週刊READING LIFE vol.265

コミュニケーションなんて自己チューでいい! 疲れないための自分基準の考え方 ~コミュニケーションの鍵~《週刊READING LIFE Vol.265 コミュニケーションの鍵》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2024/6/10/公開
記事:大塚久(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「コミュニケーションの鍵」と聞くと、多くの人はまず相手との円滑なやり取りを思い浮かべると思います。私たちの日常生活や仕事において、他人とのコミュニケーションは欠かせないものです。しかし、コミュニケーションの本質は必ずしも相手を第一に考えることではありません。
僕はこれまでの人生の多くの場面で、コミュニケーションの取り方一つでその後の関係性が大きく左右されることがありました。小学生の時にコミュニケーションで失敗してそれまでとても仲良く遊んでいたのにそれ以来一切口を聞かなくなり、関係性が途切れてしまった人もいます。どんなに努力して相手の気持ちを理解しようとしても、完璧には理解できません。その一件以来、僕は相手の反応に一喜一憂し、時には自分の気持ちを犠牲にしてまで相手に合わせることが多くなりました。
 
ある日、僕はその考え方に疑問を抱く出来事に直面しました。相手のことを最優先に考え、無理に合わせることが必ずしも良い結果を生むとは限らないと気づいたのです。この経験を通じて、僕はコミュニケーションの真の鍵が、相手を第一に考えるのではなく、自分自身を大切にすることにあると気づきました。
この文章では、僕がその気づきを得るまでの体験を通じて、読者の皆さんに「コミュニケーションの鍵」の本質を伝えたいと思います。相手基準ではなく、自分基準で考えることの重要性と、その実践がどのように僕の人生を変えたのかをお話しします。僕の経験が、皆さんのコミュニケーションの在り方に新たな視点を提供できれば幸いです。
 
僕は理学療法士の資格を持ちリハビリの仕事に従事しています。リハビリは基本人対人の仕事なので、コミュニケーションは重要です。しかし、コミュニケーションがどれほど重要かを理解している一方で、その関わり方が自分にとってどうあるべきかを深く考えたことはありませんでした。
 
例えば、仕事において患者さんの期待に応えるために、僕は常に相手の気持ちを第一に考えました。どのような言葉が適切か、どのような対応が最も喜ばれるかを考え抜き、時には自分の体調や予定を犠牲にしてまで対応することがありました。プライベートでも同様で、友人や家族との約束を断ることはほとんどなく、どんなに忙しくても無理をして時間を作ることが日常でした。
しかし、そのような相手基準のコミュニケーションが続く中で、僕は次第に疲弊していきました。相手に合わせることが当たり前になり、自分の気持ちを後回しにすることが習慣化していたのです。そんな僕にとって、ある出来事が大きな転機となりました。
 
僕は一度離婚を経験しています。最初の結婚は正に自分の気持ちを後回しにしたものでした。もちろん結婚なので相手の気持ちも考える必要はありますが、あまりに相手のことを最優先されていたせいで、自分自身が体調を崩してしまいました。最初は思い通りにいかないことでイライラが募り、その現実を受け入れられなくてため息が増えるようになりました。家に帰ると自分を出せないため、次第に家に帰るのが遅くなり、関係性は冷え込んできました。
なんとかしたくて、相手に嫌われたくなくて、相手のことを考えて様々な方法でコミュニケーションを取ろうとするのですが、結局うまくいかず離婚という結果に至りました。この経験を通じて、僕は「どんなに相手のことを考えてコミュニケーションをとっても結局相手のことはわからないんだな」と実感しました。
 
それから2回目の結婚をし、夕方、家にいると友人から急な誘いがありました。以前の僕なら、嫌われたくないのでたとえ無理をしてでも参加していたと思います。しかし、その日はすでに夕食の支度も始まっていて、夜は家でゆっくり過ごすと決まっていたので、僕は思い切って「今日はこれから出かけるので行きません」と正直に伝えました。
友人の反応は意外にも、「じゃあまた」とあっさりしたものでした。僕は驚きと同時に、自分の気持ちを優先しても関係が壊れることはないのだと実感しました。この経験は、僕にとって大きな転機となり、コミュニケーションの取り方を見直すきっかけとなりました。
 
どうコミュニケーションの取り方を変えたかというと、「相手はどう思ってどう感じているか?」という相手を基準にしたコミュニケーションではなく、「自分自身がどうしたいか?」という、自分を基準にしたコミュニケーションの取り方に変えてみました。
 
物事を判断する基準が相手から自分に変わるとたくさんのものが大きく変わりました。例えば、以前は流行に影響されていたものも、現在は「自分が良いと感じるかどうか」を基準にしています。流行に影響されて買ったものは、買った時は「いいもの買った」と思っていたのですが、後から冷静に考えると「なんでこんなもの買ったんだろう?」ということが多々ありました。しかし、「自分がいいと感じたから買う」と決めてからはそれがなくなりました。もちろんまだ周囲の評判するための基準の一つとして気にはしますが、最終的には「自分がどう思うか?」を基準にしています。これによって圧倒的に無駄なものを買うことが減り、自分が身につけたり、手にしたりするものが自分の価値に合うものになることで、精神的にも落ち着いて過ごせるようになりました。
 
自分基準でコミュニケーションを取るようになってから、自分が重視するものが何かが明確になりました。大切でないと感じることにはNOと言い、大切と感じることにはYESと言うようになりました。この変化により、自分の優先順位が明確になりました。
正直に言うと、この変化が他人にどのような影響を与えたかははっきりとは分かりません。しかし、自分基準を持つことで、他人にもその姿勢が伝わるのではないかと考えています。
以前こんなことがありました。仕事でいつもはおおよそ19時ぐらいまで残ることが多いのですが、その日は夜に妻と花火大会に行く予定がありました。なので朝のうちに「今日は妻と花火大会に行くので18時には帰ります」と宣言したところ、皆、好意的に受け止めてくれ、仕事を早めに切り上げることができ、早く帰ることができました。それからしばらくして、別の日に、仲間から「今日は大塚さんの地元の方で花火大会ありますよね? 今日は早く帰って奥さんと見に行ってくださいね」と相手から仕事を早く帰るよう促してもらえました。この変化には僕自身も驚きました。
コミュニケーションとは、相手のことを最優先に考え、相手にどう対応するかが重要と思われがちです。もちろんそれも大事ですが、本当に大事なことは、コミュニケーションを通じて「自分」がどうなりたいかを考えることです。自分基準で考えることで、本当に大切なことが見えてくるのです。
 
相手基準でコミュニケーションをとっていると、自分自身を壊すことがあります。例えば、相手に嫌われないようにと聞きたくもない話を永遠と聞かされ、後でどっと疲れて、ベットに倒れ込んだことはありませんか? SNSの誰かからのいいねが欲しくて背伸びした投稿を続けた結果、SNS疲れになったことはありませんか? 身体に不調をきたしている時、その根本にはイライラや不安といった精神的な問題があり、さらにその下にはあの人に嫌われたくない、あの人の話は聞かなければいけないといった社会的な問題が潜んでいることが多いです。つまり、身体的な不調の原因は人間関係が根本的な問題であり、その改善の一つの手段が自分を基準にしたコミュニケーションなのです。
 
僕はコミュニケーションの本質が相手のために相手基準ではなく、自分のために自分基準で行うものだということを学びました。自分自身を尊重することが、健全なコミュニケーションと健康な生活を築く鍵です。そして自分自身が健康的であるからこそ、相手を尊重したコミュニケーションを撮ることができます。この僕の経験が、読者の皆さんの日々のコミュニケーションに役立つことができれば幸いです。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
大塚久(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

神奈川県藤沢市出身。理学療法士。2002年に理学療法士免許を取得後、一般病院に3年、整形外科クリニックに7年勤務する。その傍ら、介護保険施設、デイサービス、訪問看護ステーションなどのリハビリに従事。下は3歳から上は107歳まで、のべ40,000人のリハビリを担当する。その後2015年に起業し、整体、パーソナルトレーニング、ワークショップ、ウォーキングレッスンを提供。1日平均10,000歩以上歩くことを継続し、リハビリで得た知識と、実際に自分が歩いて得た実践を融合して、「100歳まで歩けるカラダ習慣」をコンセプトに「歩くことで人生が変わるクリエイティブウォーキング」を提供している。

 
 

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2024-06-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol.265

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