もしあなたにお金がないのなら100万円借金してでも「本」を買おう《天狼院通信》
記事:三浦崇典(天狼院書店店主および『殺し屋のマーケティング』著者)
最初から立場を表明しておくが、僕は、本屋である。
ま、本屋のたわごと、と思って読んでもらってもいい。
ただ、少なくとも言えることは、僕はなんの立場であろうとも、たとえどんな職業をしていようとも、おそらく、この記事を書いただろうということだ。
僕は、天狼院書店という本屋を経営してして、社員・スタッフ含めて、たぶん、全国で40人ほどの本好きのスタッフがいるが、その中で最も本を読んでいるのは、僕だろうと思っている。
忙しいことは、まちがいないが、忙しければ忙しいほど、自然と読書量が増える。
仕事が多岐にわたり、高度になればなるほど、自分が保有していたり、世の中に無料で飛び交っている知識では対応できなくなってくるからだ。
日本の本では対応できない場合は、翻訳されている本を読む。
現代の本で解決できなければ、異国の古典にも手を伸ばす。
とにかく、僕にとって、本は「生活必需品」であり、もし、今大規模な焚書があって、世の中の本が失われてしまったとしたら、本屋の店主としてというよりも、一読者として、途方に暮れてしまうことだろう。自分の人生が、それ以降、うまくいく自信がまるでない。
それほどに、僕の人生は、本依存症である。
逆に、
「仕事がうまくいかない」
と、悩んでいたり、
「人生が楽しくない」
と、言っているスタッフに出会うとき、
ははあ、さては、こやつ、本を読んでいないな、と思ってしまう。
実際に、かなりの確率で、そうである。
本を読まない理由を聞くと、
「忙しくて、本を読む時間がない」
が、第1位。
「本を買うお金がない」(*ただし、行きもしないホットヨガに月々支払う15,000円はあるらしい)
が、第2位。
そう言われたときに、僕は、何も言わないが、内心ではこう思っている。
本を読まないから、忙しくて、本を読まないから、お金がないんだよ、と。
卵が先か鶏が先か的な話になるが、もし、忙しいなら、お金がないんなら、ただちに本屋に行って本を買い漁ればいい。
トリキにいって、同年代のともだちに相談したって何も解決しない。
その3,000円があるならば、本屋に行って、本を2冊買い、家にこもって本を読んだほうがいい。
自明のことである。
おじいちゃんやおばあちゃんがいるのなら、お父さんやお母さんがいるのなら、本を買うからお金を貸してくれ、と言えば、まあ、訝しがられるだろうが、それが本気なら、きっとまとまったお金を手に入れられるだろう。
これが、パチンコをやるから、金を貸してくれ、では集まらない。
もう、なんなら、普通に借金してでも、本を買うべきである。
なぜなら、100万円借りたとしても、利子でとられるのはせいぜい、20万程度である。
しかし、もし、本を読まなかった1年が人生にあったとしたら、それは「失われた1年」になり、20万円どころの損失ではすまなくなる。
経営者の視点で言っても、マーケターとしての視点で言っても、本を読まないことは、人生にとって多大なるリスクである。
平然と本を読まないと言っている人をみると、危なかったしくて、仕方がない。
ああならないようにしようと内心、思う。
ま、といっても、100万円分、本を買うのは、プロでも大変だ。
僕は、週に一度、2万円ほどずつ本を買うから、月に10万円ちかく、本に費やしていることになる。
もし、その10万円が、本に化けずに、まだ預金通帳の中で数値を刻んでいたと考えるだけで、ゾッとする。
吐き気がしてしまう。
本を買い、読むことは、投資のようなものだろうと思っている。
たしかに、本を買うにはお金がかかり、本を読むには時間がかかるが、本を読まない人生があるとすれば、暗黒世界である。
娯楽という意味でも、問題解決という意味でも、スキルの習得という意味においても。
今度、僕が天狼院書店の1店舗目、東京天狼院は、大改装に入る。
2度目の大改装である。
今、僕は、改装直前の東京天狼院で、この記事を書いている。
スタッフからの提案で、今度、東京天狼院は、こんな名前になる。
天狼院書店本店「東京天狼院」。
はじめて、本店、の名を冠する書店に「東京天狼院」はなるということだ。
BARになり、そして、みんなが読んで人生を変えた本が集う本屋になる。
そう、「人生を変えた書店」に生まれ変わるのだ。
まずは、本中毒者である僕の人生を変えた本たちを、「納本」しようと思っている。
本を読み、僕はライターになり、小説家になり、編集者になり、経営者になり、マーケターになり、大学講師になり、そして、カメラマンとなった。
その軌跡を本で辿れるようにしようと思う。
僕ばかりではない。
今、天狼院書店では、定期的に「人生を変えた本読書会」を開いている。
その際に「納本」していただいた、本とエピソードが、この書店に集まってきている。
ヨレヨレになり、汚くなり、破れ、傷んでいる「美しき本」たちが、登場を待っているのだ。
ワクワクしないだろうか?
僕は、ワクワクしてしかたがない。
その本たちを前に、どう人生が変わったかについて、ワインや酒を飲みながら、語り合おうじゃありませんか。
東京天狼院は、2月9日(土)10:00、天狼院書店本店「東京天狼院」として、生まれ変わります。
皆様も、ぜひ、皆様の人生を変えた本とエピソードをお持ち寄りください。
どうぞよろしくお願いします。
■ライタープロフィール
三浦崇典(Takanori Miura)
1977年宮城県生まれ。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。天狼院書店店主。小説家・ライター・編集者。雑誌「READING LIFE」編集長。劇団天狼院主宰。2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。2017年11月、『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)を出版。ソニー・イメージング・プロサポート会員。プロカメラマン。秘めフォト専任フォトグラファー。
NHK「おはよう日本」「あさイチ」、テレビ朝日「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、テレビ東京「モヤモヤさまぁ〜ず2」、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、日経雑誌『商業界』、雑誌『THE21』、雑誌『散歩の達人』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。雑誌『週刊ダイヤモンド』『日経ビジネス』にて書評コーナーを連載。
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」講師、三浦が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
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