週刊READING LIFE vol.300

頑張った自分へのごほうびは、最高に幸せ。でも、すぐ後に不幸(ふしあわせ)も同時に訪れるみたい《週刊READING LIFE Vol.300 いけないことだとわかっているけれど》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2025/3/17/公開
記事:藤原 宏輝(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
朝、目覚めると毎日決まった、ルーティン。
同じことの繰り返しで、時間配分も毎日ほぼ同じ。このルーティン1つ1つを、こなしながら、この日も出勤の準備をしていた。
ルーティンの一部として、いつの頃からか? 習慣となっている‘トイレ掃除’が、私の1日の始まりだ。そして、‘お酢のドリンク’も欠かさず飲むこと、これも定番。
あと必ず行う、もう1つのルーティンは、毎朝決まった時間に体重を計ることだ。
この3つを毎朝、必ず欠かさない。
これが、わたしの1つのバロメーターとなり、気持ちを落ち着ける事と身体への癒しと安心感に繋がるのだ!
 
しかしこの日は、全く状況が違った!
「えーッ!! どうしてこんなに体重増えちゃったの? なんでだろう? おかしいなあ」
と、体重計のデジタル数字をじっと見つめてひとり言がこぼれた。
驚きのあまり一瞬! 時間(とき)が止まる。
さらに! 頭の中がグルグル回り、前日の食事の記憶や運動の記憶を一生懸命にたどってみた。
 
ついさっきまでの安心感は、すでにどこかに吹っ飛んだ。
と同時に、突然の大きな不幸(ふしあわせ)がドーン! と、私を襲ってきた。
 
「まさか?! ウソでしょッ!? ここ半年以上、毎日ダイエットを頑張ろうっ!
て決めてたから、食事も食べすぎないように気をつけてるし、少しくらい遠くても歩いて出掛けたりしてた。それなのに、0.8キロも一晩で体重が増えてるなんて……。 何? 食べたかなあ。そんなに、たくさん食べたかなあ?」
と私は朝っぱらから、1人ブツブツ言いながら、けっこう落ち込んだ。テンション最低、ここで私の今日という1日は最悪のスタートとなった。
 
ここ2か月くらいは、まあまあ順調に体重は減っていて、理想体重を先週やっとクリアしたばかりだった。
‘理想体重になった喜びのごほうび!’と言いながら、確かにこれまでより少しダラダラしていたかもしれなかった。しかも、ランチや会食の機会も多かったので最近は、たくさん食べてた。
それでも、目標体重のまま10日間クリアしたままだったので、調子に乗っていたのかもしれない。
 
しかし、嬉しかったのはつかの間だった。理想体重は、たった4日間の夢と幻だったのか…。
 
自分のことを朝から「自分に甘かったんだ、ダメだなあ」と思ってしまった。
さらに、子どもの頃のツラかった事が頭をめぐった。
 
そういえば、私は子どもの頃から、ぽっちゃりしていた。というか太っていた。
小学生の頃のあだ名は、そのまま‘ぶた’だった。
‘ぶた’と言われる事は本当は嫌だったけど、太っている事は仕方ないし。という、あきらめがいつも心のどこかにあった。
そして、白いご飯が何よりも大好きだった私は、食べ出したら止まらなくて、朝食の時も夕食の時も、お茶碗3杯のご飯をガツガツ食べる子どもだった。
‘ぶた’と呼ばれて、ちょっぴり、「イヤだなあー」と思う気持ちもあったが、美味しい白いご飯をお腹いっぱい食べて、幸せな気持ちになる方がいつも勝っていた。
夕食後のお風呂に入った後もまた、一気に空腹になり、家族揃ってケーキやフルーツ、おやつをお腹いっぱい食べた。
さらに夜遅くには、夕食とおやつでお腹いっぱいだったはずなのに……。
私は部屋に戻り勉強をしながら、大好きなスナック菓子やチョコレートを隠しておいて、こっそりポテチを出して、余裕で大きなひと袋を食べ切り、ガブガブとコーラも飲んでだ。
 
小学校の体育の時間は走ってもクラスでは、後ろの方だし。何をするにも、お友達よりひとテンポ遅れる感じの鈍くさい子どもだった。
体育の授業は大嫌いだし、運動は苦手。通学の往復40分以外は、ほとんど歩かない。
そりゃあ! 太るに決まっている。
そんな生活をしていた、子ども時代だったので‘すぐに太る’という体質を作ったのだ。
 
大人になり、仕事が忙しかった事や病気になった事も重なって、いつのまにか20代後半から少しずつ痩せていった。
今は、その頃の痩せたままの体型と体重をほとんどキープしているので、周りからは「痩せてるね」とよく言われた。
しかし、実はほぼ標準体重のわたし。
実際の体重よりも、顔が細めなので、身体が痩せて見えて体重が軽く見えるらしいが、ただ顔が細面なだけのわたし。二の腕、脚、太もも、お腹周り、二の腕とあちこちが気に入らなかった。
 
そこで、5月頃から「顔の細さに見合う体重にしよう!」と一念発起して、久しぶりにダイエットを頑張り始めたのだ。
これまでも目標体重に何度か到達したが、体重をキープ出来るのは、せいぜい3〜5日。
と思い‘菓子パン’や‘惣菜パン’も断った。
理想体重に到達したのは、ここ半年でたったの2回だった。目標体重をほぼキープで、それ以上には体重が減らない。
 
なのに、あろうことか!
 
「ダイエットをここから、真剣にするぞッ!」と決めてから7か月弱。
目標体重から増えた時でも、最高でも0.5キロほどだったのに、今はプラス0.8キロなんて。
「1キロ近くも増えるなんて、どうしよう! ここから、子どもの頃のように、体重がどんどん増えていったら……。もう、あんな思いをしたくない! なぜ? こんなにも体重が増えてしまったんだろう」
朝の出勤の準備は、増えた体重の事を考えている間に時間がどんどん過ぎていったので、慌てて準備して会社に向かった。
 
とりあえず頭を切り替えて、いつもの通勤。会社に向かって歩いていた時に気が付いた!
「なんだ、原因は意外と身近なところにあった。これかも…。」
体重が増えてしまった原因究明は、さほど難しくなかったのだ。
 
実は私‘いけないことだとわかっているけど’理想体重になってからのここ数日、毎日必ずコンビニに立ち寄ってた。
毎朝スマホに新着ニュースや割引クーポン、新商品のご案内などが届くが、気を引き締めていた時には何も気にならなかったし、毎日コンビニに立ち寄ることは避けていた。
 
それなのにここ数日は「あ、この人。今日も来た」と分かるくらい、コンビニ店員さんとも顔見知りになりつつあった。
「どうして? こんなにも近くに、コンビニがたくさんあって、こんなに便利なんだろう。ありがたい事だけど、なぜ?」
コンビニの本体やコンビニオーナーの戦略なのだろうとは分かっているけど、自宅と会社の徒歩約5分の間に、主要なコンビニが3店舗もあり、少し回り道をすると、さらにコンビニが2店舗ある。
 
どうしても欲しいものや必要なものがあるわけでもないのに、夕方頃と帰りに一度ずつ、立ち寄るコンビニ。
「でも、何の為に? 何を買うためにコンビニに毎日立ち寄るのか?」
と今さらだけど、理想体重から少しずつ体重が増えていき、元に戻っていく体重の事を分かっていたのに、見て見ぬふりをしてきた、自分に聞いてみたくなる。
 
ここ数日間、仕事帰りのルーティン。こんなルーティンは必要ないが、
「仕事を今日も頑張った! 今日はこっちのコンビニに寄ろう。新商品どんな感じかな」
と私の足は自宅にまっすぐに向かわず、会社のお隣にコンビニに足を踏み入れたのだ。
 
どうして、そんなルーティンになってしまったのか?
 
理想体重になった日の仕事が終わった帰り道。すでに22時過ぎていたのに、コンビニに立ち寄った。いつものように、大好きなチョコレートだけを買えばよかったのに…。
「最近のコンビニのスィーツは、可愛いし美味しそうッ!」と思い、新作スイーツ’の棚に近づいた。
近づいてスイーツを見てみるだけなら、全然OKだったのに、最悪な行動に。
「仕事朝から疲れた〜。頑張ったし、疲れた時は甘いものだよねー。理想体重になったし、自分へのご褒美、ありかな? たまには‘コンビニスイーツ’かな、何にしようかな?」
と頭の中で、勝手な言い訳しちゃって、
「どのスイーツにしようかな?」とワクワクしながら、スイーツに手を伸ばしてみた。
「どれだけ、自分に甘いのかしら!」と、どこかで自分に、あきれてるわたしもいた。
「買っちゃダメだよ、また太るよ」と、そんな自分に対して、自分を戒めようとするわたしもいた。が、
「いいじゃん、今日くらい」と「やめときなよ」という私が私の中でせめぎ合う。
その結果「今日1日、頑張った自分へのご褒美だから。今日だけ」と思う、私が勝った。
それから、久しぶりの‘コンビニのスィーツ’コーナーに、何分くらいいたのだろう?
 
秋は何を食べても、とにかく美味しい。
“栗、芋、マロン、モンブラン、スイートポテト、紅芋”という文字があふれ出し、秋ならではの新作のチョコレートも各社こぞって出し始めていた。
 
「そうだ! 今日はモンブランのシリーズにしよう!」
私は思い切って、コンビニスィーツの‘モンブランプリン’を手にした。モンブランプリンは、モンブラン+カスタードプリン+ホイップクリーム。
最強で幸せ、そのもの!
 
今、思えばこの時からだ!
この日から、私の‘コンビニスイーツ愛’が炸裂’してしまった。
毎日、仕事帰りに3つのコンビニの1つに向かい、店内に入るなりまっすぐいつもの‘コンビニスイーツ’のコーナーに足早に向かった。
 
それから、自宅の冷蔵庫にあるスィーツを思い浮かべながら、新作や定番のスィーツをジーっと眺めた。それまでは、帰り道のコンビニに立ち寄っても我慢をして、スイーツを買わない日々だったのに。
ここ数日は自宅の冷蔵庫の中に‘コンビニスイーツ’が1つも入っていないという日はないのだ。
もちろん購入した後は、深夜なのに自宅に着くなり‘コンビニスイーツ’を食べた。
そしてとうとう、体重は停滞気味になった。
 
体重が少し減ったり、増えたりの繰り返しの結果。0.8キロの体重増加!
‘コンビニスイーツ’にハマり、毎日食べる。体重が増えるのは当然のことだ。
私のスイーツ好きは、とどまるところを知らずに、突き進んだ。
1こだけならと、ごほうびの‘モンブランプリン’を購入したあの日から、以前に逆戻りし始めた。
チョコレート大好きな、チョコレートだけの冷蔵庫から、瞬く間に…。
つぶあん、こしあん、時季によっては桜もちによもぎもち、などの和菓子系。
シュークリーム、エクレア、などのカスタード系。
ツインシュークリーム、ホイップクリーム、生クリームなどのクリーム系。
フィナンシェ、マドレーヌなどの焼き菓子系。
そして、アイス系。さらに時には‘コンビニスイーツ’だけでなく、ミスドやスタバ、タリーズなどのお菓子系。
いつも2種類以上の‘コンビニスイーツ’が冷蔵庫にある。
 
体重が増えた事は、決してコンビニのせいではないことはわかっているのだが…。
コンビニの営業戦略に私はハマり、自宅の冷蔵庫の中を考えながら‘コンビニスイーツ’を毎日購入する。
 
深夜に帰宅して、まずは「ごほうび!」と言わんばかりに‘コンビニスイーツ’をいただく。
もっとよろしくない事は、冷蔵庫にありとあらゆる‘コンビニスイーツ’があるので、
「あッ! これ、賞味期限!」と賞味期限を理由にして、別のスイーツも食べちゃう。
スイーツ1個を一気に食べることはないが「少しずつだから」と残し、また他のスイーツを食べるのだ。
この‘モンブランプリン’の日までは、チョコレートだけでおとなしく我慢していたのに…。
当然のことながら、理想体重と少しずつ離れていった。
 
こうして‘いけないことだとわかっているけど’コンビニに毎日立ち寄り、つい‘コンビニスイーツ’を購入し、深夜に食べる。
これが、体重が増えた原因だなあ、とひとりで猛省した。
‘頑張った自分へのごほうびは、最高に幸せ。でも、すぐ後に不幸(ふしあわせ)も同時に訪れるみたい’
朝っぱらから、体重が増えたという事に落ち込み、テンションが下がった。
しかし、「しまった、やらかした」という時こそ、「今日という1日を、どのように過ごすか」
とあらためて、事実を受け止めて、自分の食生活をしっかりと見直し、今ここで立て直すチャンスだ! と意識して過ごすことが重要である。
わたしは「さすがにもう、仕事帰りに毎日コンビニへの立ち寄るのは、必要以外が止めよう」と自分に言い聞かせた。あとは、もう一度心を入れ替えて、前向きに頑張る! だけだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
藤原宏輝(ふじわら こうき) 

『READING LIFE 編集部 ライターズ俱楽部』
愛知県名古屋市在住、岐阜県出身。 ブライダル・プロデュース業に25年携わり、2200組以上の花婿花嫁さんの人生のスタートに関わり、大好きな旅行を業務として20年。 
思い立ったら、どこまでも行く。知らない事は、どんどん知ってみたい。 と、即行動をする。そして、とにかく何事があっても、切り替えが早い。ブライダル業務の経験を活かして、次の世代に何を繋げていけるのか? をいつも模索しています。2024年より天狼院で学び、日々の出来事から書く事に真摯に向き合い、楽しみながら精進しております。

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2025-03-10 | Posted in 週刊READING LIFE vol.300

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