感は敵ではない、次のドアのノックだ。

 

感度を味方にしながら、

静かに、強く、しなやかに。

 

来年は、私の隣の席に座る価値観を、私が選ぶ。

そして今度は、底がちゃんと接着されたブーツで。

 

 

 

 

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