週刊READING LIFE vol.256

親友との「人生合宿」が楽しみすぎる件について《週刊READING LIFE Vol.256 いざ、旅へ!》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2024/4/1/公開
記事:Kana(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
『ちょっと、一緒に人生合宿をしたいんですけど、いかがですか?』
 
「人生合宿!?」
親友から届いたLINEの、あまりにも独特なワードチョイスに思わず吹き出した。
独特だけど、同時に彼女らしいとも思う。
 
彼女とは、先週の金曜日に一緒にお酒を飲んだ。
金曜日のPM5:00。
待ち合わせ場所に現れた彼女は、昔から変わらない、さらりとしたロングヘアと落ち着いた色の口紅。
クールな佇まいの彼女だが、ひとたび口を開くと面白い。
テンションの高い軽やかな語り口で、知的な言葉がどんどんどんどん紡がれるのだ。
 
気づくともう、PM10:00。
5時間が一瞬であった。
帰りの電車で座っていると、楽しい時間の余韻が胸の辺りにほんのり残っているのを感じる。
それは、決して赤ワインをたっぷり飲んだからだけではないと思う。
彼女とは15年の付き合いだが、話し足りたと思ったことは一度とて無い。
 
彼女との会話は、常に「議論」がベースとなっている。 中学生の頃からずっと。
本、クラシック音楽、映画、日々の出来事、人に対して思うこと……なんでも語り合ってきた。
最近モヤモヤしたことを彼女に話しているうちに、その正体がみるみるうちに言語化される。
自分の考えが言語化される過程で、世界に対する理解が深まるのが楽しかったし、
それに対する彼女の洞察力に満ちた意見は、私の世界をどんどん拡げてくれた。
 
「わかってほしい」「わかり合いたい」「嫌われたくない」「相手との距離を保ちたい」そんな気持ちは、コミュニケーションにおいてしばしば忖度を発生させる。
でも彼女とは、それらを一切合切差し置いて、純粋に「考え」だけで語り合えるのが不思議だった。
 
彼女は大変な読書家でもある。
その程度はというと、ブラック企業で働いていた日々の中でも「純粋理性批判」「パンセ」といったゴリゴリの哲学書を読みふけるほどの筋金入り。
彼女は思索を深めてくれた良書を、逐一教えてくれる。
私の読書人生に対して、最も影響を与えてくれた人と言っても過言では無い。
これまで読んできた本で私の思考や言葉が形成されているとするならば、おそらくその源にいるのが彼女だろう。
 
ここまで読むと、私たちはものすごい知性派に思えるけれど、中学生の頃はちゃんと他愛なく日々を過ごしていた。
 
中学生2年生の頃、二人で埋めたタイムカプセルがある。
それは、「第一志望に受かって高校生になったら、素敵な恋愛がしたーい!」という女子中学生の非常に他愛ない願望を書いた紙をケースに封じただけのものだった。
今思うと大変しょうもないのだけれど、木の下に掘って埋めるとなんだか神聖な感じがして、テスト前などお参りに行ったものだった。
風が強い日に砂埃の中をセーラー襟をはためかせながら、校庭の隅の木までいそいそと歩いて、二人で祈った。
受験はずっと不安だったけど、お参りに行くだけで不思議と大丈夫な気がした。

お参りの効果があったのかどうかはともかく、二人とも無事に第一志望の高校に合格した。
高校生になってから、お礼参りをしよう! と意気込んで中学校を訪れた。
先生に頼んで校庭に入れてもらい、タイムカプセルを掘り起こしてみようとしたけれど、それは探せど探せど見つからなかった。
 
中学生の頃は、高校生になったら薔薇色の青春の日々が待っていると思っていた。
でも現実は甘くなかった。
県下でも優秀な高校に進学したから授業についていくのはいつも必死だったし、進路も決めなければならない。
中学時代より行動範囲や人間関係が広がる中で、恋愛はほとんど実らずほろ苦いばかりだった。
いつまでも理想の恋を語り合う中学生ではいられなかったのだ。
 
「願いごとのタイムカプセルが見つからない」ことは、もしかしたら私たちの人生が次のステップに進んだことを意味していたのかもしれない。
夢が叶ってめでたしめでたし、と完結することはなく、ひとつ叶ったら別の悩みや願望が発生する。
そして今度は、新しい願望に基づいて行動していく。
人生ってこういうふうに続いていくのかも、とほんのり思った15歳の秋の日だった。
そうして人生のステップが目まぐるしく移っていくのに遅れないよう必死に歩みを進めているうちに、気づけばあれから10年以上の歳月が経っていた。
 
お互い忙しくて彼女としばらく会わないこともあった。
先週も、会うのは実に2年ぶりだった。
頻繁に会わなくても、私たちはぜんぜん大丈夫。
むしろ会わない時間で考えたことや、移ろいゆく人生の変化を語り合いたかった。

 

 
 

彼女との関係性を考えるたびに思い浮かぶのが、「連理の枝の木」だ。
共に支え合いながら生きているものの象徴として崇められているこの木だが、ただ支え合っているだけではない、と私は思っている。
植物は普通、まわりの個体よりも自分が養分を取るように生きている。
連理の枝のそれぞれは、弱かったら相手に養分をとられてしまう可能性も十分にあるのだ。
だから、寄り添って二つとも大きく育っているということは、お互いが負けないようにメキメキ養分を吸って強く生きた結果なのである。
自分自身の命をそれぞれが懸命に生きて、その結果支え合ってるというのが、連理の枝の関係性だと、私は思う。
共倒れにならない連理の枝のように、何があっても影響を受けずに自分の人生を謳歌している親友の姿に、私はいつも支えられてきた。
彼女は必ずしも私と同じ苦労を共有しているわけではなく、別の人生を歩んでいる。
何かしてくれるわけではないし、心配してくれるわけではない。
「心配してくれることや気遣うことが愛」一般的に言うけれど、彼女の「私のことを信じていて、私の人生を心配していない」というスタンスは、私を強い気持ちにさせる。
 
私が大好きな、よしもとばななさんの小説『アムリタ』の中に、「ドーンと圧倒的に光っていることが愛」という言葉が出てくる。
小説の中では、主人公が「愛っていうのは状態を表す記号ってこと?」と聞き返す。
私もまさに、「愛は行為を示す言葉ではなく、状態を示している」と考えているから、この場面は深く心に刺さった。
 
親友と会うたび、まさに「状態としての愛」を受け取っていると感じるし、その愛に生かされて自分もどんどん進んでいこうと思える。
彼女とお酒を酌み交わすことをイメージしただけで、私は強くなれるのだ。
 
何か行動することで支え合おうとする関係も、もちろん素敵だと思う。
でも自分が相手にしてあげられることは限られているし、相手のことは全て理解できるわけではない。
まるで連理の枝の木のように、ただただ隣でどっしり生きていてあげる。
そういう愛の形も素敵だし、めちゃくちゃ強いと思ってる。

 

 

 

大好きな親友と私は、次の夏、「人生合宿」と銘打って旅に出る。
 
彼女とは、「旅」に対する感覚が合う。
「旅行」というと、ちょっとしたリフレッシュや贅沢のために観光を楽しんだり、一緒にいる人との時間を楽しんだりする、というのがおそらく一般的だろう。
そういう過ごし方も十分楽しいのだが、私たちが求める「旅をすること」は、ちょっと違う。
 
私たちが求める旅。
それは、自分の中の感性が日常とは違うものになって目の前の景色と不思議にリンクする。 そしてまさに化学反応としかいえない感性が開いて、新しい音楽や文章、芸術に触れたくなる。
そんな「非日常の感覚」を味わうことを、私たちは旅に求めているのだ。
 
文章を書くことを生業としていてクリエイティブに対して真摯な彼女は、自分の感性に対していつも正直だ。
「旅」になるか、ただの「旅行」になるかはその時の過ごし方や、一緒に行く人によって変わるそう。
 
振り返ってみれば私も、旅先ではあえて観光などの予定をぎっしり詰めたりせず、人と行動をずっと共にすることも少ない。
その時のフィーリングに任せて行動したり、現地で本を読んだり、ひたすら景色を眺めながら音楽を聴くのが好きなのだ。
 
私たちの「人生合宿」の行き先には、ずっと行きたいと思っていた瀬戸内海の海と、美術館を選んだ。
海辺の景色に包まれて、私たちはどんな感性と出会い、どんなことを語るのだろうか。
今から楽しみでしょうがない。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール

愛知県生まれ。滋賀県在住。 2023年6月開講のライティングゼミ、同年10月開講のライターズ倶楽部に参加。 食べることと、読書が大好き。 料理をするときは、レシピの配合を条件検討してアレンジするのが好きな理系女子。 好きな作家は、江國香織、よしもとばなな、川上弘美、川上未映子。

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2024-03-27 | Posted in 週刊READING LIFE vol.256

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