「どうしよう、2019年の抱負がいつまで経っても決まらない」症候群《天狼院通信》
記事：三浦崇典（天狼院書店店主および『殺し屋のマーケティング』著者）
天狼院書店の１店舗目をオープンした2013年から、５年続けて「年越し天狼院」というイベントで、お客様と一緒に年越しをしております。
来る年の抱負を参加者全員が言うのが、毎年恒例の行事になっているんですが、どういったわけか、今年はさっぱり浮かばない。
うんうん唸っても、捻っても、よじっても、何も出てこない。
さすがに、祇園の八坂神社に行って、お賽銭を入れる段になれば、おのずと浮かんでくると思ったのですが、全然、浮かばない。
「近くで商売させてもらってありがとうございます」の後、苦し紛れに、精一杯で思いついたのは、
「2019年、死なないように生きられますように」
だった。
なんだ、それ。
たしかに、健康第一なのは、わかる。
しかし、宣言にも抱負にもなっていないではないか。
正直言ってしまえば、僕は人生に迷っているわけではない。
幸せの青い鳥を求めて、ウユニ塩湖に行く歳でもない。
不惑は、とっくに過ぎた。
けれども、自分が2019年に何をやっていいかわからない――
いや、ちがう。
何をやるべきか、すべて綺麗にぎっしりと決まってしまっているので、あえて、何をやるのか、決めなくていいんだった。
なんなら、大きな案件は、2020年まで決まってしまっている。
春に、もう一軒、天狼院書店が生まれる。
夏にももう一軒、別の天狼院書店が生まれる。
秋には、また、大きなリニューアルがありそうだし、
小説『殺し屋のマーケティング』の第二弾京都編を出すことも決まっている。
雑誌『READING LIFE』も季刊で出すことが決まっていて、映画を撮ることも、ある芸能人の方と組んで様々やることも決まっている。
劇団天狼院を大きくすることも、定期公演にすることも決まっていて、春に新しい会社を創ることも、そのビジネスモデルも決まっている。
そう、何も改めて奮起する必要がないほどに、2018年中に決まってしまっていたのだ。
「朝起きて、自分が好きなことができれば、その人は成功者だ」
と、どこかの偉い誰かが何かで言っていた。
それが正しいとすれば、もしかして、2019年に抱負がない人生とは、その定義により近いのかも知れない。
モチベーションが必要な、たいていの目標は、失敗するに決まっている。
モチベーションなんて、幻想だからだ。
少なくとも、人間なんぞにコントロール不可能だからだ。
そうじゃなくて、たぶん、ダラダラと努力する人がうまくいく。
そもそも、それを努力というかどうかさえわからないけれども笑。
2019年、仕事をしているうちに今年も明けた。
今年も、僕はダラダラとフルスロットルで働き続けるだろう。
そして、ダラダラと目標を達成していってしまうだろう。
そんな人生、面白いのか、と言われてしまえば、疑問だ。
すくなくとも、面白くなくはない。
そう考えると、初詣の際に、八坂神社でお願いしたことは正しいのではないか。
「2019年、死なないように生きられますように」
そう、それが、同時に2019年の抱負だ。
死なないように生きられれば、たぶん、いろいろできる１年になる。
もしかして、多くの人に、面白いと言ってもらえるかも知れない。
そうだ、そうなんだ、人に面白いと言ってもらうことが、何より、面白いことなのかもしれない。
なぞと、京都三条大橋のスタバで、ダラダラと書いている。
今年も、どうぞよろしくお願いします。
■ライタープロフィール
三浦崇典（Takanori Miura）
1977年宮城県生まれ。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。天狼院書店店主。小説家・ライター・編集者。雑誌「READING LIFE」編集長。劇団天狼院主宰。2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。2017年11月、『殺し屋のマーケティング』（ポプラ社）を出版。ソニー・イメージング・プロサポート会員。プロカメラマン。秘めフォト専任フォトグラファー。
NHK「おはよう日本」「あさイチ」、テレビ朝日「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、テレビ東京「モヤモヤさまぁ〜ず２」、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、日経雑誌『商業界』、雑誌『THE21』、雑誌『散歩の達人』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。雑誌『週刊ダイヤモンド』『日経ビジネス』にて書評コーナーを連載。
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」講師、三浦が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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