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週刊READING LIFE Vol.27

できるだけ、朝ごはん《週刊READING LIFE Vol.27「BREAKFAST STORIES〜3通りの物語 朝食のおともにいかがですか?〜」》


記事:田中望美(チーム天狼院)
 
 

毎日、朝ごはんを食べなくなってしまった。
出勤前のギリギリまで寝ていたいし、朝からご飯を作る余裕なんてないし、面倒だし。
 
バタバタと起きて、野菜ジュースを飲むだけだったり、パンをつまんで出ていったり。
時には、バイト先に置いてあるチョコレート、なんていう日もある。
8年前は、こんな生活習慣が、半ば当たり前になるだなんて、思いもしなかった。
 
「朝ごはんは、しっかりと摂ることが、大切です。朝ごはんは、頭や体を起こしてくれるし、その日1日のエネルギーになります。では、回収!」
 
高校の先生が教壇に立ち、そういっていた姿を覚えている。
 
高校の時、生活習慣のアンケートが定期的に行われていた。生徒それぞれの食事や睡眠などの生活習慣を調べることで、家庭内で何か問題などがないか調べるためのものだったのだろう。
 
私の周りにも、日頃から朝ごはんは食べないという子はいて、寝坊して朝ごはん食べる暇なかった〜とか、朝からご飯入らない〜というのを何気ない会話の中ですることもあった。
 
アンケート調査でも、しつこいくらいに、朝ごはんは食べましたか? 一週間に何度食べますか? 何を食べますかと聞かれ、面倒だな〜、ちゃんと食べてるっていうか、食べないとやっていけないし! と、頭の中で愚痴をこぼしながら記入していた。
 
私は、文武両道を掲げている熱い先生の揃った国公立の高校に通っていた。特別なことは何もない、どこにでもある高校だ。けれど私はそんな高校が好きで、毎日勉強に、部活動に励んでいた。進学校だったため、毎日のように課題は出るし、英単語のテストも毎日あった。それなのに部活動は夜遅くまであり、家が遠かったため、バスで通学していた。夜遅く帰ってきて、朝早く起きる。勉強、そして部活動。毎日毎日その繰り返し。自分でもあの頃は何であんなに頑張れたのだろうと不思議に思うくらいだ。けれど、あの頃の私は、毎日が充実していて、楽しくて、勉強は嫌だったけれど、部活動に行けなくなるのが嫌で、小テストも課題もしっかりやっていた。
 
我が家の朝ごはんは、少し変である。
でも、友人に言われるまでは、それが普通だと思っていたから変だとは思わなかった。家庭によって違うのだろうから、別に変だということもないのかもしれない。
 
私の家は、必ず朝ごはんに「みそ汁」がある。種類は母の気まぐれで、いろいろな具材が入ったみそ汁だ。味噌のもみ殻も捨てずに入っているから、最後の方になるとそれが残って濁っている。小さい頃はそれをいつも残していたけれど、大きくなってそれが体にいいことを知ると、食べられるようになった。
 
そしてみそ汁のお供は、普通はご飯なのだが、我が家では、「なんでもあり」だ。
プチおにぎりの時もあれば、パンやシリアルの日もある。お正月の後は、一週間くらい余り物のお餅だし、そのお餅が甘かろうが辛かろうが、関係ない。
 
昔、友人に今日の朝ごはんは何だったのか聞かれて、真顔で、「みそ汁とパン」と答えると、
「え〜? みそ汁とパンは合わんくない? 和と洋やん!」
 
と言われ、
 
「いやいや、ご飯の代わりだし、主食やけん同じやん! それに、結構パンとみそ汁一緒に食べると美味しいよ?」
 
とプチ協議のようになったことがある。
その後、じゃあ〇〇ちゃんは何食べたの? と聞いて、
 
「今日、たくさん食べた。ご飯とパン」
 
と答えたから、私は愕然とし、またまたちょっとした協議が盛り上がったのはいうまでもない。パンとご飯って。主食と主食やん! カレーとラーメンを食べているようなものやん!
 
そんなこんなで、必ず毎日朝ごはんにはみそ汁が出ていた、どんなに時間がなかろうと、母に、
 
「味噌汁だけは飲んでいかんね!」
 
と言われて家を飛び出し、バス停へ全力疾走した。時間のあるときは、それにヨーグルトやフルーツもついてきて、今思えばそんな何種類もある朝ごはん、途轍もなく贅沢だなあと思う。
 
24歳になり、親元を離れて、もう十分ですよ、というくらい、親のありがたさを知った。どんなに守られていて、どれほどそのことに気がついていなかったかも知った。今は毎日働いて、家事をし、自己管理しなければならない。どれも、しっかりするとなると、大変なことだ。気を抜けば、すぐなあなあになってしまう。今も、夜遅く帰ってきて、朝早くに家を出る。そんな毎日を過ごすだけで精一杯になり、自分のことに手が回らない日々を過ごしている。ちゃんとしなきゃ、自分がきついだけなのはわかっているのだが、なかなかできないのが現実である。
 
すると、そんな時母からメッセージが来た。
 
「ちゃんと栄養とりよる?」
 
高校の頃、部活動が引退前で忙しくなって来て、それでも勉強はやらなきゃいけなくていっぱいいっぱいになって、母に弱音を吐いたことがあった。
 
「もう、あれもこれもせやんくて嫌だ。きついし、寝たいし。でもせやん。ア〜〜〜〜」
 
すると母はいつもこういう。
 
「じゃあもう今日は早く寝て、明日の朝、早起きしてすればいいやん」
 
「でも終わらんもん。いっぱい課題でとるし、単語テストもあるし。明日は朝練もあるとよ?」
 
私はもう泣きそうになっていた。そんな私を見て母は、
 
「もう、じゃあできるしこたい」と言った。
 
「え〜、それじゃダメやもん」
 
と言いながら、母はハイハイと私のだだこねを聞き流し、次の日の朝、3時4時くらいに私を起こしてくれた。
 
私も、朝起きるともう、やるしかないし、ちょっとした追い込み状態になっているため、ものすごく集中して課題などをこなし無事終え、学校に向かうのだった。
 
起きれなくてギリギリになってしまうと、梅干しおにぎりをもたせてくれて、バスの中で必死に単語帳を覚えたりもした。
 
一緒に寝坊してしまって、慌ただしい朝を過ごしたのも、今では楽しい思い出である。
 
「できるしこでいいから、やってみよう」
 
なるべく朝ごはんを作る。
なるべく食べすぎない。
なるべく人に優しくする。
 
私はまだまだ未熟者で、自分のことだけでも精一杯。
だから余裕のない朝は、「できるだけ」と思うだけで、パンパンな心の中に少しだけ隙間が空いて、冷静に初めの一歩を踏み出せる。
 
いつもなら夜更かししてまでやり残したこと、やらなければならないことをやるが、昨日は潔く寝て、今日の朝はやく起きてやるべきことを終わらせた。
気分が良かったから調子に乗って、朝ごはんにお味噌汁も作った。
好きな音楽を聴きながら、録画していたドラマを見ながら。
お味噌汁をすする。
母みたいに具沢山ではない、豆腐とネギだけのシンプルなものだけど、高校の時に感じていたあの頃の朝の快適さを久しぶりに感じられた。
 
窓を開けて深呼吸すると、幸せなエネルギーが身体中をめぐった。
自然と笑みがこぼれてしまう。
 
うまくできなくてもいい。
しっぱすることがあってもいい。
いっぱいいっぱいになるときもあるだろう。
 
だけど、そんな時も少しだけでいいから、心に隙間を開けて、今、できる限りのことをやる。
そこで、ダメだダメだとふてくされてしまっては、できるものもできなくなってしまう。それではもったいない。
 
そんな風に前向きに考えられる朝を、なるべくたくさん過ごしたいものだ。
 
さあ肩の力を抜いて、新しい朝を迎えよう。

 
 

❏ライタープロフィール
藤原華緒(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
1974年生まれ。2018年より天狼院書店のライティング・ゼミを受講。20代の頃に雑誌ライターを経験しながらも自分の能力に限界を感じ挫折。現在は外資系企業にて会社員をしながら、もう一度「プロの物書き」になるべくチャレンジ中。

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2019-04-12 | Posted in 週刊READING LIFE Vol.27

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