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偉人ゆかりの宿を巡る旅

太宰治ゆかりの宿~太宰はこの地で何を感じたのか~(群馬県利根郡 旅館たにがわ)《偉人ゆかりの宿を巡る旅》


記事:中野ヤスイチ(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
今度の旅は、「鶴が舞っている形をした県と言われている、群馬県に行こう!」と決めた。
 
群馬県といえば、関東でも有数の温泉地であり、伊香保温泉、草津温泉、四万温泉など、温泉好きにはたまらない県である。
 
さらに、湿原の尾瀬あり、赤城山ありとハイキングや登山をする人も好きな県ではないだろうか。
 
その中でも、今回の舞台は谷川岳が一望できる水上温泉郷を訪れた。
 
「この地にゆかりのある有名な文豪は?」
 
そう、今なお、「走れメロス」、「人間失格」などこの世に残した作品で多くの女性の心を虜にしてしまう太宰治である。本名は、津島修治。
 
太宰治はこの地で、後に「人間失格」にもつながるとされる「創世紀」や「姥捨」を執筆されたとされている。ここに来るきっかけは、川端康成の勧めによるものらしい。
 
その太宰治とゆかりのある宿が今回の「偉人ゆかりの宿」を巡る旅の舞台、「旅館たにがわ」。
 

 
寒さがまだ身体に染みながらも、そろそろ春の匂いが感じられる日の日が暮れる前に、今回は息子と母親と訪れた。
正面玄関から中に入ると、仲居さんが笑顔で迎えてくれて、綺麗に一列に並べられたスリッパに履き替えて、チェックインの為にラウンジに通されて、くつろいでいるとヤーコン茶と和菓子を頂いた。
(※現在はコロナウイルス感染予防対策により、ラウンジでの提供はおこなっておらず、客室の冷蔵庫に和菓子のみが入っている)
 

 
ヤーコン茶の暖かさと味わいによって、旅の疲れが取れていくのがわかった。息子は和菓子を口いっぱいに入れて「美味しいね」と言いながら満面の笑みがこぼれていた。
 
チェックインを終えて、少しくつろいだ後に、仲居さんと一緒に部屋へ向う途中、
ラウンジを抜けると浴衣や歯ブラシなど、個人に合わせた品を選べるようになっており、
ここまで行きと届いていることに驚かされながら、一番驚いたのは、子供用に「カエルの形をした歯ブラシ」を用意してくれたことだった。
 
それをもらった息子は、大喜びで部屋に向かった。
 

 
部屋に入ると、息子が走り回れるほど十分な広さがあり、都会の雑音を忘れさせてくれるほど、緩やかな時の流れを感じさせてくれた。
 
仲居さんから、食事の時間などを教えてもらい、部屋で少しくつろいだ後、早速、館内を散策することにした。
 
なにせ、今回の旅の目的でもある太宰治のミニギャラリーがこの宿にはある。
 
ギャラリーに入った瞬間、まさに異空間が広がっていた。昭和のロマン広がる部屋になっており、太宰にまつわる品を見ながら、ハーブティーを飲み、ゆっくりと過ごすことができる。
 
太宰が執筆したとされる旅館はすでに、現在はなく、その当時、太宰が宿泊していた部屋が再現されており、ゆかりの品々が飾られている。
 
すべてを直接触れることはできないが、一度見るだけでも、太宰のファンであれば、間違いなく、多くのことを感じるに違いない。
 
僕は一つ一つの品を見て、感じたのはどうやったらこんなに綺麗に過去の品を残しておけるのかということだった。特に当時の机は多くの事を語りかけてきてくれているように感じる。今も愛され続ける太宰の作品に繋がりを感じずにはいられない。
 
 
(ホームページ写真)
 
その余韻を楽しみつつ、息子が温泉に行きたがっていたので、温泉に行くことにした。
温泉と行っても、露天風呂ではない、足湯である。それも、石畳になっていて、足のツボを刺激してくれるように歩行できるようになっている。まさに、この宿に訪れた人を足から休ませてくれる。
 
まるで、草履を履いていた時代、宿について足を洗ってもらっているような感覚を味わいながら、足は温かい温泉に浸り、山から吹いてくる風と緩やかな日差しを感じながら、時間を忘れさせてくる。
 

(ホームページ写真)
 
その後、部屋にもう一度もどって、今度は浴衣に着替えて、この宿の温泉に入りに行くことにした。
 
いつも一緒に入る息子は、「今回はお父さんじゃなくて、おばあちゃんと入る」と言って、一緒には入ってくれず、一人で入ることになった。
 
温泉の入り口から脱衣所を抜けて、扉を開けた瞬間に、ヒノキのいい香りが鼻を突き抜けてくるのを感じた。さらに、この温泉の作りが、ヒノキをふんだんに使った造りになっており、幕末の時代にタイムスリップしたような感覚に襲われた。
 
 
(ホームページ写真)
 
お湯の温度は少し熱めで、身体の奥の方に溜まっている疲れが表に出てきて、取れてゆくのを感じ、目を閉じて、入るだけで、普段の生活は忘れてしまった。
 
ヒノキの香りがする温泉を抜けると露天風呂になっており、これもまた岩風呂で、外の自然の風景や少し肌寒い気温を感じながら温泉に浸かることができた。
 
ついつい、いつもなら、息子と一緒に温泉に入いるのに、今回は一人だったからか、心が穏やかになり、家族がいることの温かみを感じた。
 
少し早かったのか、温泉の外で美味しい水を飲んで待っていると、より元気になった息子と母親が出てきた。
 
なんとなく、二人もこの温泉のお陰で、より疲れが取れたような穏やかな表情をしているように見えた。
 
ちょうど良い時間になり、夕食を食べに広間に向かった。その広間に向かう途中から美味しそうな匂いが廊下中に広まっていた。
 
広間について、席に通された時に驚いたのは、自分の料理だけじゃなくて、息子用の料理が用意されていることだった。
 
その料理を見た瞬間、息子はこれだよと言いながら、一生懸命に食事に取り掛かっていた。
「料理、美味しいね」と言いながら嬉しそうに食べている息子の表情をみながら、目の前にある料理を食べ始めた。
 
初めて口にしたのが、食前酒、この宿は食前酒に自家製の野草酒を用意してくれており、口に入れた瞬間、野草の香りが口中に広がり、浄化されている気分になってから、一品一品の食事を口に入れていった。
 
 
 
上州牛の好き鍋も、肉の味が口中に広がり、おいしさが溢れて、自然の恵みを身体に取り入れる喜びを噛み締めていると、その後に出て来たのが、岩魚をこだわりの二度揚げした唐揚げだった。
 
これは絶品で残す所が見当たらないくらい、綺麗な水にすむ川魚の旨味を味わい尽くすことができた。
さらに、母は唐揚げでなく塩焼きを頼んでくれた為、塩焼きも食べることができ、一度に二度美味しいとはまさにこの事だなと思いながら、家族と一緒に幸せな時間を過ごすことができた。
 
食事を終えた後、館内をぶらぶらした後に、リラックスルームのマッサージ機で身体を軽く解した後、部屋に戻ったら、綺麗に敷かれた布団が置かれていて、これぞ旅館の楽しみと思い、川の字に並べられた布団に入った瞬間に気がついたら、朝になっていた。
 
こんなにゆっくり休めたのは久しぶりで、都会の音とは違う、自然の織りなす音のお陰だと思った。
 
朝、起きて朝風呂へ入りに向かった。今回も息子と一緒に入れなかったが、温度が高い為、朝の目覚めにも最適でとても気持ちの良い朝を迎えることができた。
 
少し館内を歩いてロビーへ向かうと、入り口に入ってすぐ左にある囲炉裏に「舞茸のお味噌汁」が準備されていた。他のお客さんが食べている姿をみて、食べたくなり、口に入れた瞬間、心も身体も温まった。
 
その後、広間に向かって、朝食を食べることに。広間に着いて、驚いたのは夜には見えなかった少し雪を頂上に被った谷川岳の綺麗な姿だった。
 
その格別な景色を見ながら、朝食を食べていると、嬉しいことに朝食にも群馬県を代表する魚である鮎を出してくれた。
山と川の恵みがいっぱいの朝食を食べて、お腹がいっぱいになったところで、外へ散歩に出かけることにした。
 
もちろん、目的は太宰の記念碑である。記念碑は旅館の駐車場にある。
 

 
この記念碑を見ながら、太宰はこの地で何を思いながら執筆していたのか、その答えは太宰本人しかわからない。
 
ただ、僕が感じたのは、豊かな自然と共に暮らす、温かみのある人々と触れる喜びだった。
もしかしたら、太宰も同じような人間の温かみを感じていたのではないだろうか。
 
少し旅館の周りを散歩しているだけで、すれ違った人達が気軽に挨拶してくれる。
ここには、何処か忘れてしまった古き良き時代の風景が残っているに違いない。
 
宿に戻ってチェックアウトをしていると、宿の中でわさびを栽培しているのが目に入った。
わさびを育てる事ができるくらい綺麗な水が流れているのだと思っていると、後から、「この中に、小さな人形が隠されているので、是非探してみてください」と旅館の方に教えてもらった。
 
息子と一緒になって、すべての人形を見つけ終えた時、すべてのチェックアウトを終えて、この宿を後にした。
 
最後の最後まで驚きと楽しみを味わせてくる宿の余韻に浸り、今度は秋の紅葉が綺麗な時期に、今回は入れなかった貸し切り風呂に入りに来たいなと思いながら、宿を後にした。
 
 
 
 
▼今回のお宿

【旅館たにがわ】
公式ホームページ:http://www.ryokan-tanigawa.com
住所:群馬県利根郡みなかみ町谷川524-1
電話番号:0278-72-2468

❏ライタープロフィール
中野ヤスイチ(READING LIFE編集部公認ライター)

島根県生まれ、東京都在住、会社員、奈良先端科学技術大学院大学卒業。父親の仕事の影響もあり、今までに全国7箇所以上で暮らした経験がある。現在は、理想の働き方と生活を実現すべく、コーチングとライティングを勉強中。休みの日を使って、歴史ある温泉旅館に泊まりに行く事が、家族の楽しみになっている。

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2020-10-19 | Posted in 偉人ゆかりの宿を巡る旅

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