週刊READING LIFE vol.233

幹事を繰り返した理由はたった1人の女性のためでした(彼氏持ち)《週刊READING LIFE Vol.233 フリーテーマ》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2023/9/25/公開
記事:村人F (READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
千円札でパンパンになった財布を見る度に思います。
私はこんなに飲み会の幹事をするような人だったのかなあと。
 
考えてみれば9月の時点で今年6回目になっていました。
仕事の飲み会に加えてプライベートのオフ会。
その度にお金を皆さんから集めているので、気づいたら財布も千円札でいっぱいになるわけです。
 
しかし、元々はそういうことが好きな人間ではありませんでした。
お店探しは好きですけれど、誘うのが面倒でしたから。
そのため会社で命令された場合にしぶしぶやるような男でした。
 
そんな私が今年に入って何回も企画しているわけですから不思議なものです。
ただ、その動機は皆さんの交流の輪を広げたいといった立派なものではありません。
むしろ、大きな声では言えない類です。
 
1人の女性、しかも彼氏持ちの方と仲良くなりたい。
そんな酷い理由ですから。

 

 

 

彼女との出会いは、今年行われた会社の研修でした。
最初の自己紹介で私が言ったマイナーバンドに対して「私も大好きです」と反応をくれたことがキッカケです。
正直、その想定を1ミリもしていなかったので衝撃でした。
ただ少し前まで恋愛How to本の名著『LOVE理論』を読んでいたこともあり、なんとか連絡先を交換したのです。
 
そしてLINEのやり取りを始めたのですが、恐ろしいほどに趣味が合ったのです。
私が言った誰も知らないようなアーティストを全員知っていたのですから。
ハッキリ言ってチャンスだと思いました。
これまで女性と付き合ったことがない私にとって、毎日やり取りしてくれる上にここまで話していて楽しい方はいませんでしたから。
1人で勝手に盛り上がっていました。
 
しかし、やり取りを始めて1ヶ月後、彼氏がいることが判明するわけです。
とても落ち込みました。
ちょうど野球のWBCが行われている時期だったのでテレビで大谷翔平のホームランも見ていたのですが、全く心が晴れませんでした。
これほどまでに恋愛の神様を恨んだことはありません。
どうしてそんなことをするのかと酒を飲みながら枕を濡らしていました。
 
普通なら、ここで関係は終了するはずでしょう。
ただ、今回は特殊な状況でした。
彼女に「ハッキリ言って狙ってました」と正直に言ったところ「ごめんなさい! でもやり取りはとても楽しかったのでこれからも仲良くしてください!」と返されたのですから。
そんな回答をされてしまったら、これまで毎日続けていた会話を打ち切ることはできません。
私にとっても素敵な時間でしたから。
 
そんなこんなでやり取りが数ヶ月続いたあと、キッカケになったマイナーバンドのコンサートが始まりました。
このタイミングで彼女とランチを食べに行くことになったのです。
実はそれまでのLINEでのやり取りは文字ベースのみでしたから対面は始めてでした。
だから非常に楽しみにしていたのですが、あの時はその思いが強すぎて精神がどうにかしていたのでしょう。
もっと長い時間を過ごせないかと考えてしまったのです。
 
かといってランチに加えてディナーまで誘うのは流石に無理でした。
現実世界では「初めまして」だったので会話が持つか不安だったのと、そもそも彼氏持ちなのに夜まで誘うのはあまりにも非常識でしたから。
ただ、それでももっと仲良くなりたい。
そう思った私は、必死に思考を巡らせたのです。
 
ここで閃いたのが、オフ会の幹事をすることでした。
これならば複数人になりますから、口下手な私が話せなくなっても場が持ちます。
さらにイベントの種類も変わりますので、断られる可能性も低くなります。
 
ということで彼女に提案をしたところ「メッチャ行きたいです!」と無事OKを貰えました。
こうしてSNSのフォロワーの皆さんに声を掛け開いた飲み会が、最初に企画したものです。
結果的にこれが功を奏し、彼女ともっと仲良くなれました。
そして様々なイベントへ一緒に行くようになったのですが、この度にオフ会も同時に企画するようになりました。
色々な人と会話できる機会がとても楽しかったからです。
そうして気づいていたら、何回も幹事をするような人間になっていました。

 

 

 

このようにキッカケは「1人の彼氏持ちの女性と仲良くなりたい」という大変どうしようもない理由です。
だから、あまり人には言いたくありません。
 
ただ何回も開いたことで気づいたことがあります。
喜ばせようとした相手は1人だけだったのに、気づいたら大勢から感謝されていたことです。
彼女から「オフ会に参加する昔からの夢が叶った」という嬉しい感想をいただきましたが、そういった声を参加者全員から貰えたのです。
 
考えてみれば、これは当然のことです。
色々な人と知り合い、語り合いたい。
皆さんがこの思いを潜在的に抱えているはずですから。
しかも好きな趣味の話ならば、なおさらです。
 
ただ、そうは思っても実行するのは難しいでしょう。
幹事の仕事は面倒ですから。
お店のチョイスだけでなく、参加者の募集までしなければなりません。
このハードルを乗り越えて場を設けるなど並大抵の労力では行えないものです。
実際、以前の私には無理だったと思います。
 
しかし今は普通に企画できるわけです。
この理由は喜ばせる範囲を狭めたことにあるように思います。
 
飲み会を開く場合は、ある程度の人数を集めないといけません。
オフ会ならSNSのフォロワーなど個別に誘う必要もあるでしょう。
そして全員に満足してもらおうと考えると、途方もない難題に見えてしまいます。
だからこそ幹事が面倒な作業になるのです。
そのためやりたくても開けないという状況に皆さんが陥っているのでしょう。
 
ただ私がオフ会を開いた理由は、たった1人のためでした。
彼女を全力で喜ばせようとしただけでした。
そうなると途方もない仕事に見えた人を誘うことやお店選びもスムーズに行えるようになりました。
これは要因こそ範囲を絞ったことなのです。
 
最初から大勢を集めようと思ったら、練る企画も相当凝った内容にしなければなりません。
しかし喜ばせたい相手が1人だけなら、なんとか実施できそうです。
そして、この場を全力で設定すれば、オフ会に拡大することは容易になります。
参加者を追加募集するだけで済みますから。
このプロセスを自然と踏めたからこそ、幹事という面倒な仕事もスムーズに行えたのです。
 
そして、1度この楽しさを知ったら後は簡単でした。
オフ会は何回だって企画したくなるほど魅力的なイベントでしたから。
こうしてノウハウを培ったことが、千円札でパンパンにする幹事ならではの財布を作りだしたのです。

 

 

 

イベントを企画する時は、大勢のターゲットに向けて考えるのが普通です。
集客をするためには、広い範囲で見渡すべきですから。
しかし、そのために具体的な相手を想像できずに苦しむケースもよくあることです。
幹事をやりたくないのも、同じ理由からでしょう。
 
ただ、たった1人。
最も喜ばせたい相手のことだけを考える。
これでも、結構よい会が開けるのです。
 
なぜなら、その方と同じ思いを抱えている人が、たくさんいるからです。
彼女が同じバンドを愛している以上、ファンにも似たような好みを持つ方がいることは必然です。
だから私の「彼女に素敵な時間を過ごしてもらいたい」という動機も、その意味では有効になります。
毎日LINEをやり取りするくらいですから、具体例は豊富です。
そのため選ぶべき店のジャンルもある程度は絞れます。
さらに「カラオケも好きだから一緒に開こう」という追加要素も加えやすくなるのです。
結果たった1人のために調整したにもかかわらず、同じような方々に応用できる型ができます。
 
そして実際に開いてみると、この効果は絶大でした。
33年間生きてきましたが、ここまで仲良くなった人の多い年は生まれて初めてかもしれません。
学生時代すら、ここまで交流の輪が広がることはありませんでした。
これは皆さんがやりたくでもできなかった幹事という大仕事を何度もやり遂げたご褒美なのでしょう。
ここまで楽しい1年は私の人生史上ありません。
 
この素晴らしい時間を演出してくれたのは、オフ会に参加してくれた皆さんです。
私自身ファン同士で語り合いたいとずっと思っていたので、非常に楽しめました。
幹事をする度にいただける「企画していただきありがとうございます」の声ほど嬉しいものはありません。
 
そして、キッカケになったのが彼女でした。
もう仲良くなろうとした理由がどうでもよくなるほど親友だと思っています。
これも彼女のために全力で喜ばせようとした結果、多くの人と知り合い笑顔を貰えたことによるものです。
この出会いをくれた神様に大感謝です。
 
もしかしたら運命の出会いも、こうした会を繰り返した先にあるのかもしれません。
こうした幹事特権があってもバチは当たらないでしょう。
この期待を持ちつつ、これからもプライベートや仕事を問わず様々な企画をしていきたいです。
彼女のような素敵な方と、もっと知り合いたいですから。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
村人F(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

名乗る名前などありません。私などしょせん村人のF番目でございます。
秋田出身だが、茨城、立川と数年ごとに居住地が変わり、現在は名古屋在住。
読売巨人軍とSound Horizonをこよなく愛する。
IT企業に勤務。応用情報技術者試験、合格。
2022年1月から、天狼院書店ライターズ倶楽部所属。

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2023-09-20 | Posted in 週刊READING LIFE vol.233

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