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週刊READING LIFE vol.24

だって、魔法なんだから!《週刊READING LIFE Vol.24「ビジネス書FANATIC!」》


記事:國正 珠緒(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

評判が良いので「メモの魔力」(前田裕二著)を買ってみた。
とにかく、面白い! 読んでる側から「メモ」したくなる。
起きているあらゆることをある法則にのっとって「メモる」メモしたら、それぞれの項目(事実や気づき)を抽象化し、さらにそれを転用していく。というのが前田氏のいう「メモの流儀」なのだが、これがとても深い。前田氏はこの方法によって人生を劇的に変化させてきたようだ。まだ読了していないのに、早速著者が進める方法でメモをとってみた。
人生を動かすほどの大した打ち合わせでなくても、前田流でメモる。テレビを見ても気になることがあればメモる。道歩いていても思いついたらメモる。左のページにファクト(記録に残したいこと)をかく。できるだけたくさん! それがミソ! ファクトのみ左側に書いてはそこから右のページを使って「抽象化」し最終的には「転用」まで自分で思考していく。
試しに今日は飲食店の厨房器具のメーカーとの打ち合わせも前田流でメモしてみた。
焼肉屋さんの計画でロースター(焼き台)の種類の話になった。「炭焼きタイプ」と「ガス火タイプ」がある。炭焼きの方がいかにも美味しそうなイメージで集客に良いのではと私は思っていた。工事費用も炭火の方が安いと言う。
 
それなら炭火の方で施主に提案しようと思っていたところ、その営業マンが
「炭火式にすると消防でかなり激しく突っ込まれるので内装の仕上げの制限が多くなるようです」「炭火式はススが出やすいので、換気の吸い込みが弱いとクレームになりやすいです」
と言う。
「炭火→内装の制限の可能性」「炭火→ススが多い」と左側のページにメモった。
内装の制限だが法律上では熱源がなんであれ、内装の種類は同じはずだと記憶していた。まずそれをチェックしてみよう。そのこともメモる。「内装制限確認」
法規はともかく消防が目をつけやすいのは感覚的にはわかる。だとしたら……ここで抽象化をする。炭火で通りやすい素材「モルタル系か?」
と右側にメモった。不燃認定の壁紙よりもさらにモルタルの方が火には強い印象だから、きっと消防の通りが良いのではないか。もともと見積もり金額を確認するだけのつもりの打ち合わせだったのに、経験豊かな厨房営業マンの話からデザインのヒントとなるキーワードを引き出すことができた。
面白くなってきたので
「もう少ししたらバーガーショップの厨房についてもご相談したいのですが。マクドナルドみたいなのではなく、その場でパテから作るお店です。でも狭いようなんです」
と聞いてみた。また営業マンが即答した。
「SUBWAYみたいにわざと作るところをみせる作りにすると厨房面積を狭く抑えられます」
 
バーガーショップSUBWAYにあまり行ったことがなく、どんな作りか思い出せないが、話を聞くだけでも他のお店と比べ楽しそうなのだけはよくわかった。他にもハンバーガーが冷めないように作業台をあたためる提案をした話もしてくれた。
「この営業マンこんなに話が豊かだったっけ?」
メモを取りながら思った。厨房機器なんて大体のパターンが決まってて見積もりをしてくれるだけだと思っていたが、この営業マンは違う。それぞれの機器の物語を語れる人だ!
でも前の打ち合わせでも同じような話はできたはず。それなのに、今回急に話が面白くなったのは、私のメモのとり方が変わったからではないか?
メモが変わって話が面白くなった理由で考えられるのは次の2つ。
1)メモを取ることで私の興味が深まり、相手の話を深掘りして聞き返せるようになった。
2)細かくメモを取られることで、営業マン自身に狂がこもり、普段語らないようなネタまでついつい話してしまった。
このように打ち合わせの最中だけでも「メモの魔力」のメモ術は功を奏した。でもこんなことで驚いていてはいけない! さらにメモ術が大きな成果をあげるのは、デスクに戻りメモを読み返した時だった。
スルスルっと構想が広がり始めた。バーガーを作る様子がまるでショーのようになるカウンター。その両側で演者と観客のような関係になる店員と客……。レイアウトがなんとなく定まってくる。
 
「これはお寿司屋さんに似ている」
持ち帰ったメモを読みながらそう思い、お正月に読んだ柚木麻子さんの小説を思い出していた。「その手を握りたい」
お一人様で高級寿司屋に通い詰めるうちに主人公が寿司職人の手に、そして本人に惹かれていくという話だ。
 
回る寿司屋にはないある種の芸術。寿司を握る行為が一つのショーで、カウンターがその舞台となっている。
 
バーガーショップでも同じことが言えるのではないか? ファストフードのバーガーショップと一線を画した「アートなバーガー」を打ち合わせから戻って数分のうちに組み立てることができた。
今までいろんなビジネス書を読んだり、ハウツー物を読んできたがここまで即効性があり、しかも自分だけでなく、打ち合わせの相手にまで影響を及ぼした本は初めてだった。
ただのファクト「事実」がメモの取り方次第で、無限に広がっていく。
厨房機器メーカーのたった一言から1時間も経たないうちにアーティスティックなバーガーショップの空間にまで展開できる! 本当に魔法の力だ!
そうか魔法だから即効性があって当たり前なんだ! どんな魔法にもタネがある。そのタネがこの本には詰まっている。
どんな情報も無駄にしない。そんな意気込みでこれからずっと「メモの魔力」の流儀でメモをとり続けたいと思う。人生が数倍効率的で豊かになることだろう!
ありがとうございます。著者の前田裕二さん!!
 
 

❏ライタープロフィール
國正 珠緒 READING LIFE 編集部ライターズ倶楽部

東京都生まれ東京都在住

門と庭 設計士
モットーは「住んでる人が素敵に見える門構え、手入れよりも豊かに過ごす時間が長くなる庭を作ります」
自社のホームページを少しでも読みやすいものにしたくて、ライティングゼミに通い始めて「書くこと」の奥深い魅力にはまっています。
エクステリアコーディネーター 公認講師

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2019-03-18 | Posted in 週刊READING LIFE vol.24

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