週刊READING LIFE vol.214

わたしのパリの歩き方《週刊READING LIFE Vol.214 もう一度、あの街を歩けるなら》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2023/5/8/公開
記事:山本三景(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
もう一度、あの街へ行けるのなら、わたしはパリを選ぶ。
 
フランス、それは、海外旅行で行ってみたい国ランキングがあると、常に上位になる国だ。
ちなみに、死ぬまでに行ってみたい国ランキングなんてものが、大手旅行会社の調査結果にあり、納得のラインナップになっている。
 
1位 イタリア
2位 フランス
3位 スイス
4位 スペイン
5位 ハワイ
 
わたしがこの中で行ったことがある国はフランスだ。
 
ハワイへ行ったことがある人は多いかもしれないが、ハワイも日本から7時間ぐらいかかるので、なかなかの距離だ。
ましてや、ヨーロッパとなると、飛行機の移動時間が15時間を超えるため、時間とお金に余裕がないとなかなか行けないのが現状である。
ヨーロッパなんて人生においてそう何度も簡単に行ける場所ではない……そう思う人も多いのではないだろうか。
 
「もう二度と行けないかも!」
 
なんて、行く前は思っていたが、実際のところ、フランスへは6回ほど行っている。
 
仕事で行ったの?
どうして何回も行くことになったの?
 
いやいや、答えは簡単。
ただ魅せられてしまったからだ。
 
そう、「もう一度行きたい」と、何度も思ってしまっただけの話である。
行こうと思えば、どこへだって行けてしまうのだ。
 
正直、3度目ぐらいからは、
 
「どこへ行くの?」
 
ときかれると、なんとなく答えにくいと思うようになってしまった。
行き先を伝えると、大体がこう言う。
 
「またフランス?」
 
ですよね……。
どうせ有休休暇を取るのであれば、行ったことのない国へ行く人のほう多いでしょう。
そりゃ、わたしだって他の国へ行くときだってあるさ。
 
でもね、あのパリの空気感が好きなんです。
 
「パリの街は犬のフンだらけで汚い」
「憧れを持ってパリへ行くと現実にやられる」
 
なんてことをよくきくが、こっちもそういうものだと思ってパリへ来ているので、実際のパリは想像していたよりは綺麗だ。
 
たとえ道が汚かったとしても、石造りの建物が並び、建物に統一感があるパリの街並みを見ると、少しぐらいの汚さは気にならなくなる。
全体的に白い建物が多いので、街全体の色素が薄いのも印象的だ。
朝、窓をあけると、まわりの建物が白く、冬であれば空気にも白さを感じる。
石畳にも風情があり、歴史的建造物と、まわりの建物の調和を重んじるため、建物の高さを統一することが定められている。
京都と似ている気がするのだ。
 
タイムスリップした感覚と、異世界に来た感覚を味わうことができて、歩くだけで楽しい。
古いものと新しいものを同時に肌で感じることができる街、それがわたしにとってはパリなのだ。
 
わたしが初めてパリへ行ったのは、20代の頃だった。
会社を休むのは忍びなく、休むとしても2日が限度だった。
3連休に2日有休を繋げて3泊5日の弾丸ツアーを練る。
3泊と行っても、移動時間を考えると、フルで動けるのは実質2日ぐらいだ。
そして残念なことに、名古屋からパリへの直行便がない。
羽田や成田、ヘルシンキ、仁川などの都市で乗り継ぎをしないといけないため、移動時間がさらにかかり、現地で滞在する時間は少ない。
 
きっとこんな遠い国には、もう二度と行けないだろう。
 
そんなふうに思っていたので、初めてのフランスは若かったこともあり、スケジュールを詰め込みまくった。
短期間でどれぐらい観光できるかが勝負だ。
もう二度と行けないと思うと、ありったけのフランスを自分の心に詰め込まなくてはいけない。
現在のやる気のない自分とは、対照的な旅行の仕方をしていた。
 
いやぁ、若いって素晴らしいね。
 
これは自分か? と思うほど、アグレッシブに動いていた。
一切の無駄がない。
 
凱旋門に登って、上からシャンゼリゼ大通りを眺めたいです!
 
じゃあ、パリへ着くのは夕方だから、着いたらすぐに凱旋門へ行きましょう。
高級ブランド店ものぞいちゃいましょうか。
もし買った場合は、悪い人に狙われないように、ブランドの袋には入れず、他の袋に入れましょう。
 
かの有名なルーヴル美術館は絶対行きたいです!
ドラクロワの作品がみたい! レオナルド・ダ・ヴィンチの作品もみたい!
 
ですよね!
よし、半日時間をとりましょう。
 
オルセー美術館も行きたいです!
印象派と言ったらオルセーでしょう!
 
よし、これも半日時間をとりましょう。
ルーヴルよりは早くまわりましょうか。
あ、エッフェル塔も行きましょうね。
 
オランジュリー美術館、ここもぜひ!
しかし、時間に余裕がない、どうしよう……。
 
ルーヴル、オルセー、オランジュリーと行きたいところですが、ときには何かを諦めることも必要です。
ここは残念ですが、あきらめましょう。
 
せっかくフランスへ来たのだから、パリだけでなくもう少し遠くへ足をのばしたくないですか?
だって、こんなチャンスはもう来ないかもしれないですよ?
フランスには世界遺産があるのをお忘れか。
 
モン・サン=ミッシェルの日帰りツアーがパリでも申し込むことができる。
これで丸っと1日は使ってしまうことになる。
しかし、世界遺産に行ける機会はなかなかない。
 
行きましょう! 1日をモン・サン=ミッシェルに捧げます!
 
左岸のシテ島にある、ノートルダム大聖堂にも行ってみたいです!
  
最終日に朝一で行って上まで登ってみましょう!
サン・ジェルマン・デ・プレ地区で買い物しましょう。
 
そして、フランスといったら、チョコレート。
チョコレートの買い物や、スーパーでお土産を買いましょう!
 
こんな感じで、友達と計画し、この超過密スケジュールをすべてこなしたのだった。
 
今はスマホさえあれば方向音痴のわたしでもGPSがどこへでも連れて行ってくれる便利な時代だが、初めてフランスへ行ったときは、まだガイドブックに頼っている頃だった。
『フィガロジャポン』という雑誌の旅行特集号が好きで、いまでもよくパリの特集をやっている。
この雑誌には、パリの最新のファッションの情報や、流行りの食べ物などの情報が細かく載っているので、パリへ行くときは必ず参考にしていた。
この雑誌に別冊でついている地図が使いやすく、地図だけ現地に持って行ったものだ。
 
最初のフランスが楽しかったので、それからフランス語を少しの間ではあるが習っていた。
そして、フランス語教室で出会った友達と何度か一緒にパリへ行くことになったというわけだ。
 
パリは、セーヌ川の南側のエリアを「左岸」という。
リヴ・ゴーシュという言葉をきいたことがある人もいるかもしれない。
これがまさしく左岸のことだ。
なぜ、左岸と言うのかというと、セーヌ川の流れが、東から西へ、地図の右から左へ流れているため、川の流れからみて、自分の右側が「右岸」で、左側が「左岸」ということだ。
右岸で迷ったら、セーヌ川があるほうが南、左岸で迷ったら、セーヌがあるほうが北というわけだ。
 
この左岸がわたしは好きだ。
ソルボンヌ大学のあるカルチェラタン、オデオンからサン・ジェルマン・デ・プレ界隈は、落ち着いていて治安がいい。
右岸には観光名所が集まっている。
派手でキラキラしているイメージがある。
有名なシャンゼリゼ大通り、凱旋門などがあり、パリの観光には外せないエリアだ。
ただし、観光客が多いということはスリも多いということだ。
なので、パリで泊るときは、左岸のホテルをとるようにしている。
もし、メトロのストライキがあったとしても、徒歩で観光できてしまうので便利なのだ。
 
何度か行っていると、ギッチギチのスケジュールで動くことはなくなる。
ベルサイユ宮殿も行ったし、クリュニー中世美術館も行った。
モンパルナスタワーも、モンマルトルも、シャルトル大聖堂もコンプリート。
 
最後にパリへ行ったのは5年前だが、そのときは、クリスマスシーズンでシャンゼリゼ大通りが素敵にライトアップされていた。
しかし、面倒くさくなってシャンゼリゼ大通りには行かず、アニメの主題歌を、YouTubeを見ながら歌うという、わざわざパリでやることではない時間の過ごし方をしてしまった。
その場はノリノリだったが、その後の後悔ったら……。
ふたりとも、「なにをやってたんだろう」と後悔した。
まぁ、それもまた楽しかったのだが。
 
そして、次にパリへ行く機会があったら、好きな服を着て行こうと思った。
防犯に気をつけるあまり、必然的に機能性を重視した格好になりがちだ。
別の友人に写真を見せたところ、性別も国籍もわからないと爆笑されてしまった。
 
花の都パリ。
もう一度、パリの街を歩けるのなら、もう少し素敵な格好で、颯爽と街を歩きたい。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
山本三景(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

2021年12月ライティング・ゼミに参加。2022年4月にREADING LIFE編集部ライターズ倶楽部に参加。
1000冊の漫画を持つ漫画好きな会社員。

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2023-05-03 | Posted in 週刊READING LIFE vol.214

関連記事