週刊READING LIFE vol.297

「どうせ」「私なんて」思考をライディングが変えてくれた。《週刊READING LIFE Vol.297》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2025/2/24/公開
記事:松本萌(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
今日はなぜ自分がライティングを始めたのか、そしてライティングをやってみてどんな変化があり、どれだけ自分の人生が豊かになったかを書きたいと思う。

「ライティングで人生豊かになるって…… 大げさじゃない!?」と思われるだろう。確かに大げさかもしれない。講座を受けて数年経つがライティングで生計を立てているわけでも、人気ブロガーとして活躍しているわけでもない。ライティングで学んだことを仕事に活かすこともあるが、だからといって給与が上がったわけではない。私の伝えたい豊かさとは社会的な豊かさではなく、人間的な豊かさだ。
私がライティングの題材にするのは、自分が経験したことや自分に起こった出来事、そしてその時自分が感じたことや、自分がどう変化したかという「自分」にまつわることだ。
ふと冷静になって「有名人でもない『私』のことを書いたものを読んで、読者はおもしろいの!?」と自問自答することがある。でもフィクションや小説を書きたいわけではなく、専門家でもない私は、自分のことしか書けない。
そんなことを続けて数年、ライティングを始めたときに比べて仕事、プライベート、居住地、色々なことが変わった。その中でも一番の変化はマインドだ。マインドの変化が他の全ての変化を引き起こしたとも言える。
今では本当にライティングを学んでよかったと思っている。
 
私がライティングを学び始めたのは2020年の秋で、天狼院とは別の企業が行う講座だった。
実はライティングをしたくて講座に申し込んだわけではない。「何でもいいからとにかく今とは別の環境に身を置くために何かを始めなければ」という思いに駆られていたところ、SNSで「ライティング講座をします」と見つけて、「これにしよう!」と飛びついた。

当時は会社に行くのが嫌で仕方なかった。今までとは違う仕事を担当するようになって思うように仕事ができないことに加え、殺伐とした人間関係に嫌気がさしていた。だからと言って辞める決断ができず、誰かに相談することもなくモヤモヤしながら過ごしていたら、周囲から心配されるくらい痩せてしまった。

そんな時にライティングという仕事があることを知り、「話すのは苦手だけど書くなら私にもできる。何もせずにいても今の状況は変わらない。とにかくやってみよう」と思い、参加することにした。いざ課題を提出するとボロボロだった。「仕事の文書であれば簡潔でわかりやすい。ただし世の中の読者が読みたいと思うものではない」
その時初めて文章の先にいる読者の存在を認識した。ライティングとはただ自分の書きたいことを書けばよいのではなく、「読みたい」と思われ、最終的には「読んでよかった」と読み手が思うモノでなければいけない。日常生活では読み手サイドなのに、いざ自分が書き手になると大切なことがスッポリ抜けていた。「知っているとできるは違う」と言われるが、全くもって私は知ったかぶりだった。
それからは「今、読みたいと思われているトピックスは何だろう」「どうしたら読み手に私の思いが伝わるだろう」「読みやすい構成とはどんなんだろう」と考えながら取り組んだ。
何度も書き直しを繰り返し、なんとか合格をもらえ、私の2,000字の文章が世に出ることになった。講師から「よく頑張りましたね。読み手に伝わる文章になりましたよ」と褒められ嬉しかった。自分の思いが人に伝わること、そしてたくさんの人に届くことがこんなにも嬉しいことなのだと、初めて知った。
同時に言葉にしなければ自分の思いは伝わらないこと、そして自分は伝える力を持っていることに気がついた。勇気を出して上司に異動願いを伝えたところ、希望する部署に異動することができた。
異動した先は就職した時から「いつかやってみたい」と思っていた企画の仕事で、楽しかった。そして毎日楽しく仕事をしているうちに、ライティングから遠ざかっていった。

新しい職場にも仕事にも慣れ余裕が出てきたとき、フェードアウトしてしまったライティングのことが気になり始めた。もう一度学びたいと思っていたところ、天狼院の人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」の存在を知った。前のライティング講座で、ライティングが人生を変えることを知った。講座名に「人生を変える」と入っているなんて、私にピッタリだ。前のような悲痛な思いではなく、今度はワクワクする気持ちで迷わず申し込んだ。
そして2023年の6月から、天狼院でライティング・ゼミを受け続けている。初めの頃は「なにがなんでも提出する」と意気込んで、パソコンにかじりついて必死に2,000字を綴った。コロナに罹患して体調が悪くても「絶対私は書く」と決めて、全16回の課題を提出した。
10月からは毎週5,000字を提出するコースを受けるようになった。全課題の提出はできなかったが、ウンウン唸りながらも11回中7回は提出することができた。当初は「2,000字であんなに苦労したのに、5,000字なんて書けるのか……」と不安だったが、人間やればできる。書いているうちに2,000字では自分の思いを書き切れないことに気がついた。
2024年もそのまま講座を継続したが、後半はほぼ未提出で終わった。「なんだ、だめじゃん。最初の心意気はどうした」と突っ込みたくなる。今までだったらできない自分に嫌気が差して「どうせ自分は何をやっても最後までできない」と鬱々となっていたが、昨年は自分責めをしないようにした。今の会社に入って20年程になるが、今まで経験した以上の勤務時間に加え、プライベートも忙しかった。それに加えてライティングとなると、体力的にも精神的にも厳しい。「今自分がしたいことは何か」「今優先したいことは何か」を自分に問い、出てきた答えの通りに動くようにした。できない自分を責めないようになったのもライティングのおかげだ。

自分責めの癖を直せたのは、ライティングで自己受容できるようになったからだ。

毎回出る課題に沿ってライティングをするとき、私は自分にまつわることを書いている。理由は「自分の実経験に基づくものに勝るモノはない」という思いからだ。これは最初のライティング講座で学んだ事だ。もちろん自分の推しのことを書いたり、フィクションでもいいのだが、私のライティング力では説得感が乏しい。そうであればさほどドラマチックではないものの、実体験を書いた方がいいと思っている。
自分の実体験を書くには、今までの自分を振り返ることになる。家族との思い出、学校での思い出、高校から続けている弓道への思い、日本以外の世界を知りたいと訪れた諸外国での経験、仕事を通じて学んだ事、人間関係や恋愛から学んだ事……
「あの人が掛けてくれた言葉、嬉しかったな」「あの時の事、思い出すと今でもくやしい気持ちになる」「あんなに仲良かったのに、最近疎遠になっちゃったけど元気かな」「今でも鮮明に覚えているということは、あの時の自分はそれなりに傷ついたんだな」「私、あの人のことが本当に好きだったんだな」

色々なことがフラッシュバックし、それをネタにライティングをする。

特に失恋話はいいネタになる。ネタになると思えたら、「悔しい」「悲しい」「なんで私がこんな思いをしなきゃいけないの!」と辛くて暗い悲しい思い出の中に、ユーモアが芽吹く。
無理に辛いことや苦しいことを笑いに換えたり、ましてやライティングという世に出るモノにする必要はないのだけれど、私は書こうと思った。今までの私なら秘めていたこと、こんなことを書いたら笑われるんじゃないかと思うことも書いた。
書いているうちに、あの人と一緒に過ごす時間が自分を癒やしてくれたこと、あの人のLINEが仕事で疲れ切った私の心を慰めてくれたこと、あの人と話してたくさん笑ったこと…… 数々の楽しくて温かい思い出がよみがえってくる。今はもう、あの人の中に私への思いは残っていないのだろうけど、一時でも私のことを大切に思ってくれていたのだと気がつくと、暗い気持ちが浄化されていくことに気がつく。
心のなかで「ありがとう」と唱えあの人との思い出にしっかりと鍵を閉じ、あの人はいないけれど、もっとたくさんの新しい出会いや楽しいことが待っている世界に一歩踏み出すことができる。

ライティングを通じて今までの人生を振り返った結果、自分が思っている以上に、私は周囲から愛されていることに気がついた。どんな時も応援してくれる家族、色々な国や地域を一緒に旅して思いを共有した友人、過去の辛い思いや自分の困った思考癖を話しても引かずに聞いてくれる友人、どれだけミスをしても仕事を任せてくれた上司や先輩、切磋琢磨しながら一緒に働いた同僚……
さほど勉強ができるわけでもなく、運動が得意というわけでもなく、突出した能力があるわけでもなく、人間力やコミュニケーション力が高いわけでもない平凡な私の人生にも、ドラマがあった。「今度こそ無理かも……」という気持ちに何度もなったが、その都度挽回して今がある。

自分の人生捨てたもんじゃないと思えたとき、「私は私でいいんだ」と思えるようになった。
「どんな自分もOK」と言えるようになった。
子供のころから「どうせ」「私なんて」と口をつぐむことが多かったが、自分の伝えたいことを相手に伝えることを恐れなくなった。
素直な気持ちを言葉にするのはわがままだと思っていたが、自分の意思を伝えることは他者とコミュニケーションを取る上で大切なことだと気がついた。
 
ライティングが「どうせ」「私なんて」と自分責めしていた私を、「そんな自分もいいじゃない。OKだよ」と自分褒めする私に変えた。

もし「どうせ」「私なんて」が口癖ですという人がいたら、ライティングをお勧めしたい。ライティングすると言っても自分の平凡な生活の中にネタなんてないと言うなら、過去の悔しかったこと、悲しかったこと、やるせなかったことを振り返って書いてみるといいよと伝えたい。
思いをさかのぼっていると、あのときには気がつかなかった周囲の優しさ、出来事からの学び、そしてどん底から復活した自分のたくましさに気がつくはずだから。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
松本萌(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
兵庫県生まれ。東京都在住。
2023年6月より天狼院書店のライティング講座を受講中。
「行きたいところに行く・会いたい人に会いに行く・食べたいものを食べる」がモットー。平日は会社勤めをし、休日は高校の頃から続けている弓道で息抜きをする日々。

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2025-02-17 | Posted in 週刊READING LIFE vol.297

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