週刊READING LIFE vol.274

地球よりも、まずは身近なところから《週刊READING LIFE Vol.274 環境を守る》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2024/8/19/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「あれ? これ、まだあったんや……」
 
冷蔵庫を開けて、入れてある保存パックを開けてみると、忘れていたおかずが出てくることがたまにある。
後で食べようと自分で保存パックに詰めたのに、時間が経つと忘れてしまうのだ。
毎日、数えきれないくらい開け閉めをしている冷蔵庫。
それなのに、一体そこに何が、どれくらいあるのか。
これを、把握することは案外難しいものだ。
主婦は毎日忙しく、料理を作るために冷蔵庫を開けるのだが、そこは何度も見ることによって、だんだんと、まるで風景のようになってしまうようだ。
そうなると、意識して見ることが少なくなって、忘れてしまう食品が出てくるのだ。
見ているようで、ちゃんと確認していないのだ。
 
そして、何よりも、冷蔵庫には、100%くらいの食品を詰め込んであることも多く、扉を開けると冷えた暗黒の世界が広がっているのだ。
確か、どの冷蔵庫も開けると電気の灯りがついて明るいところなのだ。
食品を何も入れていない時には、眩しいくらいだったはずだ。
ところが、あれも、これもと入れていくに連れ、だんだんとそこは暗黒の荒野のようになってゆくのだ。
それは、いとも簡単に、いとも短時間で。
 
身近にありながら、とてつもなく心の距離を遠くにしてしまう、電気の箱。
ここを変えることから、様々なことを変えてゆくことが出来るのだ。
私は、仕事柄、クライアントさんの自宅に伺って、一緒に片づけをすることが多い。
そして、その取り掛かる場所は、まずは冷蔵庫からをおススメしている。
冷蔵庫とは、どのお宅のモノも、似たような大きさで、さほど大きなモノではない。
押し入れやクローゼットとなると、その大きさや数からも気が遠くなってしまうが、冷蔵庫だとなんだかやり切れそうな気がするものだ。
 
さらには、食品は、腐るし、賞味期限があるので、判断がしやすいモノだ。
そして、お洋服や靴は、「着たいか、着たくないか」「履きたいか、履きたくないか」の判断が難しいが、「食べたい」という嗜好は、簡単にわかると思うのだ。
 
ちょっと詰め込みすぎている冷蔵庫は、扉を開けると暗いだけではなく、たいていの場合は臭いもするものだ。
多分、入れたまま忘れてしまっているおかずが、いよいよ傷みだしたのかもしれない。
あるいは、少し使ってからしまったお野菜などが、腐り始めているのかもしれない。
 
さらには、荒野の冷蔵庫になると、お掃除が行き届いていないことが多い。
たくさんの食品が入っているので、お掃除をしようと思っても、それらを全部出すことも大変だ。
そんな狭き場所に、無理に食品を詰め込むと、お皿からこぼれてしまったり、ドレッシングのボトルに液体が垂れていることにも気づかなくなるのだ。
そうなると、悪循環で、ますます冷蔵庫は汚れてゆく。
 
そして、たくさんのモノを持っていると、やがてはそれらを忘れて行ってしまう。
私たちは、日々やることがたくさんある。
仕事や家事、育児や介護。
どの人も、皆忙しいものだ。
それなのに、さらに食品も大量に持っていると、それらを把握することはまた難しくなってゆくのだ。
忙しくなると、いつ買い物に行けるかわからず不安なので多めに食品を買い込む傾向があると言われる。
すぐに家に帰って、料理をしなければいけないと思うからだ。
ところが、忙しいと、帰ってきても疲れて料理が出来ないので、結果、外食や買ってきてお家で食べることが多くなるものだ。
そうなると、せっせと買い込んだ食材がまた冷蔵庫内で在庫となってゆくのだ。
自分の行動を意識していないと、あの小さな電気の箱は、あっという間にモノがギュウギュウに詰められた場所と化してしまうのだ。
そんなことが、あの小さな電気の箱の冷蔵庫内ですでに起こっているのだ。
 
なので、冷蔵庫を片づけることはとてもやりやすく、大変意味がある所なので、そこからやりましょうとクライアントさんに言うと、多くの方は、「いや、ここは出来ていますから」「冷蔵庫くらい、自分で出来ますから」と言われる。
ところが、冷蔵庫の片づけをやっているといいながら、一緒にやると、忘れ去られてモノが次々に出て来たり、食べたくもないのに、「食べられるから」と、長い期間置いたままのモノなどがどんどん出て来たりするのだ。
 
さらには、同じ調味料が何本も出てくることがある。
マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシングも。
食品を詰め込みすぎて、暗黒の世界となった冷蔵庫。
そうなると、何がどこにあるのかがわからなくなってしまうので、また買い足すこととなるのだ。
あることがわかっていたら、そんなことはしないのだが、わからないから、無かったら困るからと買うのだ。
毎日何度も開け閉めしている冷蔵庫なのに、こういうことが珍しくなく、どなたのお宅でも起こっているのだ。
 
冷蔵庫というのは、食品の保存をしている場所。
食品というのは、家族の健康、身体を作るための大切なモノ。
それらを保管している冷蔵庫は、とても重要で大切にしたい所であることを、あらためて考えられるのが、冷蔵庫の片づけだ。
腐った食品が出て来たり、賞味期限が何年も前のモノだったり、臭ったり、汚れているとしたら、そこに保管してある食品で作る料理は、果たして家族の健康に良いモノと言えるのだろうか。
 
環境問題というと、世界、地球といった遠い壮大なところに意識が向くのだが、それらに影響を与えているのは、こういった身近な自分自身の家の中のことなのだと思うのだ。
まとめ買いが安いからと、食べきれないほどの野菜を買い込んで来て。
今日は特価だったからと、まだ使い終わってもいない調味料を買って来て。
そういったモノが増えて行って、結果、忘れてしまったり、賞味期限が切れて処分したりすることに繋がるのだ。
 
それならば、家族の今の食事傾向を考え、家族に適量な食品を手に入れ、使い切ることが大切に思う。
子どもたちが、高校生で運動部に所属していた食べ盛りの頃と、社会人になって、食べる量も減った頃とは、その食品の取り入れ方も変えてゆく必要があるのだ。
そういったことに気づくことからでも、地球環境に優しい行動になっているはずだ。
 
環境を守るのは、まずは身近な自分の身の周りで出来ることから考えて、行動することが大切なのだ。
なぜならば、これらは今、すぐにでも出来ることだから。
環境問題を考えて、勉強したり、ボランティア活動に参加したりことも大事だが、何よりも自分の置かれている環境に対して行動を起こさなければ、何も変わらない。
そして意識して片づけた冷蔵庫になってゆくと、主婦としては庫内の食品が把握出来て、食材を使い切ることは自信にも繋がるのだ。
 
環境に意識が向いて、環境を守ろうと思うのであれば、遠いところのことを考えるよりも、まずは目の前の自分のお家の冷蔵庫の中の片づけをすることから始められると思う。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
2013年1月断捨離提唱者やましたひでこより第1期公認トレーナーと認定される。
整理・収納アドバイザー1級。

 
 

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2024-08-14 | Posted in 週刊READING LIFE vol.274

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