天狼院通信(Web READING LIFE)

【所信表明】天狼院書店のオーナーである僕が「東京天狼院」の店長に就任する理由《天狼院通信》


 

記事:三浦崇典(天狼院書店店主)

 

いつも天狼院書店をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
天狼院書店店主の三浦でございます。

先日、辞令を発令いたしまして、僕は11月1日付けで、天狼院書店「東京天狼院」店長に就任することになりました。

天狼院書店「東京天狼院」のみならず、

天狼院書店「池袋駅前店」(WACCA)
天狼院書店「Esola池袋店」
スタジオ天狼院

の店長も合わせて兼任することにいたしました。
東京の全店舗の店長を兼任するということです。

なぜ、社長である僕が、店舗の責任者も兼任するのか?

その理由は、単純明快です。

やりたかったからです。

本来ならば、社長が出しゃばるのは、スタッフの成長を妨げる要因になり、好ましいことではないでしょうけれども、どうしても、店長をやりたいのです。

今の僕の主力の業務は、2019年、2020年の店舗の設計をすることで、それはそれで実に楽しいのですが、現在に立ち戻ってやらなければならないことが多くあるのではないかと思いました。

先日、天狼院書店はおかげさまでオープンから5周年を迎えました。
東京池袋の3店舗1スタジオの他にも、福岡天狼院、京都天狼院もでき、来年以降も様々な店舗ができる予定ですが、今、この時期に、どうしても原点である「東京天狼院」の店長をやりたいという思いが強くなりました。

もちろん、僕が店長になるということは、様々、大いに改革いたします。

ですが、改革の柱に掲げるのは、

原点回帰

です。

お客様が天狼院に期待することは、年々変わってきたことを肌で感じておりますが、変わらない部分もあるだろうと思っております。
天狼院書店が今までやってきたことを、もう一度、お客様に違ったかたちで提供することができるのではないか。

そのときに、適任の店長として念頭に上がったのが、僕だったということです。

僕が店長に就任するということは、天狼院書店とはどういう書店なのか、また、僕らはどんな存在なのかを改めて考えてみるいい機会にもなると考えています。

お客様が天狼院に求めているものは何なのか?
まだ見ぬお客様の訴求はどこにあるのか?

書店の最前線に立ち返って、それを真剣に考えたいと思っております。

今、僕には様々な肩書きがあるので、僕が何者か、知らない方も多くいらっしゃると思いますが、僕は書店員からキャリアをスタートさせました。

書店員と言いましても、およそ末端で、当初は担当の棚もありませんでしたし、レジにも立たせられませんでした。
僕の仕事のメインは「返品」でした。
売れなかった本をダンボールに詰めて返す作業です。
それと、配達でした。
美容院や歯医者さんなどに、暑い日も雨の日も、バッグいっぱいに雑誌や本を詰めて配達していたのが僕の原点でした。

前にいた書店で、新しい小さな書店がオープンすることになり、その店舗の店長になることになって、棚の担当になれたときの喜びは、今でも忘れられません。

あの当時は、小川洋子さんの『博士の愛した数式』や西加奈子さんの『さくら』、雫井脩介さんの『クローズド・ノート』を狂ったように売っていました。

気づけば、その店舗中、僕とスタッフのPOPだらけになっていました。

「本」と大書きされた看板も潰し、その上に、おすすめの本についての感想やらを、想いのたけをぶつけるつもりで、書き連ねました。
ひどいときには、A4の紙、3枚にも渡った長大なPOPをつけたりしていました。

そうして、おすすめした本が、売れるのは僕にとって、これ以上ない「快楽」でした。

それが、天狼院書店をオープンしてからの「秘本」や「ファナティック読書会」などに引き継がれています。

今、当時を振り返り、また天狼院書店がオープンしたころのことを振り返り、やはり、本が好きなんだということを改めて噛み締めています。
未だに僕は天狼院書店の中でも、第一の「活字中毒者」であって、月に5万円以上を本につぎ込んでいます。
浴びるように本を読んでいます。

本を読んでいる時間が、何よりも尊いのです。

次世代型書店、と評されることがありますし、自らそれを標榜するときもあります。

けれども、僕はこれからも、一活字中毒者であり、生粋の本屋であろうと思っています。

それをお客様にわかってもらうための、そして、僕自身が思い出すための今回の店長就任だと思ってもらって結構です。

「東京天狼院」は、スタッフに任せていた面が多かったので、乱れている部分も多くあり、理想の書店に復元するまで時間がかかるやもしれません。
けれども、もう一度、本屋をやれることの喜びを噛み締めながら、本をお客様のお手元に届けられる喜びを噛み締めながら、一から新しくも原点回帰の天狼院書店を創り上げて行きたいと思っております。

少しずつ、完成していくと思いますので、末永い目で見て頂ければと思います。

どうぞよろしくお願いします。

2018年10月31日
天狼院書店店主
三浦崇典

 

■ライタープロフィール
三浦崇典(Takanori Miura)
1977年宮城県生まれ。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。天狼院書店店主。小説家・ライター・編集者。雑誌「READING LIFE」編集長。劇団天狼院主宰。2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。2017年11月、『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)を出版。ソニー・イメージング・プロサポート会員。プロカメラマン。秘めフォト専任フォトグラファー。
NHK「おはよう日本」「あさイチ」、日本テレビ「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、テレビ東京「モヤモヤさまぁ〜ず2」、フジテレビ「有吉くんの正直さんぽ」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、日経雑誌『商業界』、雑誌『THE21』、雑誌『散歩の達人』など掲載多数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。雑誌『週刊ダイヤモンド』『日経ビジネス』にて書評コーナーを連載。

 
http://tenro-in.com/zemi/62637


2018-10-31 | Posted in 天狼院通信(Web READING LIFE)

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