週刊READING LIFE vol.282

そのお買い物の仕方は本当にオトクなのだろうか《週刊READING LIFE Vol.282》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2024/10/21/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「あ~、ラッキーだったわ、良いお買い物が出来たわ」
 
いつものスーパーマーケットで、たまたま買い物に行った時、思いがけず特価品が出ていた。
しかも、それは今、好んで使っている調味料。
調味料って、ちょっと良いモノになると、案外高いものだ。
それに、その調味料はあまり値引きをされることがなかったので、めちゃくちゃラッキーだと感じた。
なので、こんなことはそうそうないのだから、2、3本買っておこう。
そんなお買い物の仕方を、やっていた頃があった。
 
確かに、調味料、しかもあまり値引きをしないメーカーのモノだと、値引きしているという、珍しい機会に遭遇したという嬉しさも相まって、つい興奮してしまうことがある。
スーパーマーケットの、調味料売り場なんだけど。
それくらい、「得をした」という思いは、主婦の心をたやすく弾ませる効果があるようだ。
さらには、「お一人様 〇本まで」とか書いてあったりしたら、きっちりその本数を買ってしまう。
そうでないと、なぜか損をしたようにさえ思ってしまうのだ。
 
よくよく考えてみると、値引きされた金額はせいぜい100円前後のことだ。
これが、卵やお肉だったとしたら、一週間のうちに何度か買い物をする食材なので、心は動くだろう。
でも、調味料というのは、一度購入したら、そんなにすぐには使い切らないものだ。
いよいよ、なくなりそうになったら、買い足すのが調味料という食材のはずだ。
それが、たまたま値引きされていたということで、飛びついてしまう心理は何だったのだろう。
 
きっと、調味料がお安くなっているということより、そんな機会に遭遇出来た自分のラッキーさを喜びたいのかもしれない。
100円前後の節約は、さほどお財布を温めてはくれないし、何にしろ「オトク感」を味わうことは人を興奮させるのだろう。
 
ただ、問題は購入したその後だ。
調味料というのは、例えば、7人家族だったり、息子が3人いて全員が高校の運動部に入っていたり、というのであれば作る食事がかなりの量になるだろうから、消費量も半端ないと思う。
それに比べ、家族が2人、3人だったとしたら、調味料の消費はそんなに多くはないはずだ。
すると、オトク感につられ、2、3本も買ってしまったとしたら、2本目、3本目を使う頃には、その調味料の賞味期限までがそう遠くはなくなっているのだ。
 
つまり、100円前後のオトク感をチョイスしたことで、調味料の鮮度の方は放棄してしまったことになったのだ。
食べ物は何よりも鮮度が大切。
それは、生鮮食品だけではなくて、このような調味料も同じことが言えると思うのだ。
賞味期限ギリギリになって、慌てて使い切ったり、残念ながら最後の1本は使えなかったりすることになりかねないのだ。
ここのところ、特に食品が次々に値上がりし、ついお安いうちにまとめ買いをしたくなる気持ちも湧いてくるのが当然だと思う。
でも、やはり食べた物で自分の身体は作られているのだ。
それだったら、新鮮なモノの方が良いと思うのだ。
お金に対するオトク感を考えることが出来るのと同じくらい、身体に対してのオトク感も考える機会があるといいなと思う。
 
そして、これもまたやりがちなのが、季節の代わり目にお安くなっているお洋服のまとめ買い。
確かに、シーズンオフを迎えると、アパレルショップではこぞって値下げが始まる。
そのシーズンには手が出せなかったアイテムも、値引きされるとなったら、気持ちがムクムクと購買方向へと向いてゆくのかもしれない。
手が届くところまで、あのアイテムがやってきてくれたことは確かに嬉しくなるのだろう。
これぞ、節約上手な主婦の見習いたいお買い物術、そんなふうに思われているのかもしれない。
 
でも、お洋服というのは、その日の気分で選択して決めることが多いのではないだろうか、
もちろん、その日の目的にあった服装を選ぶのだけれど、それでも左右する大きなポイントは自分自身のその日の気分だったりする。
そんな気持ちでも選ぶお洋服。
前のシーズンに決められるのだろうか。
今年は、こんなアイテムを好きだ、着たいと思った自分がいたとしても、来年には同じ思いのままなのだろうか。
 
私自身、かつてそのようなお買い物を繰り返していたことがあった。
確かに、定価で購入するよりも、ずっとお安く手に入れられた。
お財布にもとても優しかった。
2着分の予算で、3~5着ほど購入出来たこともあった。
 
ところが、喜んでいるのはその時だけだったのだ。
お財布が喜んだのも一時だけのこと。
その次のシーズンになった時、そんなオトクなお買い物をしたことなんて、すっかり忘れてしまっているのだ。
クローゼットには、それでなくてもたくさんの服があるので、オトクに手に入れたそれらのお洋服は、他のお洋服に挟まれて、存在すら忘れられてゆくのだ。
残念ながら見つけることが出来ず、シーズンが始まるといそいそとまたお買い物に出かけていた。
そして、ある時気づくのだ。
 
「しまった! コレ、去年買っていたんだ」と。
 
そんなことを何度繰り返してきただろうか。
こんなお買い物をしてしまうのは、オトクな値段で手に入れることが出来たという満足感が先に立っていただけなのだ。
そもそも、お洋服を選ぶときの気持ちの方は、置いてきぼりになってしまっているように思う。
もちろん、「あるモノを何でも着ます」、というのならば話は別になるけれど。
でも、何でも着ますといいながら、その中でもしっかり選んでいるはずだ。
次のシーズンが来た時、本当にフレッシュな気持ちで、ワクワクした気分になって、それらのお洋服をチョイスして着ることになるのだろうか。
 
食品である調味料も、身体に纏うお洋服も、大切なのは「旬」であるはず。
食品ならば、鮮度が高いこと。
お洋服ならば、自分の気持ち。
それらには、「今、食べたい」「今、着たい」という、大切な自分の思いがあるかどうかがポイントだと思う。
「鮮度が良い」つまり、自分自身にとっての「旬」というのが、実はお値段よりも注目したいことなのだと思う。
そんなことを頭の片隅に置いてお買い物をすると、これまでとは少し買い物の仕方が変わるかもしれない。
そして、それはお値段的には「損」と言われるものかもしれないが、気持ちや身体にとってはとても「オトク」と言えると思うのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
2013年1月断捨離提唱者やましたひでこより第1期公認トレーナーと認定される。
整理・収納アドバイザー1級。
終活アドバイザー。

 
 

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2024-10-16 | Posted in 週刊READING LIFE vol.282

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