週刊READING LIFE vol.287

私はどんなふうに日々を過ごせているのかな《週刊READING LIFE Vol.287 もし未来に行けたら》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2024/12/2/公開
記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「あれ、おかしいな……」
 
右の股関節に違和感を覚えたのは、忘れもしない2018年の夏のこと。
ずっと好きで続けて来たクラシックバレエのレッスンを、不規則な仕事のスケジュールのため足が遠のいていた。
多分、1年くらい、行けていなかったように思う。
それでも、やっぱり唯一やってきた身体を動かすことなので、年齢を重ねるからこそやっておきたいと思い直して再開したのだ。
 
久しぶりにレッスンを受けると、バレエのバーレッスンで脚を曲げる動きをすると、股関節にこれまで経験したことのないような痛みが走った。
今まで何ら問題なくバレエのレッスンを受けて来られたのに、何ならば少々サボっても次にレッスンに行くとそれなりに出来ていたのに、この時ばかりは様子が違っていた。
股関節に痛みが走るなんて、青天の霹靂だった。
 
クラシックバレエは、高校の時に始めて、短大、OL時代は遠のいていたけれど、娘が生まれ、クラシックバレエのお稽古を始める時に、私も再開していたのだ。
それから、十数年ずっと続けて来た。
どちらかというと、身体は柔らかい方で、あまり苦労をすることなく開脚も出来ていた。
だから、バレエに関しては、自分の身体は向いていると思い、楽しんでレッスンを続けて来られたのだ。
それなのに、人生初めての骨の不調。
それでも、まだ頭のどこかでは、「そんなはずがない、たまたまのことよ」と、自分に言い聞かせ、だましだまししながらレッスンを続けていた。
そんな身体になった自分を、認めたくなかったのだろう。
 
その時は、お教室の発表会があるということで、久しぶりに参加することが嬉しく、股関節のことは気になりながらも、何とか乗り切った。
でも、やっぱり良くなる兆しもなく、いよいよ整形外科を受診したのだ。
MRI、レントゲンを撮ると、私の今の股関節の状況が見せつけられた。
股関節にやっぱり不具合が出ていた。
これまで、骨折もしたことなく、骨に問題があったことなど全く無かった。
なのに、こんなことになるなんて、とてもショックだった。
もしかしたら、バレエのレッスンもできなくなるのだろうか。
そんな心配もあったが、1年ほど動かさなかったので、支障が出て来たようなので、逆に運動をしなさい、とのことだった。
安心はしたものの、やはり以前のような動きは出来なくなっていた。
 
私は、55歳にして初めて自分の身体の衰えを実感することとなった。
それまで、更年期障害を自覚することなく、バレエのレッスンは大人になってから10年以上続けてきているし、体力には自身があったのだ。
身体も、日頃運動しているので、衰えることなど想像すらしてこなかった。
同じ年代の人よりも、比較的若く見られることも多かった。
でも、それでもやっぱり55年生きて来た身体は、平等に疲れが訪れるものなのだった。
 
私は、その現実を受け入れることがなかなかできなかった。
同年代の人に比べて、自分は元気で大丈夫だと信じ切ってきたからだ。
 
「私に限って、そんなことが起こるなんて……」
 
どれだけ自分を過信しているのか、その時にようやく気づいたのだ。
 
それからというものは、股関節治療に定評のある整体を見つけては通い、それなりの費用もかけて来た。
どの治療を受けても、その時は少し痛みが引くのだが、それでもまた元に戻ることの繰り返しだった。
そう、骨の状態が、元に戻ることはまず不可能なことがよく分かった。
そのことにようやく納得できるようになってからは、自分の身体なのだから、上手く付き合ってゆこうと思えるようになったのだ。
 
よくよく考えてみたら、この身体は今年で61年生きてきているのだ。
61年間、股関節も、手も、目も耳も、内臓の全てもずっと使ってきているのだ。
私の身体は毎日動いてくれていたのだ。
そりゃあ、どこかに不具合も出てくるというものなのだ。
これまでの人生があまりにも元気だったので、私には衰えることなんてやってこないと思っていたのだろう。
でも、その方がおかしな話だ。
 
ようやく、地に足がついた、現実を見られるようになった私は、歳を重ねることの意味がわかったのだ。
そうか、人生において60歳くらいからの年代は、身体のあちらこちらの不具合が生じ、それらと折り合いをつけながら、出来る範囲で楽しんでゆく時間なのだろう。
それは、最初は残念だとか、悲しいだとか思っていたのだが、現実となるともう受け入れるしかないのだ。
魔法の粉でもあればいいけれど、それもまた非現実的なことでしかない。
衰えてゆくのが、人間なのだろう。
ああ、私の人生、寿命は何年なのかは、誰にも分らない。
そうだとしたら、私は今の自分の身体を労わり、しっかりと向き合いながら、これからの人生を楽しんで生きてゆきたいと思うようになった。
 
「もしも未来に行けたとしたら、私はその未来ではどうなっているのだろうか」
 
それを知りたいと時々思うのだ。
今、私がやっていることは、これでいいのだろうか。
なんとか、自分の身体とお付き合い出来ているのだろうか。
それすら、答えの出ない問いなのだけれど。
 
ただ、少しでも長く、元気にやりたいことをやれる人生であって欲しいと、心から望んでいる。
誰かに迷惑をかけたくない、とかのレベルではなくて、自分の人生を自分の力で楽しみ続けたいだけなのだ。
 
さあ、そのためにも、毎日、私の身体を労わり、感謝をし、出来ることを続けて人生を歩んでゆこうか。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
2013年1月断捨離提唱者やましたひでこより第1期公認トレーナーと認定される。
整理・収納アドバイザー1級。
終活アドバイザー。

 
 

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2024-11-27 | Posted in 週刊READING LIFE vol.287

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