週刊READING LIFE vol.45

見た目100%のわたしが、サヨナラできない雑誌《 週刊READING LIFE Vol.45「MAGAZINE FANATIC」》


記事:井上かほる(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

雑誌が好きだ。
先日、「りぼん展」に行った。
初めて買った雑誌は「りぼん」だった。
今のように、コンビニもスーパーも近所にはなく、書店もなかったから、同級生みんなが行く文房具店が唯一買える場所だった。おこづかい500円のうちの400円を握りしめ、すっからかんになった財産と引き換えにマンガ雑誌を買うのが楽しみだった。わたしは、見た目重視だった。イラストが自分の好みでなければストーリーがどれだけ面白くても読まない。食わず嫌いだった。ちなみに読んでいたのは、「姫ちゃんのリボン」や「あなたとスキャンダル」
(すごいタイトルだ……)、「ハンサムな彼女」「ママレード・ボーイ」、最後に読んだのは、「こどものおもちゃ」だった。ほかにもたくさんの作品があったというのに、おこづかいのほとんどを費やしていたというのに、なんてもったいない読み方だろうと、今は思う。
年末になると、たまりにたまった「りぼん」を束ねて、古紙回収に出す。
そのときにも、ほかの作品を読む機会はあったのに、やっぱり読まなかった。
 
大人になっても、それは変わらなかった。
ファッション雑誌、映画雑誌、インテリア雑誌、ビジネス系の雑誌。
どれも表紙で、「なんか良さそう」という安易な気持ちで購入しては、写真だけ見たり、インタビューの読みたいところだけを読んで、年末にはサヨナラしていた。
 
そんなわたしが、永久に保存しようと決めている雑誌がある。
最初は、これまでと同じく、「なんか良さそう」というだけだった。
同い年で自分にあった仕事をしていて、スカートよりもパンツスタイルが多くて、ショートカットで、背が高くて、かわいいワンコとにゃんこと住んでいて。彼女が表紙に出ていると、まず、手に取ってしまう。
そんな彼女がずーっと表紙に出る雑誌だった。
 
「OZ magazine PLUS(オズマガジン  プラス)」
2016年5月。
これまでも彼女が表紙だったこともあるが、買うようになったのは、この5月からだった。
理由はかんたん。
これまでの「オズマガジン  プラス」が新しくなって、彼女がこれからずっと表紙に出る、というからだ。
まず、表紙がいい。
背景1枚に彼女がメインで、他に色や写真がごちゃごちゃ載ってない。
文字もシンプルでだれにでもスッと入ってきそうな感じがするし、それに文字数が少なくて、「今回はこれを伝えたいのだよ」とダリのようなヒゲの生えた小さな博士キャラが教えてくれるような、そんな感じ。
わたしが特に好きな表紙は、「朝ごはん」をテーマにしたとき。
新しくなってコンセプトを<毎日の「ふつう」を整える>としてから2回目の号。
テーブルには白いごはんに卵焼き、ほうれん草としらすのおひたしのようなもの。そして彼女がお味噌汁をすすっている。
派手な表紙の雑誌が多い中、目にやさしい。
 
表紙で語り終わってしまいそうなので、表紙をめくっていく。
わたしが大好きな、「真夜中郵便局」というコーナーが出てくる。
読者が彼女におたよりを書いて、それに彼女が手書きでイラスト付きで返事を書いてくれるというのだ。
このときは、読者が見たヘンテコな夢について。
夢の内容をイラストで描いてくれたり、自身の夢エピソードを語ってくれたり。
真夜中に、ちょっと窓を開けたら風がふわっと入ってくるような、そんな気持ちになってこのページを読んじゃいます。あぁ、いいなぁ。このコーナー、ずっと続いてほしいなぁ。そう思いながら、表紙のあとには必ずこのページを読むことにしてました。
 
そうして、ふわっとした気持ちで次のページをめくると、この雑誌のテーマがしっかり丁寧に1ページに渡って書かれていて、「想いのある雑誌なんだな」ということが伝わってきます。
「こんにちは。お元気ですか?」からはじまり、編集長の名前で終わる。
このページもまた、編集長から読者に向けてのおたよりで、このおたよりを受けて、本編。「今回はこのことについてお話しますよ」と語りかけてくれるような感じがした。
 
ここからはもう、いろんな人たちの朝ごはんを紹介したり、5分でできるかんたんアレンジごはんがずらずらっと出てきたり、卵料理やTKGが惜しげもなくページいっぱいに出てきたり、「みそ汁もあるといいね」という言葉をきっかけに、味噌の種類やら、おいしいみそ汁の作り方やら、どんどんと出てきて、さらには喫茶店のモーニングやら朝ごはんにぴったりなコンビニ商品やら、わんわんと出てくるのだ。
 
朝ごはんだけで雑誌の9割。
ほかにも情報はあるけれど、表紙に書いてあるとおりに「朝ごはん」がテーマの回なのです。
雑誌は、いろんな情報が載ってるイメージを持っていたわたしにとって、はじめての「1テーマ雑誌」だった。

 

 

 

 

残念ながら、現在は休刊。
「休刊ということは、いつかはじまることがあるのだろうか」と期待しているが、どうなのだろう。
この表紙に、また出合うことができたらいいなぁ。
<毎日の「ふつう」を整える>という言葉とともに、一色の背景に少ない文字でテーマを伝えてくれる。
そして、その真ん中には菊池亜希子さんがいてくれる。
あぁ!  復活してくれた暁には、すべて買って、きれいに本棚に飾りたい!
友達が家に来たときには、さりげなくテーブルに置いて読ませたい!
秋の夜長に窓を開けて、菊池亜希子さんからのおたよりを、暗い照明で読んでいたい!
 
そのときまで、この雑誌は大切に保存しておこうと思う。
編集長さん、菊池亜希子さん、待ってます!

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
井上かほる(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

札幌市在住。元・求人広告営業。
2018年12月より天狼院ライターズ倶楽部に所属中。
IT企業のブログにて、働く女性に向けての記事を書いている。
エネルギー源は妹と暮らすうさぎさん、バスケットボール、お笑い&落語、映画、苦くなくて甘すぎないカフェモカ。

 
 
 
 
http://tenro-in.com/zemi/86808

 


2019-08-12 | Posted in 週刊READING LIFE vol.45

関連記事