週刊READING LIFE vol.44

必需の定番品《 週刊READING LIFE Vol.44「くらしの定番」》


記事:山田THX将治(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 

「うわぁ! また無駄な時間を過ごしてしまった!!」
私が毎朝、最初に思うことだ。寝起きの寝ぼけた頭にもかかわらず。
 
自慢出来ることではないが、私は子供の頃から、すこぶる朝が弱い。それは単に、睡眠時間が短いから、という訳ではない。例え、10時間以上睡眠を取ったとしても、大した状況変化は無い。
いつの頃からか、“朝が弱い”という言い訳めいた言葉が出現してきた。そこで、私の様な朝が弱い派の人間は、“寝起きが悪い”とか“夜更かし(夜遊び)”という、不健全かつ反模範的の謗(そし)りを受けずに済むようになってきた。少しは、人権が認められる様になった気がした。
最近では、自分がショートスリーパーであることに増長して、
「死んだら死ぬ程寝られるのだから、生きている内はなるべく起きていよう」
等と、訳の分からぬことを言い始めていたりする。
 
ふと、気付いたことがある。天狼院の三浦店主による、時間術系の講座を受けた時だ。大まかな講座の内容は、徹底した時間の効率化を図るということだ。これは、私は常々考え実行していることなので、違和感がないし既に実行していることでもある。
特に私の場合は、時間の効率化の為にデュアルタスクを心掛けている。勿論、歩きスマフォの様に、社会問題となることはしてはいない。ただ、可能な限り複数のことを同時に行っているだけだ。
だから、眠ることしか出来ない睡眠が、無駄に思えて仕方が無いのだ。近い内にA.I.が進歩して、睡眠中に頭の中で考えていることが、自動でファイルにタイピングされている、なんて時代になったら、8時間でも10時間でも睡眠が取れるのにと、冗談みたいなことを本気で考えてしまう。
 
ただ肝心なのは、有効的に時間を使い、それによって出来た時間的余裕を、いかに使いうかが重要ということだ。時間を無駄に過ごしてしまうことは、時間術の教えでも、最も非効率と教えられているからだ。
その点私は、興味があることが多いので、時間がいくらあっても足りる実感が無い。欲張りと言われたら、反論の余地も無いが、好きな物事で心の隙間を埋めてきたのも事実だ。ただ、他の方々の様に、自分の置かれた状況に折り合いを付け、上手に立ち振る舞えないことも有ったりする。
好きなこと、興味があることに、時間を費やしている訳なのだが、いつまでも衰えぬ好奇心と、好きなことに断捨離出来ない性格が、私の時間不足に拍車を掛けているのだ。
そこで、いつでも時間短縮や、その為のデュアルタスクを心掛けなければならなくなっているのだ。
 
ここで、意志が強いとまでいかなくとも、通常の大人としての意志をお持ちの多くの方なら、自重というセーフティモードが働くはずだ。ところが、私の様に幾つになっても意志が固まらず“中二病”が抜け切らない男は、自分を叱咤激励し走り続けることしか出来ない。身体に無理をしても時間を作り、やりたいことを完遂しようとする。
私の最近では、読書の時間が足りていないと感じている。これは、“天狼院の常連客の中では”の注釈が付くことは理解している。本を読んでいない訳ではない。一般の方よりは、本を読んでいる自信はある。しかし、ライティングで語彙に詰まったり、思ったようなフレーズが浮かんでこなかったりすると、読書不足を痛感してしまうのだ。
実際、読みたい本が積み上がっているし、それが増える一方でもある。
 
私は、心掛けているデュアルタスクの中で、何かと同時に読書することが最も得意だ。ところが、他の方々と比べて一か所、致命的に読書する空間を無くしている。
それは、移動時間だ。周りの方々は、電車移動が多い。ところが私の場合は、仕事の性質上もあって、移動はもっぱら車だ。電車の中では、スマフォを操作することが出来るし本を読むことが出来る。王道のデュアルタスクだ。車、それも私の様に常に運転している人間は、その間スマフォを操作することが出来ない。違反になるからだ。そして、当たり前のことだが、読書は不可能だ。
以前、車で渋滞している時に、緊急でメールを打ったことが有る。何度かしている内、ガラ携だったことも有り画面を見ずにメールが打てるようになった。ところが、或る時、いつもの様にノールックメールを打っていてら、ブレーキを踏むタイミングが遅れ、あわや追突事故を起こしそうになった。それ以来、運転しながらメールは、止める様にした。
また、一昨年の秋、高速道路のパーキングエリアで、休憩と読書のデュアルタスクを行なった。ただ、その時読んでいた本が、三浦店主の『殺し屋のマーケティング』だった為、面白過ぎてキリが付かず、危うく集合時間に遅れそうになってしまった。それ以来、そちらも止める様になった。
ただ、一般的にはデュアルタスクが難しそうな車の運転だが、私は時間の無駄にはしていない。運転中常に、テレビを点けているのだ。勿論、車が動いている間は、ナビに切り替わってしまうが、音が途切れることはない。それだけで十分に内容を把握することは出来る。私は、生来のテレビっ子なのだ。
 
テレビと言えば、私は居在宅中、常にテレビを点けている。まるでBGMの様に。しかも、たいがいの場合、観るのは録画してある番組だ。リアルタイムで観るプログラムは、スポーツ中継とニュースだけだ。
何故、録画してテレビを観るのかというと、これまた時短の為だ。私が使っているハードディスク・Blu-rayレコーダーは、CMをカットすることが出来る形式だ。そうなると、時間重視の通常録画で撮った番組が、より多くDVDにより多くに焼くことが出来る。CM付きなら、8時間枠分しかダビング出来ないが、カットすれば10時間枠分ダビングすることが出来る。ハードディスク直で観ずに、一旦ダビングするのは、そんな訳が有るからだ。
更に、そのディスクを2倍速で視聴可能なので私は、10時間枠分の番組を、ほぼ4時間で観ることが可能なのだ。しかも、観たいと思った内容で無かったなら、次のプログラムへ飛ぶことが容易なので、実際はもっと時短に役立っている。
 
ただ、私が使っているレコーダーは、既に生産中止になった型落ち品だ。何故、酷使するレコーダーを更新しないのかというと、出来ない訳が有るからなのだ。
最新式のハードディスク・Blu-rayレコーダーは、CMカット出来ないものが多い。しかも、ダビングするのにBlu-rayディスクには高速で焼くことが出来るものの、DVDディスクには等速ダビングしか出来ない物ばかりになってしまったのだ。高速だと30分だが、等速だと8~10時間もダビングに時間が掛かってしまう。こうなると、全く時短にはならない。私にとっては無意味なのだ。
では何故、ダビングにBlu-rayディスクを使わず、いまだにDVDディスクを使っているのかというと、自宅では兎も角、車のナビゲーションシステムでは、DVDしか再生出来ないからなのだ。
だから、旧式のレコーダーを使い続けるのも、DVDを使っているのも、全て、私にとっての時短の為のベストチョイスなのだ。
 
従って、私にとって、現在使っているレコーダーこそが、暮らしの定番品であり必需品なのである。
 
昨日、アマゾンで、現在使っているレコーダーの同型中古品が出ていた。予備の為に、買っておこうかと検討中だ。
二度と手に入らない必需品なのだから。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
山田THX将治(READING LIFE編集部公認ライター)

天狼院ライターズ倶楽部所属 READING LIFE編集部公認ライター
1959年、東京生まれ東京育ち 食品会社代表取締役
幼少の頃からの映画狂 現在までの映画観賞本数15,000余
映画解説者・淀川長治師が創設した「東京映画友の会」の事務局を40年にわたり務め続けている 自称、淀川最後の直弟子
これまで、雑誌やTVに映画紹介記事を寄稿
ミドルネーム「THX」は、ジョージ・ルーカス(『スター・ウォーズ』)監督の処女作『THX-1138』からきている
本格的ライティングは、天狼院に通いだしてから学ぶ いわば、「50の手習い」
映画の他に、海外スポーツ・車・ファッションに一家言あり

 
 
 
 
http://tenro-in.com/zemi/86808

 


2019-08-05 | Posted in 週刊READING LIFE vol.44

関連記事