週刊READING LIFE vol.24

3年前の就活中に、30冊ものビジネス書を読み漁った私が今考える「何のためにビジネス書を読むのか?」《週刊READING LIFE Vol.24「ビジネス書FANATIC!」》


記事:田中望美(チーム天狼院)
 
 

何かに取り憑かれたように、ビジネス書を読み漁っていた時期がありました。
もしかしたら、就職活動という現実から逃げたかったというのもあるのかもしれません。けれども、その当時の私にとって、人生をもっと豊かに、効率的にするハウツーや考え方がとてつもなく心に刺さっていたというのは事実に他ありません。
 
就活を終え、社会人の仲間入りをし、約3年ほど経った今、あの頃のように、ほ〜! へ〜!はあ〜!!! 絶対これ試してみよう! こんな考え方があったんだ!! すごい! 私もこうなりたい! と思いながら読めるか、読めているかと言われると、あの頃のようなとんでもなく純粋な熱量で読める自信はありません。
 
でも、あの頃に私がそんな風にビジネス本に触れてくれたから、今の私がいるのだととても思います。あの時の、ビジネス書症候群のような現象が自分の中になかったら、私は今、こうして文章を書いていないだろうし、歌ったり踊ったり、お芝居をしたり、自分や他人を表現するということもしていなかっただろうと思います。自分が本気でやりたいと思うことを仕事にすることが想像以上に厳しいということも、味わうことがなかっただろうと思います。
 
ご説明が遅れましたが、私は、天狼院書店でスタッフとして働いている者です。最初はただのお客さんでした。天狼院書店と出会ったのもちょうど私が、このビジネス書症候群にかかっていた時です。
 
あの時、とにかくとにかく、好奇心に駆られていて、いろんなところに足を踏み入れていた私は、友人のツイッターで見つけたちょっと不思議な、本屋さんが気になり、興味本位で何と次の日には友人に場所を聞き、足を運んでいたのでした。
 
行ってみると、そこは私にとって夢の場所でした。
私がやりたいと思っている全てが揃っていたのです。
 
英語、演劇、ライティング、そして本。
 
あ、絶対何かが変わる。そんな予感がしてたまりませんでした。
私は足繁く天狼院書店に通い詰め、本を読み、様々な体験をさせてもらいました。天狼院書店の大学生へのスカラシップ制度ができたのも、私がお金ないけど受けたいです! とわがままなことを言ったことがきっかけです。
 
そこに置いてあった本や、店主三浦に教えてもらった本などは速攻で読み、私は就職活動を辞退し、ずっと付き合っていた彼とも別れ、自分が本当にやりたいと思うことをしようと覚悟を決めました。
 
今思うと、若かったな〜と思います。後悔は全くしていないのですが、あんな風に今まで培ってきたいろんなことを犠牲にしてまで、厳しい道を選ぶことができる勢いは若さゆえだと言えると思います。可能性は、まだまだ無限大なんだ、自分の考え方、行動次第で何とでもなると本気で思っていたのです。
 
そんな風に突き動かしてくれたのは、あの時読んでいた、ビジネス書だと思います。
 
なので、その30冊の中でもこれは軒並み心に衝撃を受けたという本をいくつかご紹介したいと思います。
 
私の人生のターニングポイントになった一番の本が、水野敬也著『夢をかなえるゾウ』でした。これは卒業論文の題材としても用い、私もこんな風に人の心を動かす本を書きたいと、書くことのモチベーションにもなった本です。
いろんなビジネス書が世に出回る中、結局は自分が行動しないと意味がないんだぞと背中を押してくれました。いや〜、この本に出会ってしまったから、私は就職活動を辞退したと言っても過言じゃありません。
 
二つ目は、3代目秘本のボブ・バーグ&ジョン・デイビッド・マンの名著『あたえる人があたえられる』もそうです。この本を読んだために、自分のことばかりではなく、他の人に自らあたえられる人になろう、そういう人徳のある人になりたいと思えました。
 
3冊目は、『読んだら忘れない読書術』です。この本のおかげで私はたくさんの本を読む習慣がつきました。本を読む姿勢も変わり、地下鉄でもどこでも本をもち、自分の身になる読み方ができるようになったのです。
 
4つ目の『もっと自由に働きたい』は、ぶっ飛んだ考え方に衝撃を受けました。何だか、読めば読むほど、爽快感があったのを覚えています。自分の中に、凝り固まった考えや価値観が植えつけられていたことを、初めて知り、気づかせてくれました。
 
4冊目は『エッセンシャル思考』です。目標を実現するための具体的な方法と例がわかりやすく書かれているため、即実践できることばかりでした。そして効果は絶大。本当に論理的です。自分自身が、抽象的にものを考えがちな性格でふわっとしていたため、中々うまくいかないと悩んでいた時期に私を救ってくれた本です。
 
そして5冊目が、ググれカスでもおなじみのはあちゅうさん著『半径5メートルの野望』。大学の容姿も考え方も文章もセンスも全てにおいて憧れていた先輩から勧められた本でした。ここから山田ズーニーさんの本も読むようになり、文章の書き方、届け方についてとてつもなく考えるようになりました。私の文章や言葉の伝え方に対する研究魂に火をつけてくれたのがこの本です。
 
その他にも、『すごいメモ』『一坪の奇跡』『スタンフォード大学夢をかなえる集中講義』『こうして思考は現実になる』『働く理由』など本当に読んでよかったと思える様々なビジネス書が多くあります。
 
大学3年生の就活中にどハマりしていたこれらの本は、私に今、結局は、自分で考えて行動していくしか道を切り開いていくことはできないんだよと教えてくれているような気がします。
 
ビジネス書を読んで、たくさん夢を見ました。成功者の実体験ですから、説得力もあり、自分もできるかもしれないと勇気が持てました。けれど、現実はそう甘いものではありません。期待が高まる分、絶望も感じるものです。ビジネス書は私の考えを変えてくれても、直接的に行動や人生を変えてくれるものではありません。手助けはしてくれるかもしれないけど、当たり前のことですが、読んだからといってすぐにお金持ちになったり名声を得るなんてことはありません。
 
キラキラとした世界は、ビジネス書を読むときはまだまだ遠くにあるのです。近くにあったら、読む必要はなくなるのですから。むしろ書く側の人間になるのでしょう。
 
そう考えている今、「何のためにビジネス書を読むのか?」を考えていました。自分の人生に高い期待を抱かない方が、もしかすると幸せなことかもしれません。幸せを実感できるハードルが低い方がいいこともあると思います。自ら険しい道を選ぶ必要もないのです。けれど、人は自分を変えたくて、もっといい自分になりたくて、ビジネス書を読みます。自分の可能性を広げたい、自分に自信を持ちたい、理想の自分になりたい。いろんな理由で、読むのです。私もそうでした。今はまだ何も持っていないけれど、きっと必ず努力すれば自分の思い描く未来にたどり着けるはずだ。私はまだまだこんなもんじゃないんだ、と。
 
あれから3年、私なりにずっと頑張ってきました。走り続けてきました。とっくの昔に限界は超え、自分でもまだこんな無茶が効くのかと、驚き、正直怖いと思ったこともあります。だけど、未だに自分の目標を達成できていません。届いていないのです。ビジネス書のあの人のように、輝き、今の自分を心から好きだと思えるような人徳のある人間とは程遠く、よく深く、自分を律することにもまだ未熟で、周りに迷惑をかけることも多いです。
 
けれど、今自分の置かれている環境にはとても恵まれていると実感しています。
文章を書き、舞台に立つことができる。目標を持ち、励むことができる。そんな生活を送れることに対しては、何の不満もないのです。
 
ビジネス書の通りに人生が行くわけはないのだと、今気づかされました。その人にはその人の人生があり、成功法がある。だから、自分でそれを作っていくしかないのです。だから、いろんな本を読んで、それを融合させたりして試していくのは有効なことだと思います。
 
けれど、それが全てでない。誰に教えるわけでもない自分なりのビジネス書を自分で作っていくことにこそ意味があるのだ、その情熱を忘れたくないと思います。

 
 
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2019-03-19 | Posted in 週刊READING LIFE vol.24

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