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週刊READING LIFE vol.131

書くことは最早身体の一部だから《週刊READING LIFE vol.131「WRITING HOLIC!〜私が書くのをやめられない理由〜」》


2021/06/07/公開
記事:HAYAMI(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
物を書いている人にとって、最も不名誉なことってなんだろう。
そう考えた時に最初に思いつくのは「模倣」ではないだろうか。
 
もし自分が書いた文章を、誰かがパクっていたことがわかったら、最初に湧き上がってくるのは怒りだろう。それも相当後味の悪い、激しい怒り。しかもその相手が近しい人物なら尚更だ。
 
不肖な私でも、過去にそんなことが何回かあった。その度にこう思う。
「パクるよりもパクられる方が、上でしょう?」と。

 

 

 

その日は、数年ぶりに上京する映画友さんと一緒に映画を観に行くことになっていた。
映画館の数や、上映されている映画の作品は、どうしても首都圏が多い。文化に格差があってはいけないとは思うが、ニーズが多い場所に文化も集まってしまうのは致し方ないことかもしれない。首都圏から少し離れた県に住む彼は映画がとても好きで、そして映画鑑賞の感想をブログにこまめに書いていた。彼の住む県には、いわゆるミニシアターはほぼなくシネコンばかりで、どこに行っても観られるような作品しか上映していない。
 
「メインの用事も終わったから、ご飯でもどうですか?」
「いいですね、お店なんとなく決めておきましたよ」
ランチをしながら話していた時だった。
「この後どうします?」
「せっかくこちらに出てこられたし、東京でしかかかっていない映画でも観に行きますか?」
「そうですね。何かいい映画ありますか?」
そう訊かれて私は渋谷のミニシアター系の作品を思いついた。その映画館では、独自に企画した自主映画祭みたいなものが年に数回開かれていて、ちょうどその時は期間中だった。
「いい機会だし、たまには映画祭の作品なんてどう?」
「ぜひお願いします!」
 
そんなわけでランチが終わって、そのまま私たちは映画館へ向かった。移動して映画館に着いて、映画祭の中のお目当ての作品が始まるタイミングがちょうど良かった。
 
選んだのはイギリス映画。一般公開はされないからこの映画館でしかかからない。ハリウッドでも活躍している俳優の作品でもあるので私は楽しみにしていた。鑑賞は無事に終わり、それぞれ帰途に着いた。
 
私はその映画のレビューをブログにUPした。映画の中に出てくる、とある動物がヒロインの心情とシンクロしていているところなんかはとても面白いと思ったのだ。そんな考察を書いた。
 
そこから数日後、一緒に映画を観た友達のブログに、その映画のことがUPされていた。
読みに行って驚いた。私が書いた、動物とヒロインとのシンクロのことをそっくりそのまま書いているじゃないか。明らかにこちらのブログを真似している。
 
(何だ、この人……)
 
ネットで知り合ったブロガーさんたちの中でも、特段仲がいいというわけでもなかった。やっぱり感性がなんとなく合わないからだ。それでもこちらにいらっしゃるというので、それじゃどこかでお会いしませんか? となっただけだ。それでもこうして堂々と真似されてしまうのは頭に来る。
 
よっぽど相手のブログのコメント欄に何か書いてやろうかと思ったけどやめておいた。代わりに思いっきり無難な、共感コメントを書いておいた。めちゃくちゃ腹を立てながら、コメントを書いている最中に思った。一応今回のことはなかったことにしてあげる、でもあなたのことは低く見るからね、と。

 

 

 

今回この記事を書くにあたって、久しく更新していない自分のブログを引っ張り出してみた。
最初は身の回りのことやパンのことを書いて、そのうち映画ブログにシフトしていったものだ。
仕事が忙しくなってしまい、観た映画のレビューをブログに書く時間が取れなくなってしまい、数年前から放置しているものである。
 
(こんなにびっしりと書いてたんだ……)
 
暇というかなんというか、ブログにこれだけのエネルギーを割いていたのかと改めて思う。その時から、自分の意見というものをちゃんと書きたいと思っていた。他の誰とも被らない私だけの見方があると。私だけの表現があるに違いないと思って書いていた。
 
それでも今読み返すと本当に恥ずかしくなってくる。なんせ、文章の形態が揃っていない。いわゆる「文体」というやつだ。そして映画の見方もどこか甘い。表現もありきたりだ。文章の最後に「(笑)」などという記述もたくさんあった。
 
(こんなんじゃ通用しないよねえ……)
 
実は映画ブログを一生懸命に書いていた頃、某サイトのライターに応募したことがあった。1回テストをしていただき、「もう1回文章を読みたいから、悪いけど2回目の映画レビュー出してくれませんか?」と言われて2回目も書いた。しかしそことはご縁がなかった。落ち込みながらも、何がいけなかったのかが全くわからなかった。ライターのトライアルなんて文章の講評はしてはくれないのが当たり前だけど、一人前に落ち込んでいた。

 

 

 

そしていつの間にか仕事に追われ、書くことから少しずつ遠ざかり、ブログも放置になってずいぶん経った頃に、ある書店との出会いがあった。
 
1週間びっしりと働いた金曜日の夕方、くたくたに疲れたその足で訪れたのは、天狼院書店という不思議な本屋だった。
 
「文章を書くゼミをやっている」ことを知って、しかもそれが意外と近くにあることに気が付いた。本屋さんだし、のぞいてみるか。ヘンなところだったら帰ればいいから。そう思いながら探し当てた書店は、ターミナル駅から15分も歩く、実に中途半端な場所にあった。
 
(こんなところでお客さん来るのかしら……)
 
全く余計な心配をしていたものだけど、訪れてみると中は本屋だった。しかし不思議なことに、その一角でスクリーンの調整をしていた。なんでもこれから夜にゼミがあるのだという。
 
(ゼミの準備にお邪魔みたいだから、店内見たらさっさと帰ろうっと)
 
そう思っていたのだけど、カウンターの上に置いてあった1枚のチラシに目が止まった。
 
『ライティング・ゼミ』
 
ライティングってことは、書くゼミ? 文章教室? なんだろうそれ。そんな気配を察した店員さんが声をかけてきた。
 
「今日は何かお探しですか?」
「ええ、友人がFacebookでここにいいね! を押していて、職場から近かったのでどんなところか見に来てみました」
「そうなんですね。本はお好きですか?」
「はい、読むのが好きです」
「ここは書店なんですけど、色々なゼミもやっているんです。今、手に取られた『ライティング・ゼミ』は『2,000字を最後まで読んでもらえる文章を目指そう』という講座なんです」
「そうなんですね。私、ブログは10年以上やっているんですけど、最近全然書けていなくて放置なんですよね」
 
そう話しながら、ある1つの想いがむくむくと湧いてくるのを感じていた。
私は、ちゃんと書きたいんじゃなかったのか。
誰とも被らない、自分だけの表現をしてみたかったのではなかったのか。
 
「……よかったら、書いてみませんか?」
 
そんな私の想いを察してか、声をかけてくれた店員さんはそう言った。その時どうして申し込もうと思ったのかはわからない。敢えて言うなら「天の声」なのだろうか。ここには何かチャンスがあるかもしれないと。もしやってみて変なところだったり、無理だったりしたら、1期受けてフェイドアウトすればいいじゃん。決してお安くはない金額を、その場で決断して決済するなんて私にしてはとても珍しいことだけど、とにかくあの日の私はゼミを申し込んだのだった。

 

 

 

そこから間もなく2年が過ぎようとしている。
結論から言えば、ゼミを受けてからの私の人生の方向は大きく変わった、としか言いようがないのだ。
 
最初は何をどう書いていいかわからず、ネタがない! もう無理! もう書けない! と、月曜日の23:59ギリギリにファイルをUPしていたライティング・ゼミも、気がつけばなんとなくクリアしてしまっていた。そしてライターズ倶楽部に入れていただいて1年以上経った。この間で一番大きかったことは自力でライターの仕事を勝ち取ったことだった。過去にライタートライアルで落とされていた自分でも、仕事が取れた。このことは大きな自信になった。自分で稼ぐ力って、本当につくんだなと。今まで雇われ人しかやってこなくて、誰かが敷いたレールの上を歩くだけだった私にとって、自分で何かを生み出すことは大いなる誇りになっている。
 
何をどう書いていいかわからない。それは書き始めはみんなが思うことかもしれない。しかしそれは「書いていくしか解決方法がない」のだ。メソッドをしっかり身体に入れ、書いてみる。それしか克服する方法はないのだ。
 
ゼミの中で「書くことは身体表現ですから」という話があった。この2年間で私が自分の身体表現としてどのくらい文体を身につけたのかはわからないけど、書けた時も書けなかった時も自分なりにもがいてきた。もがいてみないと脱出方法がわからないのが文章なのかもしれない。
 
そして、友達に真似されたあの時のことを振り返って思う。もちろん模倣する方がよくないに決まっているけど「真似されるだけのありきたりな文章だったから真似された」のではないかと思うのだ。もしも本当に身体表現として私が文章を書いていたら、第三者は「この文を自分のところに入れたらおかしくなるからやめておこう」と思うはずだ。今ならそう思える。
 
自分の身体の一部として文章を書くことほど難しいことはない。それは唯一無二になることだからだ。でも書くからには、例えそれがどんなにささやかなものであっても、そこを目指したいと思っている。あの人にしかあの文章は書けない、そう言われることはもしかしたらこの先ないのかもしれないけど、それでも目指すことは悪いことではないと思っている。私が書いていった結果、そう簡単には崩れそうにないライフワークができた。本当に嬉しいことだし、ライティングのメリットはこれに尽きると思うのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
HAYAMI(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

「誰ともかぶらない文章が書けるようになりたくて」2019年8月天狼院書店ライティング・ゼミに参加、2020年3月同ライターズ倶楽部参加。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

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2021-06-04 | Posted in 週刊READING LIFE vol.131

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