週刊READING LIFE vol.47

アラフォー上司の心に90%つかめる池袋の伝説《 週刊READING LIFE Vol.47「映画・ドラマ・アニメFANATIC!」》


記事:射手座右聴き(天狼院公認ライター)
 
 

「中高生の頃、ドラマとかどんなの見てたの?」
みたいな会話、会社の飲み会などでありますよね。
世代のギャップを語り合う。というような会話です。
 
「○○ってドラマ知らないよな。俺が社会人だった頃、まだ中学生だったんだもんな」
みたいな会話には微妙なマウンティング感があるかもしれません。
しかし、ここでひるんでしまっては会話が弾みません。
僕も(私も)昔のこと結構知ってますよ、というアピールができれば
この場面を盛り上げるために役立つのです。
 
ほら、あれです。カラオケに行って、20代なのに、残酷な天使のテーゼを歌って
「君、意外と古い歌もいけるんだね」
と一目おかれる、あの感じです。
 
今日は、ドラマで一目置かれる確率が高いやつをご紹介しましょう。
もし、あなたの部署の上司がアラフォーだったら、
試しにこう言ってください。
 
「あー。アイダブリュージーピーとか観てましたよ」
 
I.W.G.P
 
プロレスの団体ではありません。
池袋ウェストゲートパークというドラマです。
決して、「池袋ウェストゲートパーク」と言ってはいけません。
「アイダブリュージーピー」と言ってください。
アラフォーの人たちは、そう呼んでいたはず、だからです。
 
あなたが、
「あー、アイダブリュージーピーとか、観ましたよ」
と言ったら、アラフォー上司は少しだけテンションをあげてこう言うでしょう。
「懐かしいの知ってんなあ、お前」
 
次は、こう言ってください。
「窪塚洋介って、神がかってますよね、あのドラマで」
 
そう。窪塚洋介が強烈な印象を放ったドラマだったのです。とにかくかっこよかったのです。
池袋西口のカラーギャングG-BOYSのリーダー安藤崇役。キングと呼ばれ恐れられています。
と言いながら、実家はサウナ。父親役は、渡辺哲さんだったりして、むしろほのぼのした感じ。
普段は飄々としてふざけてばかりなのですが、
何かあってキレたときの凄みとのギャップが大きすぎて大きすぎて。雰囲気も話し方も演技も
カリスマを感じさせるものでした。
アラフォーの男子なら、ほぼ全員、このカリスマ性にやられたはずです。はずです。
 
上司は言うはずです。
「『死にますん』とか意味わかんないよな」
 
「死にますん」
このドラマを象徴するセリフです。
ドラマの後半、東口のカラーギャングとの抗争が激しくなるのですが、
この時、主役のマコト=長瀬智也が、崇=窪塚洋介に、こう言います。すごーくシリアスに。
 
「なあ、崇、死ぬなよ」
真面目な顔で、崇が答えます。
「死にますん」
マコトでなくても
「どっちだよ!」
と言いたくなりますね。
 
そうです、主役は長瀬智也演じる、真島マコトなのです。ドラマの前半は、池袋に住むマコトが、
様々なトラブルを解決していく話です。トラブルといっても、とてもリアルで下世話なトラブルです。
援助交際、ストーカー、詐欺、麻薬取引、健康食品のネットワークビジネス、不法滞在の外国人
などなど。恋愛ドラマなどとは全く違った題材が金曜の夜21時という時間に放送されていたのです。
 
1回目から酒井若菜演じるリカが殺されたりとか、いろいろあるわけですが、みかんの回は
かなり印象に残った回だと思います。
 
「妻夫木聡も出てたんですよね」
アラフォー上司にこう言ってください。
「そうなんだよ」
第3話、みかんの回では、暴力団の組員として、
若かりし妻夫木聡が、マコトの同級生サルという役で登場します。
サルは、組長の娘、通称「姫」の付き人です。ところが、この姫が誘拐されてしまいます。
組長は、姫の行方を捜すことをマコトに依頼し、サルとマコトの捜索が始まります。
池袋中を捜す二人に有力な情報がもたらされます。組長の娘をさらったであろうワゴンをとあるコンビニで見た、というのです。そして、そのコンビニの向かいに偶然にもマコトの同級生、和範の家があったのです。このへんの設定も池袋から3キロ以内で撮影したストーリーならではですね。同級生の和範は、引きこもりで、髪もボサボサ。家から出ない代わりにコンビニに止まる車をずっと観察していたのでした。車両をつきとめ、捜索は一気に進みます。犯人を捕まえ、変わり果てた姫と対面したサルのとった行動は。というところで、この回はとても印象に残る回なのですが、この回には、もうひとつ山があります。引きこもりの和範役は、なんと、高橋一生なのです。
 
「そういえば、みかんの回って高橋一生、でてましたね」
 
これで、アラフォー上司は、あなたを信用するでしょう。
 
そうです。もうお気づきかもしれませんが、池袋ウェストゲートパークというドラマは、
キャスティングが異常なのです。
このほかにも、山下智久、佐藤隆太、小栗旬、加藤あい、小雪、安藤裕子、きたろう、阿部サダヲ、古田新太、遠藤憲一
そして、のちのハリウッドスター、渡辺謙と今もなお活躍している俳優、女優が数えきれないほど
登場しているのです。
 
そして、このキャスティングの流れから、のちの宮藤官九郎のドラマのキャスティングは
広がっていきます。2000年代のドラマを語るなら、ここをおさえておけば間違いない
と言えるかもしれません。
 
つまり、少し話をふるだけで、アラフォー上司から無限に会話を引き出すことができます。
小ネタからストーリー、キャスティング、はたまた池袋のランドマークまで。
話しだしたらきりがないコンテンツです。
続編もひとつしかなく、一瞬の時代をとらえたドラマでしたが、その記憶は
90%以上のアラフォー男子に強烈に刷り込まれているはずです。
 
「先輩も少し、マコトっぽいとこありますね。
会社で何派につくとかないけど、いざという時、なんとかする感じ」とか
「課長なんとなく、キングっぽいとこありますね」とか
結構酔ってたら言ってもいいかもしれません。
 
もし、そうでなかったら
「なんだかんだ言って熱いドラマっすよね」
くらいにしておきましょう。
 
どこか見覚えのある街、池袋で、リアルだけどシュールなストーリーで
面白可笑しいけど、結構残酷で、えぐい感じで、でもどこかで熱量を捨てきれないI.W.G.P
おさえておく、くらいの気持ちで見たら、みるみるうちにハマれる作品です。
 
締めは一言。
「西口公園も変わっちゃいましたね」
上司もうなずくはずです。
 
今、ウェストゲートパークと呼ばれた西口公園も大きくリニューアルしていこうと
しています。
変わりゆく池袋を残した貴重な記録映像としても、楽しめるドラマかもしれません。
 
私も書いていて、
天狼院STYLE for Bizに立ち寄った後、西口公園、見にいきたくなりました。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
射手座右聴き(天狼院公認ライター)

東京生まれ静岡育ち。バツイチ独身。大学卒業後、広告会社でCM制作に携わる。40代半ばで、フリーのクリエイティブディレクターに。退職時のキャリア相談をきっかけに、中高年男性の人生転換期に大きな関心を持つ。本業の合間に、1時間1000円で自分を貸し出す「おっさんレンタル」に登録。4年で300人ほどの相談や依頼を受ける。同じ時期に、某有名WEBライターのイベントでのDJをきっかけにWEBライティングに興味を持ち、天狼院書店ライティングゼミの門を叩く。「人生100年時代の折り返し地点をどう生きるか」「普通のおっさんが、世間から疎まれずに生きていくにはどうするか」 をメインテーマに楽しく元気の出るライティングを志す。天狼院公認ライター。
メディア出演:スマステーション(2015年),スーパーJチャンネル, BBCラジオ(2016年)におっさんレンタルメンバー
として出演

 
 
 
 
http://tenro-in.com/zemi/86808

 


2019-08-27 | Posted in 週刊READING LIFE vol.47

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