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レンタル人間図鑑

おっさんがおっさんを借りてみた その5 —東京藝大卒 歌うゲイのおっさん— 《レンタル人間図鑑》


記事:射手座右聴き (天狼院公認ライター)

何歳からが、「おっさん」ですか?


 
 
あなたは何歳からがおっさんだと思いますか。「おっさん 何歳から」で検索すると、
40とか、42歳などというアンケート結果を見つけることができます。
1時間1000円でおっさんを借りられるwebサービス「おっさんレンタル」の場合は、33歳以上であることが加入の条件となっています。
ところが、一人だけ特例のメンバーがいます。32歳でありながら、おっさんレンタルの人気メンバー
である「東京藝大卒 歌うゲイのおっさん」です。そもそも32歳は、おっさんなのか。名前の中にある
たくさんのキーワード。どこからどう聴いたらいいのか。今日は少し緊張しながら、インタビューしてみます。
 

 
 

上野は、桜満開


 
̶こんにちは。「東京藝大卒 歌うゲイのおっさん」なんとお呼びしましょうか。 本名の「河野さん」てお呼びしていいですか。
 
河野さん(以下 河):はい。大丈夫です。
 
―あの。天気が微妙なので、先に写真撮影していいですか?
 
河:そうですね。せっかくですし。
 
―ですね。今日は桜の下で撮りたいと思っていました。
 
河:いい場所がありますから、行きましょうか。
 
―ありがとうございます。上野はあまりわからなくて。
 
河:母校の周りですから、お任せください。
 
―そうでした。藝大は上野でしたね。
 
河:はい。今でもこのあたりはよく来るんですよ。
 
―心強いです。今日の上野は最高のロケーションですが、人が多いので、どこでお話を聞こうかと思っていたんです。
 
河:大丈夫です。オススメの場所はたくさんあります。
 
―では、場所はお任せします。そういえば、今夜お花見するって、ツイッターに書いてらっしゃいましたね。
 
河:はい。今までにおっさんレンタルでぼくを頼って下さった方や、ゲイやレズビアンの友人など、いろんな人が来ます。「当事者どうしをつなごう」という目論見もあります。
 
―当事者どうしをつなぐ、と言いますと?
 
河:同じような境遇だったり、同じようなモヤモヤを抱えた人どうしをつなぐ、ということです。世の中いろんな悩みがあると思いますが、いわゆる当事者どうしってなかなかつながる場が少なかったり、欲しい情報にアクセスしにくい場合が多いと思います。でも、レンタル活動を通じてつながった人どうしを、ぼくがつなげちゃえばいいじゃん、とここ最近は強く感じているんですよ。
 
―それは面白い試みですね。詳しく聞く前に、このへんで写真撮りましょうか。
 
河:はい。こんな感じですか?
 
ーありがとうございます。
 

 
―話を戻して、先ほどの当事者同士をつなぐ、というお話ですが、河野さんがハブになれるってことでしょうか。
 
河:そうですね。僕自身、特に10代の頃は生きづらさを少なからず感じていました。
 
―生きづらさ、そのあたりはお伺いしても大丈夫ですか?
 
河:はい。男だけど男が好きだという自覚は幼少期からあったんですが、母が信仰する宗教が同性愛NGだったので、自分をどう肯定すれば良いか分からなくて生きるのがとても難しかったです
 
―そうだったのですね。転機になったというか、自分に OK を出せるようになった出来事は、
何かあったんですか。
 
河:まずは、東京藝大に入れたことでしょうか。でも、現役で藝大に入ったわけではなくて。
 
―そうなんですね。
 
河:一度、ほかの大学に行って、そこを辞めて入り直したんですよ。
 
―音楽への強い気持ち(河野さんは声楽科出身)が実って、それが自信につながったのでしょうか。
 
河:自分で決めた大きな目標を達成できたことが、自己肯定感を高めてくれたとは思います。生きづらさやコンプレックスなどを抱えている人が、それを乗り越えたり自分を受け入れることができた時、他者への共感や寄り添いが生まれると思うんです。ぼくが誰かのハブになれるかも知れないというのは、
そういう想いから来ているのかも知れません
 
―藝大に入ったことで、自分に自信を持つことができるようになり、
人生が大きく変わり始めたんですね。なるほど。写真も撮れたので、立ち話もなんですし、
どこか、お茶しながら話せるところありますか?
 
河:はい。そしたら、藝大行っちゃいましょう。
 
―なんと。私、藝大初めてなので、テンションあがります。嬉しいです。
 
河:そうですか。
 
―建物も素敵なので、写真撮りながら、向かいましょう。
 
河:はい。その後で学食に行きましょう。
 
―いいですね。案内よろしくお願いします。
 

 

きっかけは、1日50円の東大生


 
―そもそも、河野さんは、どうし ておっさんレンタルを始めようと思ったのですか。
 
河:30歳のときにきっかけがあったんですよ。
 
―えー。30歳って、全然おっさんじゃないですよね?
 
河:そうですね。そもそも僕は、おっさんレンタルを何かで見て始めようと思ったわけじゃないんですよ。
 
―どういうことですか?
 
河:1日を50円で売る東大生に、興味を持ったんです。
 
―あー、なんとなく聞いたことあります。
 
河:彼をメディアで見て、ニュースの記事を読んで、とても興味を持ちました。
 
―どんなところに興味を持ったのですか。
 
河:普通に暮らしていたら出会えないような多種多様な人たちと出会えるんじゃないか、というところと、自分のスキルを持て余すことなく誰かのために役立てられるかも知れない、というところです。
 


 
―具体的にどんなレンタルが多いのですか。
 
河:まず、やはりボイストレーニングは多いです。
 
―ボイトレはどんな感じなのですか。
 
河:ガチの声楽のレッスンもありますし、カラオケ上達のための気軽なレッスンもあります。
声楽の道から離れてしまった方がまた復帰するためのレッスンもあったり。
 
どんなに教えるノウハウがあっても実践しなければ自分も成長できないので、
ほとんど修行のようなつもりでやっている部分が大きいです。
 
ープロのレッスンをマンツーマンで1時間 1000 円で受けられるとしたら、きっと満足度も高いんじゃないでしょうか。ほかには、どんなレンタルがありますか。
 
河:女性からの何気ない相談事も多いですし、いわゆるセクシュアルマイノリティとされる方からの
ご相談も多いです。以前からゲイの一当事者として色々な社会的な活動などしてはいましたが、
レンタルを始めてから、個別対応の大切さをあらためて感じています
 
―個別対応が大切、と思ったのはどうしてですか。
 
河:はい。最近だとセクシュアルマイノリティの人をLGBTという言葉を使ったりしてつい一括りにしてしまいますが、一人一人置かれている状況も、考え方も違います。同じゲイでも本当に色々な人が
います。目の前の人が今どんなことに困っていて、自分には何ができるのか。解決は簡単でなくても、まずは気軽にモヤモヤを吐き出せる場を提供できないだろうか。そんなことを考えながら、レンタルを
続けています。それから、LGBTも大変かも知れないけど、LGBTじゃない人も困っている方は
たくさんいて、みんな大変なのです。そんなことにも気付かせてもらえました。
 
―今後もレンタルは続けていかれますか?
 
河:なんとなく、ですが、とりあえず5年は続けようと思っています。
―5年というのは?
 
河:5年続けたら、世の中の大体の思い煩いを知ることができるんじゃないかな、と漠然と
思い描いています。いろんな人をつないだり、声を集めたりしているうちに、5年なんかあっという間な気もしています。この2年も本当にあっという間でした。
 
―なるほど。やりたいことがはっきりしていますね。
 
河:レンタルを通して、気軽にアートを楽しめる世の中になるためのヒントを見つけられないか、
とも思っています。自分も含めて藝大生や卒業生の中には、スキルはあるのにそれを活かす場と
巡り会えない人がたくさんいると思います。そういう人たちに、「レンタルって方法はどう?」と提案したいです。それから、地方への押しかけレンタルにも力を入れていきたいです。
 
―地方への押しかけレンタルというのは?
河:レンタルに来てもらうのではなく、呼ばれても招かれてもいないのに
こちらから各地にレンタルされに行く、というあり方も面白いのではと思うんです。
今は愛知県でのご縁がどんどん広がっています。
5月には初めて沖縄にもいきますし、本業で定期的に行っている徳島でのレンタルも
ジワリと需要があります。
 
―新しいレンタルのあり方が広がりますね。私も頑張らなきゃ。今日は、ありがとうございました。ではまた。
 
河:はい。あのー。
 
―え?
 
河:あのー。
 
―あ、レンタル料、すみません。失礼しました。
 
 
情熱と目標を聴いているだけで熱くなり、あやうくレンタル料のお支払いを忘れそうになりました。 役に立ちたい、という想いをこれほど強く語るおっさんは、見たことがなかったです。 歌唱指導、
セクシュアルマイノリティの方へのサポート、そしてレンタルの全国行脚、 と止まることを知らない
「東京藝大卒 歌うゲイのおっさん」でも、32歳っておっさんなのかなぁ。
おっさんかどうか、よりも、レンタルへの熱いが伝わってきました。
あなたもいつか、この人を借りる日が来るかもしれません。 いや、来ないかもしれません。
 
 

❏レンタル人間データ No.5


♪゚゚+.・.。*゚♪゚゚+.・.。*゚ みなさん初めまして+.・.。*゚♪゚゚+.・.。*゚♪

歌うゲイのおっさん、河野陽介です。

おっさん、って呼ばれるのにはちょっと抵抗がありますが(笑)おっさんレンタルはじめました。

東京藝術大学声楽科卒業後、同大学院修士課程に進む。

高速バス特急かしま号で、地元茨城県と都内を行き来しながら、歌を歌ったり教えたりを生業にしています。

たまにラジオのパーソナリティ。

そして、ゲイであることを公言して、LGBT含む性的マイノリティのための活動も様々に展開しています。

※LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を取った略称。詳しくはググってね♡

おっさんレンタルを通して、音楽の楽しさや歌うことの面白さ、多様な性のあり方や考え方について、たくさんの方と共有できたらいいなと思っています。

1人で悩みを抱えず、美味しいものを食べたり、音楽に癒されたりしながら、みんなで一緒にハッピーな時間を過ごしましょう!

 

❏ライタープロフィール
射手座右聴き (天狼院公認ライター)
東京生まれ静岡育ち。バツイチ独身。
大学卒業後、広告会社でCM制作に携わる。40代半ばで、フリーのクリエイティブディレクターに。退職時のキャリア相談をきっかけに、中高年男性の人生転換期に大きな関心を持つ。本業の合間に、1時間1000円で自分を貸し出す「おっさんレンタル」に登録。4年で300人ほどの相談や依頼を受ける。同じ時期に、某有名WEBライターのイベントでのDJをきっかけにWEBライティングに興味を持ち、天狼院書店ライティングゼミの門を叩く。「人生100年時代の折り返し地点をどう生きるか」 「普通のおっさんが、世間から疎まれずに生きていくにはどうするか」 をメインテーマに楽しく元気の出るライティングを志す。天狼院公認ライター。
メディア出演:スマステーション(2015年),スーパーJチャンネル, BBCラジオ(2016年)におっさんレンタルメンバー
として出演

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2019-04-08 | Posted in レンタル人間図鑑

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