MJになりたい
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:仁(2026年1月開講ライティング・ゼミ)
私はMJになりたい。密かに25年以上も思い続けてきたことだ。MJと言っても、マイケル・ジャクソンのことではない。「50を過ぎて、まだポップスターにでもなりたいのか?」などと言われては心外である。
私の言うMJとは、「マイブーム」という言葉の生みの親、みうらじゅん氏のことだ。
「マイブーム」は1997年の新語・流行語大賞を受賞した言葉である。今の若い世代にはすでに死語かもしれないし、そもそも「死語」という言葉自体が死語なのかもしれないが。それは一旦、横に置いておこう。
そう、私はずっとみうらじゅん(以下、MJ)になりたいのだ。彼はまさに現代の魔法使いであり、憧れるには十分すぎるほどの理由がある。
MJが魔法使いである所以は、一見すると無価値なものに独自の価値を見出し、そこに経済をも生み出してしまう点にある。
「無価値」という表現が誤解を招くなら、「多くの人にとってはどうでもいいこと」と言い換えるのが正確だろうか。
例えば、今や一般的となった「ゆるキャラ」もMJが生み出した概念だ。もともと1990年代後半、地方活性化のお題目のもと、各地で特産品などをモチーフにしたキャラクターが次々と誕生していた。しかし当時は、地元住民ですら存在を知らないようなマイナーな存在に過ぎなかった。
ところが、MJが「ゆるキャラ」という定義を提唱したことで状況は一変する。この概念が世に浸透すると空前のブームが巻き起こり、国民的な認知を得るに至ったのである。
その中から「くまモン」「ひこにゃん」「ふなっしー」といった全国区のスターが登場したのは、周知の通りだ。
MJは単に言葉を作っただけではない。『みうらじゅんpresents ゆるキャラ日本一決定戦!』などのイベントを企画し、『勝手に観光協会』や『みうらじゅん&安齋肇のゆるキャラに負けない!』といった番組を通じて、その魅力を発信し続けた。
本人は「流行らせようとしてやったわけではない」と語っているが、その一方で、著書『「ない」仕事の作り方』(文藝春秋)では、誰も見向きもしないものに光を当て、いかにして「仕事」を創出してきたか、その戦略的な裏側を明かしている。
私は「どうでもいいこと」をするのが大の苦手だ。何をするにしても、つい「それって何か意味があるの?」と考えてしまう。
とにかく目的がないとモチベーションが上がらない。目的もなく、ただやり続けるということが、私には極めて難しいのだ。
趣味ひとつ取っても、「せっかくやるからには」と目的を探してしまう。「ただ好きだからやる」という純粋な境地には、なかなか辿り着けない。
例えば読書だ。本を読むからには、読後に何かアウトプットをしなければならないと身構えてしまう。しかもそのアウトプットは、どこかでお金に結びつくような価値を持たねばならないと、心のどこかで強く思っている。
本来なら、内容が素晴らしいとか、面白いとか、そんな視点があるのだなといった感想だけで十分なはずだ。それなのに「この本から得られる教訓は何か?」「この内容をどう役立てるか?」と、あれこれ損得を考えてしまうのである。
「せっかくだから」「どうせなら」、何をするにも、この言葉が枕詞になる。純粋に楽しみたい時には、これらの言葉が本当に邪魔で仕方がない。
こうした思考は、子供の頃からの癖だ。親から「それをして何になる?」「目的を持って行動しなさい」と躾られるうちに、もともとの性分も相まって、自然とそう考えるようになっていた。
最初に勤めた外資系企業でも、当時の上司から「お前はゴールオリエンテッド(Goal-oriented)だ」と言われたことがある。
ゴールオリエンテッドとは、明確な目標を定め、その達成に向けて最短距離かつ合理的に行動する「目的志向型」の考え方を指す。
自分でも思い当たる節はある。逆に言えば、ゴールがない時は何をすればいいのか分からず、手持ち無沙汰になってしまう。目的がないと動けないのだ。
しかし、それは時に苦しみを生む。いくら自覚があるとはいえ、常に目的を持てるわけではない。「目的を作ること」自体が目的になっているのではないか、それはいったい何のためなのだろうか、と自問自答を繰り返してしまう。
目的のない時間を過ごすこと。それは大げさに言えば、海図を持たないまま大海原をただ漂うような感覚だ。どこへ行くのかも分からず、風の向くまま、波の向くまま。それは自分の力では制御不能な無力感を味わうことのようで、私はそれが怖いのだ。
一方でMJは、「海図なんて、なんで持つの?」というスタンスで海に出てしまう。行き着いた先が目的地でいいじゃないか、と言わんばかりに。
私は漂流している最中、たまたま足元に流れ着いたものが流木なのか樽なのか分からなければ、それを「お宝だ!」とは思えない。しかしMJは、それをお宝だと自分を「洗脳」することができる。
MJのその生き方は、あまりにも優雅で、たまらなく魅力的に映る。人生を謳歌する人とは、まさに彼のような人のことを言うのだろうと、羨望の眼差しを向けずにはいられない。
私はMJになりたい。何か価値を生むために行動するのではなく、人生をマイペースに楽しんだ結果、自然と価値が生まれてしまう。そんな人になりたいのだ。
≪終わり≫
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