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週刊READING LIFE Vol.41

かわいい女になりたいvs強い女でありたい《 週刊READING LIFE Vol.41「変わりたい、変わりたくない」》


記事:森野兎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

わたしは、モテない。
そこそこ外見を褒めてもらうことはあるものの、男性が全然口説いてこない。
自慢でも謙遜でもなく、内面がもう残念なほどにかわいくないのだ。
外見に関わらず、内面がかわいくない女は、モテないのだ。
これは事実であり、由々しき事態である。
 
人に頼ったり甘えたりするのが、苦手だ。上手く男性に頼ったり甘えたりする方が、「俺って頼りにされてる」「俺に心を許している」ときっと思ってもらえることは、理解している。なのに、
「大丈夫?手伝おうか?」
と言われたら、
「大丈夫です!」
と早急にシャットダウンしてしまう。もうほとんど条件反射で答えている。
人に頼ると迷惑をかけてしまうとか、自分一人でできない半人前だと思われてたくないとか、変な罪悪感や意地が、人の手を借りることを邪魔をするのだ。
そうなると、
「あ、そっか。また何かあったら言って」
くらいで終わってしまう。
違う違う。本当は大丈夫じゃないから。大丈夫かどうか心配になる状況の時点で、だいたい大丈夫じゃないから。わたしの「大丈夫です!」を真に受けるな。それを飛び越えて、
「無理すんなよ、本当は大丈夫じゃねえだろ」
と言ってくれることを本当は期待しているから。少女漫画なら、恋愛ドラマなら、みんな言うじゃないか。一度は拒絶されるも、食い下がって心配するのが王道の展開だろうが。どうなっているんだ、現実世界。本当に大丈夫だと思うな馬鹿たれが。
という、男性にとっては持たれる筋合いのない不満を、一方的に抱いている。
「大丈夫?手伝おうか?」
と言われたら、眉尻を下げて、困った顔をして、「助けてくれますか?」と言える女がかわいい女だ。素直に手伝ってもらって、
「本当に助かりました。ありがとうございました。○○さんがいてくれて良かったです」
と言える女がモテる女だ。わかっているのに、できない。
「大丈夫?手伝おうか?」
を上流で跳ね返す女はかわいくないし、モテるわけがない。
「誰かがこっそり見ていて、わたしのことを分かってくれる」なんて都合のいいことは無いのに。わたしだって本当は頼りたい。甘えたい。かわいい女になりたい。
でも素直になれなくて、隙を見せられなくて、かわいい女になれないでいる。
 
かわいい女になりたい一方で、「THE モテそうな女」のテンプレートにはまることに、強い抵抗を感じる自分もいる。
合コンで、サラダを取り分ける女がいる。かつてはわたしもやっていた。だが、モテたいからやっていたわけではなかった。わたしはサラダを放っておけなかったのだ。
まずサラダというのは、大皿でボンっとやってきて、トングとサラダ用のお皿が用意されているので、唐揚げやポテトと違って、そもそも取り分けないといけない雰囲気が出ている。またサラダの近くに座っている人たちが、さっさと自分の皿に取って、遠くに座っている人に回してくれたらいいが、呼びかけない限りそんなに上手くいかず、いつまで経っても全員に回らない。それに各々が自由な量を取ってしまうと、余り過ぎたり、足りない可能性も出てくる。
しかもサラダは最初の方に運ばれてくる上に、まあまあ大きいお皿に入っていて場所を取るため、早く空けてしまいたい。
その上ドレッシングをかけたサラダを長時間放置していると、段々野菜はシナシナでベチャベチャになって、まずくなってしまう。
だからわたしはサラダを放っておけなくて、取り分けていた。
でもサラダを取り分けると、「気が利く! できる女!」と持ち上げられることがある。そう言われると、居心地が悪くて仕方がない。「サラダ取り分け女子」がモテたい女の権化のような気がして、いたたまれないのだ。
気が利くアピールがしたくて、サラダを取り分けたと思わないでくれ、真面目で責任感の強い性格ゆえに、サラダを取り分けたに過ぎないんだ。女子会であっても、わたしはサラダを取り分けるから。決して男性の前でだけ、しゃしゃり出ているわけじゃないから。と言いたいが、そんなことをクドクド言えるわけもなく、わたしは男性の前でサラダを取り分けることができなくなってしまった。病気かと思うほど自意識が強い。
大学生ぐらいのころから、「気が利くね」と言って男性によく褒められた。嬉しかったし、気を利かせるのが自分の役割のような気がして、履き物を揃えてみたり、絆創膏を常に持ち歩いたり、「かゆいところに手が届く」女であろうとした。
あるとき、「良妻賢母って感じだね」と言われた。するとなぜだか嫌悪感を覚えた。かつては女性の理想的な姿として捉えられていた時代もあったのだろうが、なんだか女性の役割を決めつけているような、下にみられているような気がしたのだ。
「気が利く」と言われて嬉しい反面、「モテる女」のテンプレートなんて、つまらない。面白くない。男性を支える役割としてではなく、一人の人間としてわたしを見てほしいし、認めてほしいという思いがあった。
モテる女を迎合せずに、強くてしっかりした人間でもありたかったのだ。
 
結局のところ、かわいくてモテる女になりたいのか、強くて自立している女でありたいのか、今だって分からず、わけのわからんことをゴチャゴチャ考える面倒くさい女になってしまった。かわいさと強さって、両立できるのだろうか。少なくとも、両立できる器用さが、いまのわたしにはない。
自分の中に矛盾がたくさんあって、自意識でがんじがらめになっていて、生き辛い。
 
そんな不器用さを、誰か「かわいい」と言ってくれ。

 
 
 

◻︎ライタープロフィール
森野兎(週刊READING LIFE編集部 ライターズ倶楽部)

アラサー。普段はOLをしている。2019年3月より、天狼院書店のライターズ倶楽部に参加。ライティング素人が、プロを目指して挑戦中。

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2019-07-15 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.41

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