週刊READING LIFE vol.288

伝説の占い師と生成AIの占い結果から、私が学んだこと《週刊READING LIFE Vol.288 伝統と革新》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2024/12/9/公開
記事:青山 一樹(READING LIFE編集部ライターズX)
 
 
「当たる占い師に占ってもらいたい!」と考える人は多いと思う。8年前の私も、そう考える一人だった。
 
当時の私は、独身・彼女なし、しかも、同僚からの嫌がらせで会社を休職しており、今までの人生の中で、まさにどん底の状態であった。
 
そのような私を見かねた知人が、「伝説の占い師の女性を紹介します。僕は、その人の占い通りに行動して、ベストセラー作家になりました。他に、その占い師のアドバイスに従い、芸能界で活躍している人もいます」と言ってくれた。
 
どん底から這い上がりたかった私は、半信半疑ながらも、1回1時間5万円という、決して安くない金額のコンサルティング料を、1年間払うことを決意し、その伝説の占い師に助けを求めた。
 
コンサルティングに案内された先は、東京都内の片隅にあるビルの一室だった。占いと聞くと、部屋は狭くて薄暗く、占い師は黒装束を身に纏いく、怪しげな水晶を使って行うものだと思っていた。部屋のドアをノックし、中に入ると、私の想像とはかけ離れていた。
 
部屋は、いたって普通の1Kで、中は暖色の照明がついており、テーブル2台と、パソコン、タロットカードが置かれているだけだった。
 
占い師は「こんにちは! 今日は、何を占ってほしいですか?」と明るい声で、私に質問してくれる。私が「仕事運と恋愛運を占ってください。最近、仕事も恋愛も上手くいっていないので」と暗い声で答える。
 
すると、占い師が「仕事運や恋愛運って、良いのか悪いのか客観的に判断できないから、最初は金運を占うわね!」と言い、私の金運を占い始めた。
 
「では、生年月日、生まれた時刻、生まれた場所を教えてください!」と聞かれ、私は答えた。すると、占い師はパソコンの画面に向かって私のデータを打ち込み始めた。
 
今の占いって、伝統的な水晶や竹の棒である筮竹(ぜいちく)を使わず、しかも手相なども見ず、パソコン使うのか。革新的だな! と感心して、遠目にパソコンの画面を見ると、私の理解が追い付かないような、図形やグラフが現れていた。
 
占い師はその画面を見ながら、占い結果を説明してくれた。「金運は悪くないわね。今より、もっとお給料が安い時期もあったでしょ! その時から比べると、今は随分と金運は良くなっているわよ。しかも、将来的にお金に困ることは無いわよ!」と。
 
このように、初回の占いは、終始、占い師のペースで進んだ。最後に「何か聞きたいことある?」と質問されたため、私は「どうして、仕事運と恋愛運ではなく、金運から占ったのですか?」と聞いてみた。
 
すると占い師は「だって、金運が一番分かりやすいじゃない! 100万円、200万円って客観的な数値として表現するすことができるし。その点、仕事運と金運は連動しているし。仕事運がいいということは、お給料が高い、いわば金運もいいという証拠だし。でも、恋愛運は特殊なところがあるから、恋人がいるから恋愛運がいいとは言い切れないし。また改めて占うわね」と明るい声で答えてくれた。
 
金運が悪くない、ということは仕事運も悪くない。だから、いずれ職場復帰できるはずだ! と私は、少し前向きな気持ちになり、初回の占いを終えた。
 
その後、月1回のペースでコンサルティングという名目で占いを受け続けた。パソコンを使って占う時もあれば、タロットカードを3枚引いて占う時もあった。
 
なぜ、毎回占い方が違うのだろうか? と、疑問に思った私は、ある日、占い師に聞いてみた。すると、全く予想していない回答が返ってきた。
 
「特に理由はないわね。だって、道具を使わなくても、貴方の未来が見えるから」と。そして、更に彼女は「私、代々シャーマンの家系に生まれ育ったから、幼い頃から他人の将来が見えるの。でも、他人の将来が見えない占い師は、水晶や筮竹、タロットを使って占うの」と続けた。
 
私は開いた口が塞がらなかった。少し冷静になり「占いって、伝統的に水晶やタロットを使うものかと思っていました。実際、先生もタロットカードを使われていましたし!」と再び質問してみた。
 
すると「パソコンやタロットを使うのは、私にとっては、ただのパフォーマンスね。だって、占いに来る人は、水晶とかタロットを使って占ってもらえる、と思っているでしょ。だから、何か道具を使って占うと、相手も信じてくれるのよ!」と占い師は、笑って答えてくれた。
 
なぜかこの時、私はこれらの説明が腑に落ちた。そして、この占い師の占いを100%信じることにした。例えば、仕事運は「大器晩成型だから、焦らず待てば、必ず職場復帰できるから、退職とか考えないでね!」と言われれば、退職よりも、当時の会社に残る行動をとった。
 
健康運は「肺と胃腸が弱いわね。大器晩成型だけど健康を崩したら、元も子もないからね。身体を冷やさないよう大事にしてね」と言われたので、外出先から帰宅した時は、必ず手洗い・うがいを行った。また、身体を冷やさないよう、秋から春にかけて、ヒートテックの肌着を身に着けるようにした。
 
タイプの女性が現れた時も相談し「告白するなら何回目のデートで、何月何日よ!」と言われ、それを忠実に実行し、交際に発展した。その女性が、今の妻である。
 
再び金運について質問した時は「ゴールドを積み立てておくのが、一番、金運をアップさせてくれるわよ。お金は寂しがり屋だから、明かるものに惹かれてくるのよ。ゴールドって光り輝いているから、お金を引き寄せるのよ!」と言われたため、ゴールドの積み立てを開始した。
 
このように言われたとおりに行動すると、職場復帰も実現し、恋人もできた。そして、給与もアップしてきた。私は、毎月の占いが楽しくなってきた。しかし、別れは突然訪れた。
 
彼女が、占い師を辞めるという決断をしたのだ。人づてに話を聞くと、彼氏と別れたからだという。「不幸せな自分が、他人の幸せを占うことなんてできない」という、彼女らしい理由だった。
 
占い師というコンサルタントを失った後も、私は彼女の占い結果を忠実に守った。「仕事は専門職に就いた方が成功する」、「身体はとにかく冷やさないように」、「彼女(奥さん)は出会うべくして、出会った人だから大切に」、「コールドは、毎月一定額、積み立てるように」の4つを。
 
彼女のような占い師には、もう一生出会うことなないだろうな、と思い、数年が過ぎた。ある日、ふと「生成AIって占いができるのだろうか?」と疑問がわいてきた。そこで、「私の人生を占ってください。生年月日、生まれた日時、出生地は以下の通りです」とプロンプトを入力してみた。すると、次のような回答が出てきた。
仕事運:製薬会社の営業、MRとしての経験を積み重ね、信頼関係を築く力があなたの強みです。
健康運:胃腸・肝臓が影響を受けやすい傾向があります。
金運:金運を高めるアイテムとして、ゴールドが効果的です。
恋愛・家庭運:家族やパートナーとの時間を大切にすることが、心の安定につながります。
 
 
伝説の占い師と、AIの占いは、表現こそ違うものの、言わんとしていることは、驚くほど一致していた。生成AIというツールを活用すれば、伝説の占い師と同等の占い結果を得ることができる。しかも、伝統的なシャーマンの家系に生まれなくても。ということに私は気づいた。
 
このことを、占いに留まらず、日々の業務に応用したらどうなるだろうか。生まれ持っての営業センスがなくても、生成AIを活用すれば、「伝説の営業マン」になれることができる。
 
例えば、難攻不落と思える顧客に出会ったとき「伝説の営業マンなら、どう攻略しますか?」と生成AIに質問すれば、回答を出してくれるだろう。仮に、回答を信じて行動しても、良い結果が出なかったと場合には、「別のアドバイスをください」と質問すれば、新たな回答を出してもらえるだろう。
 
しかし私は、「テレアポ」や「飛び込み営業」といった伝統的な営業手法を否定しているわけではない。これらのやり方で成功した人が多いため、いまだ残っている手法であるからだ。AIが「この顧客には、テレアポが効果的です」と回答すれば、「テレアポのセリフを作ってください」と更にAIを頼れば済むのだから。
 
私は伝説の占い師のような、伝統に裏付けされた特殊なスキルを持っていない。しかし、革新的なツールを使うスキルは、これから自分の努力次第でいくらでも磨くことができるのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
青山 一樹(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

三重県生まれ東京都在住
大学を卒業して20年以上、医療業界に従事する
2023年4月人生を変えるライティングゼミ受講
2023年10月よりREADING LIFE編集部ライターズ倶楽部に加入。
タロット占いで「最も向いている職業は作家」と鑑定され、その気になる
47歳で第一子の父親になり、男性育児記を広めるべく、ライティングスキルを磨き中

 
 

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2024-12-04 | Posted in 週刊READING LIFE vol.288

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