週刊READING LIFE Vol.32

人生、絶賛迷走中。《週刊READING LIFE Vol.32「人生の計画を立てる」》


記事:森野兎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

3年前、マユが結婚した。
2年前、ミキに子どもが産まれた。
1年前、トモミが家を買った。
 
今日現在、わたしはそのどれも手に入れていない。
 
30歳手前。多くの未婚女性において、結婚したい欲が爆発するお年頃に、わたしは差し掛かっている。女子会をすれば必ず結婚の話題が上がるし、久しぶりに親に会えば良い人はいないか心配されるし、スマホに出てくる広告まで、「30歳までに結婚したい!そんな方はこちらをクリック」と促される。なぜわたしが30前だということを知っている。
 
わたしも結婚願望はある。むしろ結婚しない人生を考えたことがない。
もちろん色々な選択肢があって、誰が何を選ぼうがその人の自由だ。だが、わたしにとって結婚することは、高校を出たら大学へ行くような、大学を出たら就職するような感覚だ。あえて大義名分を考えなくても、「いつかするもの」と思い込んでいる選択肢なのだ。
先に結婚した友人はまぶしい。夫の愚痴や、子育ての苦労や、家のローンに頭を悩ませる話まで、うらやましくなる時がある。わたしが一つも手に入れていないものを、彼女たちは既に手に入れているのだ。家庭のことで悩むステージにも立てていないんだぞ、こっちは。と言いたくなる。
学生時代、同じように遊んだり、勉強したり、恋愛していた友人が、結婚して、子どもを産んで、家を買っているなんて、自分より何歩も先にいるような感覚になって焦る。
「わたしは周りのことなんか気にせず、わたしのペースでやっていくわ」というような強靭な神経も持ち合わせていない。
だが、今すぐ結婚して子どもを産みたいかと言われると、そうでもない。
30を前にして、転職を考えるようになったからだ。わたしは新卒から今の会社でずっと働いているのだが、いつまでたっても仕事を好きになれない。学生時代、やりたい仕事がなかったので、条件のみで会社を選んだ。だが6年もの間、仕事に対してやりがいや楽しさを感じることができない。自信や誇りが持てない。そんな自分を、ずっと肯定できないでいる。
ただ条件で選んだけのことはあって、わたしの会社はなかなかの優良企業だ。待遇に恵まれ、福利厚生も充実しており、温厚で優しい社員が多い。業績も良く、いまのところ安定している。だから手放すのがこわい。
でもこの先、会社の業績が良いままである保障など、どこにもない。もし10年後にリストラされたら? わたしには大した資格も専門的なスキルもない。今の会社でやっている仕事が、よその会社で通用するキャリアになる自信もない。全く別の仕事に就くとしても、40手前で「新人です★」みたいな態度がまかり通る訳がないし、そもそも自分が、新人のような素直で謙虚な態度で臨めるか疑問だ。
ただ条件のみで踏みとどまった会社で、10年後にリストラされることになったらどうしよう。
この先何十年も、このままでいいの?
今だったら、色んな可能性あるんじゃない?
そんな思いで、わたしは転職を考えるようになった。
 
でもここでもまた、迷ってしまう。
いま転職して新しい世界に飛び込んだら、慣れるのに時間がかかり、結婚して子どもを産むのが遠のくのだろうか。
では転職せずに今の会社にいて、育児が落ち着いたころ、若い時に転職しなかったことを後悔するだろうか。
小さな子どもを抱えて転職は難しい。そうなると、いま転職してから結婚して子どもを産むべきだろうか。
でも自分はバイタリティが溢れるタイプではないし、仕事と育児を両立させるには、今の会社が最適なのではなかろうか。
そもそも、いま結婚の予定など全くないのに、わたしは何を言っているのか。
 
多くの働く女性にとって、子どもを産むことは仕事に影響する。出産のリミットもある。切り離して考えることはできない。
結婚もしたいし、仕事もしたい。わたしは色んなことを考えずにはいられない。
むしろ結婚していたら、子どもがいたら、迷うことはなかったかもしれない。
自分のやりたいことより、家族のために生きる選択を優先させるだろう。でも、いまのわたしは幸か不幸か、自由なのだ。だから迷う。
 
学生時代は、中学・高校は3年、大学は4年、と定められた区切りがあった。だが社会人にはそれがない。結婚する、家を買う、転職する、いつまでにやらないといけないという期限もなく、どれも「しない」という選択肢さえある。
だから迷う。迷う。迷う!!!
 
たくさんの選択肢があって、自分の中に矛盾だらけの思いがあって、覚悟をできないでいる。
それが今の自分だ。
安定した道でぬくぬく生きていきたい自分もいるし、それを裏切りたい自分もいる。
今のわたしは人生の計画が立たない。
 
なぜこんなに迷うのだろうと考えたら、きっと幸せになりたいからなのだと思う。
結婚したい。子どもを産みたい。愛情いっぱいに育てたい。
仕事もしたい。誰かの役に立ちたい。お金もほしい。
わたしが求める幸せを得るために、わたしは迷っている。
 
でもただ迷っているだけで、立ち止まってはダメだと、わたしはライティングゼミの門を叩いた。わたしが転職を考えているのは、「文章を書く」仕事だ。文章を書くことは好きだったが、この仕事に対して、知識もなければ、なんの経験もない。だから勉強しようと思った。
具体的にどんな仕事がしたいか決まっていないし、今の会社を辞める決意をしたわけでもない。もちろん結婚もいつだって視野に入れている。
可能性を試すために、答えを出すために、自分の決断に自信を持つために、わたしはここにいる。
 
わたしの目の前には、いくつもの選択肢があって、色んな可能性がある。
わたしはどうなるのか、さっぱりわからない。不安で心配で、少し楽しみでもある。
 
人生迷走上等だ。
 
迷って、試して、選んで、きっと幸せな人生にしてやる。

 
 
 

❏ライタープロフィール
森野兎(READINGLIFE編集部 ライターズ倶楽部)

アラサーのOL。2018年10月より、天狼院書店のライティングゼミに参加。ライティング素人が、「文章で表現すること」に挑戦中。
 


この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2019-05-13 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.32

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