週刊READING LIFE Vol.27

もし、晴れたら、レンタカーを借りて朝食に出かけよう ~朝食デートのすすめ~《週刊READING LIFE Vol.27「BREAKFAST STORIES〜3通りの物語 朝食のおともにいかがですか?〜」》


記事:藤原華緒(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

食事を一緒にする関係、というのは特別だと思う。
 
特に、朝食を共にする相手は、ディナーを共にする関係ともちょっとニュアンスが違う気がする。
なぜなら、ディナーは相手をまだ深く知らない最初のデートでも成り立つけれど、
朝ごはんを一緒に食べる相手は一定の近さの関係でしか成り立たないからだ。
 
1日のスタートを一緒に過ごす関係。クリアな、特別感のある関係。
それはいわば、「特許」のようなもの。
だから、私は大切な人と一緒に食べる朝ごはんデートが大好きだ。

 
 
 

そのレストランは、「世界一の朝食」が食べられる。
 
オーストラリア・シドニーにある本店にレオナルド・デ・カプリオが通ったことは有名な話だ。
そして、このお店こそ、朝食デートには最適なお店だ。
 
最初はテレビや雑誌で話題になるようなお店でも、本当においしいかどうかなんてわからないと思っていた。
だって、どんなに行列ができていても話題先行でがっかりするお店はたくさんあるから。
 
まずは初見。海の近くにある店舗には開店の1時間前についた。それでも、すでに行列ができている。
でも、好きな人と並ぶ行列は、充分に楽しい。この後起こるであろう、おいしい体験にわくわくさせながらのその時間は、時が過ぎても宝物になる。そうして充分に行列を堪能して入った瞬間にそれは私の大好きなお店になった。
 
「わぁ……」
 
店内は広く、開放的でインテリアもかわいい。
オーストラリアの太陽と風を感じさせるその内装は、土曜の朝をとても素敵に迎えさせてくれる。
テーブルと椅子の高さもちょうどよく、ストレスがない。
店員さんは女性である私をちゃんと奥のソファー席に通してくれる。
 
ここで食べるのは「フルオージーブレックファースト」そして、「リコッタパンケーキw/フレッシュバナナ、ハニーコームバター」。フルオージーブレックファーストは、ふわふわのスクランブルエッグ、ベーコン、パン、ソーセージ、焼いたトマトとマッシュルームが1プレートにまとめられている。そして、もう一つはリコッタチーズが練りこまれたこのお店の看板メニュー、リコッタパンケーキ。はちみつが練りこまれたバター、そしてバナナと一緒に食べるパンケーキ。
どちらも1つずつ注文して、分け合って食べるのがまた「きゅん」とする瞬間。
 
その後に何度も出かけたけれど、ここのメニューはどれも例外なく、おいしかった。
 
だからこそ、その安心感とともに一日の始まりという大切な瞬間、
多幸感がふたりのあいだをふわふわと舞っていくのだ。
朝陽と風を感じる味に、自然に「おいしいね!」と笑顔になる。
たくさんの人たちの幸せな時間がお店中を包んで、私たちも幸せになる。
 
あのお店。あの時間。そしてあの空間。それは、どれをとっても本当に特別なのだ。

 
 
 

そして、もう一つ、朝食デートにおすすめなのが、漁港・魚市場の朝食だ。
横須賀、三崎にあるその食堂までは、少し距離があるので、早起きしてドライブで行くのがいい。
自分が運転しても、彼に運転してもらっても、晴れた日の早朝ドライブはまた幸せな時間を連れてきてくれる。
 
メニューは新鮮なお刺身定食やアジフライ、シラスなど、魚市場ならではの新鮮なお魚がメイン。
海のすぐそばだけあって、窓から入る風は、潮の香りがする。
おいしいお魚、ごはん、お味噌汁。
2人で違うメニューをオーダーして、ここでも少しずつ分け合って食べよう。
 
食事を済ませた後は、マグロ市場であるこの場所で、マグロの競りが見学できたりもする。
そうでなければ、すぐ隣にある市場を散策したり、そのまま農産物の直売所で野菜を買ったりしてもいい。
朝食のあとのお楽しみも満載なのが、横須賀の朝食デートなのだ。
 
横須賀の雰囲気は、いつもどこか夏に似ている。
それが冬であっても、空が青ければ、いつもそこは夏に似ているのだ。
だからいつも私たちの気分を上げてくれ、2人の間の空気をクリアにしてくれる。
そして、いつだって手をつなぎたくなる、そんな場所。
特別な会話なんてなくてもいい。ただ黙って歩いていても、そこはただ、2人だけの空間になる。

 
 
 

朝ごはんを食べる関係は、家族じゃない限り、普通ではない。
だから、おいしい朝ごはんを大切な人と一緒に食べるということはまた、特別な行為なのだ。
 
家で食べる朝ごはんもいいけれど、私はあえて外に出かける朝ごはんが好きだ。
一緒に過ごした朝の時間が、増えれば増えるほど、その思い出は積み重なり消えずに残っていく。
まるで、甘い、甘い、ミルフィーユのように。
 
そして、その人と過ごしたその思い出は、たとえいつか別れることになっても、
いつまでも私たちの記憶のフォルダに鮮明な思い出として保存される。
 
さあ、次の週末、もし晴れたらレンタカーを借りよう。
そして、海の近くのお店で、春の風を感じながら大切な人と向かい合って朝ごはんを食べよう。
 
いつか遠い未来、その朝食を思い出す時が来たとしても、その美しさにきっと涙が出るほどだ。

 
 

❏ライタープロフィール
藤原華緒(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
1974年生まれ。2018年より天狼院書店のライティング・ゼミを受講。20代の頃に雑誌ライターを経験しながらも自分の能力に限界を感じ挫折。現在は外資系企業にて会社員をしながら、もう一度「プロの物書き」になるべくチャレンジ中。

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2019-04-08 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.27

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