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週刊READING LIFE vol.85

聖書とわたし《週刊READING LIFE Vol.85 ちょっと変わった読書の作法》


記事:杉下真絹子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「明日のことを思いわずらうな。明日のことは、明日自身が思いわずらうであろう」
「神の臨在の中にこそ私たちが必要とする安全があるのです」
 
そんな聖書の言葉を引用しながら、彼女は自分のみならず周りの人々や困っている人々のために、尽力していた姿が忘れられない。
 
彼女の名前はMildred Lumiti(通称:ミリー)、ケニア国西部にあるカカメガの小さい村出身の40代のシングルマザー。ミリーは小さい頃から頭のいい子だったが、女性であるという理由、また金銭的な理由から中学校卒業せずに村から首都ナイロビにやって来てきた。
 
ミリーとはじめて出逢ったのは、当時私がケニアで仕事に従事していたときで、ちょうどその頃生後2ヶ月足らずの娘真優のベビーシッターを探していたことで、彼女が我が家に来たのだ。
 
ミリーはその頃アフリカ最大規模のスラムであるキベラスラムに次ぐカワングワレ・スラムに子供たち二人と住みながら、大音量の音楽が響くギュウギュウ詰めのミニバスに乗り、我が家に毎日通っていた。
 
そんな彼女のかばんの中にはいつも聖書が入っていた。
 
バリバリと音がなるような曲が流れるバスの移動中でも
娘のベビーシッティングの合間やランチ時間でも
そして、
ひどい雨漏りと雨音を立てるスラムにあるトタン屋根の家の中でも
 
彼女は聖書を手放さず、いつもパラパラとめくっていた。
 
随分年季のある聖書は、紙が茶色く焼けていて、何度もページを手で触って行き来したような形跡がわかる。
 
だからからか、彼女の英語はとても流暢で、使う単語も豊富で表現力も高かった。
若いときからユースリーダーになり、教会を盛り上げてきた。
 
実は、ザンビアで働いていた時に出逢った地域保健活動ボランテイアの地域のおじさん達もそうだった。彼らもアフリカの国は違えどザンビアの首都ルサカにあるスラムに住む住民ボランティアだった。そんな貧困層の彼らは、ミリーのように学校にまともに行けた人や安定した仕事に就いている人は少ない。
 
同じように、彼らは不思議と語彙力が高く、人前で何かを話すときも、おじけず、思わずウンウンとうなずけるような本質的な話ができる。
 
やっぱり敬虔なキリスト教徒であり、聖書は日常で読んでいた。
 
また、ミリーにしてもザンビアの保健ボランティアさんたちにしても、上述以外に共通して言えることは、自分や家族の生活維持も難しい状況の中、もっと苦しんでいる人たちのために尽力していたことだった。それに私はいつも感動・感激していた。
 
ミリーはケニア国内で様々な刑務所に行き、女性の受刑者たちが人間的な扱いを受け、また人間的な生活を送れるように物資を集め提供したりといつも奮闘していた。
 
また、ザンビアの保健ボランティアさんたちは、弱者の立場にある結核患者の治療のプロセスを支え、完治できるように支援をしていた。また、差別や偏見を取り除くための様々な活動なども展開していた。
 
ミリーにとって、バイブル(聖書)を読み込み深く理解することを通して、自分自身の生きる指針を見いだすだけでなく、今度はコミュニティリーダーとして人を導いてきた。
 
日常起こる人々の課題や難問を受け止め、理解し、さらに彼らに対して「より良く生きるために」どうガイダンスしていくのか、そのために聖書はさらに読み込まれるのである。
 
それこそいろんな立場の人に対してガイダンスする上で、様々な事例や比喩を使って行く必要がある。だから、もっとさらなる関連情報の収集が必要になってくる。
 
幸い、本が買えない低所得層にとって、情報が手軽に入るインターネットの時代は大きな味方と言える。情報や内容の精査は必要であるものの、無料でたくさんの情報がストックできる。
 
つまり、
【聖書】を読書をすることで、語彙力や表現力が格段に上がるだけでなく、聖書にある価値観を軸として、様々な分野と方向に知識を蓄積し、はたまた脳内ネットワークが広がっていくとも言える。
 
例えば、最初に挙げた聖書にもあるように「安全」の言葉が出てきた時、様々な事例を出して相手が理解しやすいように説明していくことが求められる。
 
聖書のみならず、おそらく【論語】などの古典的な経典もその役割を担うのであろう。昔の人が論語を読み、丸暗記していたのは一理あるのかもしれない。
 
そんな聖書はミリーにとって神様の一部なのだそうだ。
私は、キリスト教ではないので、聖書を読むことに思い入れはないが、【聖書という本】の影響力と発展性を感じざるを得ない。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
杉下真絹子(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

大阪生まれ、2児の母。
90年台後半より、アジア・アフリカ諸国で、地域保健/国際保健分野の専門家として国際協力事業に従事。娘は2歳までケニアで育つ。
その後方向転換を果たし、子連れで屋久島に移住。
【森林の中でウェルビーングする】をキーコンセプトに、活動を展開。
 
関西大学(法学部)卒、米国ピッツバーグ大学院(社会経済開発)、米国ジョンズホプキンス大学院(公衆衛生)修士号取得。

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2020-06-29 | Posted in 週刊READING LIFE vol.85

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