ライティング・ゼミ

「カット失敗でも言えなかった私が50才過ぎて初めて美容師に物申す


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

2025/10/16 公開

記事 :maruha(ライティング・ゼミ11月コース)

 

 

美容院でカット終了後、合わせ鏡で「後ろこんな感じです! どうですか?」とドヤ顔の美容師を前に、文句言える人ってどれくらいいるのだろうか?

 

少なくとも私は、一度も言えたことはない。

なんか違う……と思っても「短くなりましたね」と当たり前のことを言って茶を濁すことしかできない。

 

なぜ私は美容院で意思表示ができないのか? 理由はたくさんある。

 

  1. 相手が傷つかないか、気を使う
  2. 「なんか違う」を言語化できない
  3. これが、この美容師の限界なのかもしれない
  4. ワックスなどセットでごまかされていて判断できない

 

特に厄介なのが「ワックスでごまかしパターン」だ。

家に帰って髪を洗い、一晩寝て起きた瞬間「なんじゃこりゃ!」と失敗に気づく。ヘアセット後の確認で「いいですね」とか答えてた自分に蹴りを入れたくなる。

 

 

私は、子どもの頃からずっとショートヘアだ。自分に合うと思ってるし、何よりラクだ。理想は「頭の形が美しく見える丸みショート」。毎回、なりたいヘアスタイルの画像を持参して行く。

 

しかし、私だけなのかショートヘアあるあるなのか……

「同じように頼んでいるのに、毎回仕上がりが違う」ということが起こる。

 

初回はカウンセリングも施術も丁寧で、「ここは当たりだ!」と気に入るのに、2回目・3回目になると徐々に雑になっていく。

 

「常連扱いされるほどクオリティが落ちる」という謎現象である。

なんとか改善しようと、説明を細かくしてみたり、画像を増やしてみたりした。でも一度落ちたクオリティはなぜか戻らない。

結局、また別の美容院を探す羽目になる。

 

カット料金だって安くはない。

多少イメージが違ったくらいならしょうがないな、と思えるが盛大に失敗されることもある。

 

ある時、「カット終わりましたよ〜」と言われて眼鏡をかけて鏡を見ると、そこにいたのは

どう見ても『101回目のプロポーズ』時代の武田鉄矢だった。

 

ぐっとこらえて次は、もっと短めでオーダーしてみようと試みるが、ぱつーんと切られて黒電話。そんな時ですら「直してください」とは言えない。

 

だけど、鏡を見るたび怒りが湧いてくる。

なんで5,500円払って武田鉄矢になってんの?

雑でも文句言わない人と思われてる?

 

言えなかった不満や悔しさが、自分の中でマグマのように溜まっていく。

それでも、文句を言うとクレーマー扱いされるんじゃないか? と思って涙をのんでいた。

 

 

以前、カウンセラーをしている知人と話をしていた時、「クレーマーになりたくないから、お店とかでイヤな事があっても何も言えないんだよねー」と言ったら、目から鱗の言葉をもらった。

 

「クレーマーって、相手の都合を考えずに一方的に自分の要望を通そうとする人の事でしょ。でも、結果に不満があった時に「どこまで直せますか?」って相談することは“交渉”だから、クレームじゃないよ。相手もお金もらってるプロなんだから」

 

この言葉に、心のどこかがパカッと開いた。

私は「不服申し立て=クレーム」と思い込んでいた。でも実際は、互いにすり合わせるための話し合いであれば、それは交渉……

 

なんでそんなことに気がつかなかったんだろう? と首をかしげるほど納得した。

 

そして先日、再び事件は起こった。

最近行くようになった美容院での事。

前回担当の美容師が、ベテランでコミュ強、カットもとても良かったのてリピートした。が、今回は新人さんに当たった。

 

頑張っているのはわかるし否定するつもりはない。でも手元が危なっかしく、カットも恐る恐る。「素人だけど髪の毛切るの好きな妹」レベルの空気が漂っていた。

 

終始無言の重たい空気の中、合わせ鏡で「いかがですか?」と言ってきた時、「えっ、これで終わり?」と正直思った。元の伸びきった状態とほとんど変わってない。

 

知人の言葉通り「交渉をしてみよう」と思い立ち、「もう少し軽くできますか?」と勇気を出して伝えたが、「軽くすると浮いちゃうんで……」と、もごもご返され終了。

 

家に帰ってよくよく確認したが、案の定仕上がりがひどい。今切ったばかりなのに髪がぞろぞろとハネている。

 

5,500円が無駄になった? としばらく落ち込んだが、「相談と交渉はしてもいい」というアドバイスをもう一度信じて、思いきって美容院に電話した。それでダメなら諦めよう。

 

私は、前回担当の“ベテランコミュ強美容師”を電話で呼び出してもらい、事情を説明した。そして「できればあなたに切り直ししてほしいんだけど、難しいですか?」と聞いてみた。

 

すると彼女は明るい声で、

 

「全然いいですよ〜!」

「切り直し、ほんっとよくある事なので気にしないでくださいね!」

と、罪悪感が吹き飛ぶテンションで返してくれた。

 

指定された時間に行くと、新人のカットを見て「これは確かに……おっしゃる通りですね」と素直に謝罪し、丁寧に整えてくれた。仕上がりは見違えるほど良く、一気に安堵した。

 

「言ってもらった方が、こちらも直せてありがたいんですよ〜」

そんな言葉までかけてもらい、「ああ、ちゃんと交渉してよかった」と心から思った。

 

もちろん、美容師によっては「直して」の言葉にムッとする人もいるかもしれない。でも、最初から「クレーマーと思われる」と怯えて黙る必要はなかったのだ。

 

最後に、カウンセラーの知人が教えてくれた交渉のコツを一つ。

「話が通じそうな人を通す」

確かに、これを実践したら驚くほどスムーズだった。

 

50歳を過ぎても、まだ私は社会での立ち回りを学んでいる途中なのだと、しみじみ思った出来事だった。

<終わり>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2025-11-20 | Posted in ライティング・ゼミ

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